サルヒツの温泉めぐり♪【第190回】
湯抱温泉 中村旅館
℡)0855-75-1250
往訪日:2025年4月28日~4月29日
所在地:島根県邑智郡美郷町湯抱315-3
源泉名:湯抱温泉
泉質:含弱放射能ーナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉
泉温:(源泉)29.6℃(浴室)42℃
匂味:淡い金気臭、土類臭/強塩味、鉄味、炭酸味、苦味
色調:淡褐色透明
pH:6.8
湧量:ーL/min
その他:動力揚湯・加温
■営業時間:(IN)16時(OUT)10時
■料金:17,000円/人(税別)
■客室:1室
■アクセス:山陰道・三瓶山ICから25分
■駐車場:10台
■日帰り:11時~13時・昼食つきプラン(要予約)
《あこがれの千枚皿》

2025年GWの温泉二泊目は湯抱(ゆがかい)温泉の中村旅館だった。おサルが「行きたい行きたい」と念仏のように唱え続けた宿。温泉フリークには夙に知られた名旅館である。かつて湯抱には数軒の宿があったが、日の出旅館が2016年に閉館。今はここ一軒が残るのみ。そのせいだろう。駐車場はやけに広かった。

中村旅館の投宿は一日一組限定。ネット情報によっては二組と書かれているものもあるが、それは日帰り休憩(食事含む)を一組とっているためだ。チェックインが16時とやや遅めなのはそうした理由による。いわゆる(不特定多数相手の)日帰り利用はできない。

創業は1916(大正5)年。なかなか予約が取れないという。運が良かった。
「サル頑張った!」
←我が家の予約担当

約束どおり16時ちょうどに到着すると、既に女将さんが玄関先で待っていてくれた。きっとセッカチな客と思われたに違いない(決して間違っていないけど)。

靴を脱ぎながら挨拶を交わす。眼鏡の奥にある優しい波目にその人柄を感じた。

一階の奥に浴場がある。これは途中の手洗い場。桃山風めいた意匠が往時の賑わいを語る。

部屋は二階。まずは階段で。

上がった先を左に。

突当りを今度は右に折れる。その先が今宵の部屋。

12畳ひと間の大部屋だった。床の間の造りも美しい。

なにより虎と竹林を描いた手前の襖絵がいい。

書院欄間の組子細工も大切に維持されていた。

部屋に通されてひと通り説明が終わると、織部風の茶碗で抹茶をたててくれた。

これが饅頭にあうわけで。

廊下から見える裏庭。このあたりから湯が沸いているのかな。

坪庭の風景。ここ数年の台風や大雨で石州瓦も台無しになったという。
ということで温泉探検へ!
=中村旅館はこんな宿=
・大正5年創業の老舗宿
・三瓶山麓に佇む一組限定の一軒宿
・析出物がすごい高濃度ラドン塩化物鉱泉
・料理がおいしく温かいもてなしの宿
=温泉利用法=
■浴場…内風呂一箇所のみ
■利用時間…16時~/翌朝7時~
■入替利用…不要
■貸切利用…不要
■日帰利用…11時~13時(宿泊とラップなし)
一組だし浴場は一箇所だし。慌ただしさと無縁な点に惹かれたわけだし。ゆっくり入るだけ。

トイレは共用。同じ二階にある。建物は古いがトイレは清潔な洋式にリフォーム。この先を下れば先程の浴場に続く。

階段をくだる。

休憩所を経て…

手洗い場を過ぎればそこが夢の浴場。

レトロモダン調。年期が入った建物ながら奇麗に磨きこまれている。

ガラガラと引き戸を開ける。漆喰壁がまたいい味。床はやり直してある。
「愉しみ~♪」
湯小屋の御開帳。昂奮の瞬間だ。

「ほぅ♪」

表面に析出成分が厚い膜をなしている。

床はもはや千枚皿(笑)。土類泉特有の景色だ。ちなみに結晶は日々成長しているので直接踏んづけるとまともに歩けないほど痛い!
「だからマットがあるのにゃ」

暫くすると薪の燃える匂いが際立ってきた。山小屋での日々を思いだす。裏の竈で女将さんがスタンバっているので、ぬるいといえば焚きつけてくれるし、熱い場合は窓際のビニールに包まれたボタンを押せば源泉が出る。

ちなみに手前が洗い場だ。

小口タイルが昭和。まずは汗を流そう。

そして飛び込んでみる。キシキシの炭酸泉。カルシウムの膜が厚い。
「野趣があゆね」

釦を押して源泉様に触れてみた。というより味をみた。やはり塩味が強い。土類泉らしく苦味も。

温まったあとも周辺探索。ここが日帰り利用の通路か。

ここからあがるらしい。
(分析表)

ということで部屋でまったりすることに。

我が家の場合これしかない。以前は本を読んだり散策したりしていたものだが。
開春 石の顔(かんばせ) 純米無濾過生原酒
生産者:若林酒造㈱
タイプ:純米生原酒
使用米:島根県産山田錦100%
使用酵母:島大HA-11号
精米歩合:60%
アルコール:17%
杜氏:山口竜馬氏
出荷時期:2025年4月
販売価格:1,636円(税別)
島根大学が開発した酵母を使った純米酒。日本酒度-12は辛口の部類だが、酢酸イソアミル系のドライな味わいに南国フルーツを思わせる甘味が乗る。辛口が定番の開春とは真逆のチャレンジ酒か。といいつつツマミなしで飲むから酔うのなんのって。
「これから食事なのに」
=夕 食=
夕食は6時から。大広間に案内頂いた。

春とはいえ山間の盆地。夜は少し冷える。暖房が効いた部屋は温かかった。ムーディな音楽が流れ、女将さんも少し洒落た服に。なんだが湯治宿から料亭に変身した感じ。

前菜 帆立とナスのグラタン、玉葱のマリネ、枝豆の味噌和え
盛りつけも美しい。造りも丁寧。シャキシャキするマリネの食感がまたいい。
「酒を頼んでおくり」
湯治系なので酒は然程していなかったが、そこその四合瓶があった。

譽池月 純米八反錦60(白ラベル)2024BY
生産者:池月酒造㈱
タイプ:純米吟醸 木槽しぼり
使用米:三次産八反錦100%
精米歩合:60%
アルコール:15%
杜氏:末田誠一氏
出荷時期:2025年3月
販売価格:3,000円(税別)
市販価格:1,490円(税別)
八反錦を使ったいわゆる鑑評会仕様の地酒。飲みやすく食事の邪魔をしない。いいセレクト。価格も妥当。

アナゴみぞれ出汁

刺身(鯛・鮪・ハマチ)

天婦羅(海老、エノキ、ピーマン、大葉他)

おおち山くじら鍋。美郷町特産のイノシシ肉は濃厚で高蛋白な一品だった。

ツヤツヤの御飯と一緒に。

最後は蕎麦でしめ。ひと通り夕食を終えると調理担当の息子さんが挨拶に現れた。料亭仕込みというだけに味はしっかりしていた。
「ご馳走さまですた!」
=翌 朝=
この日はひさしぶりの登山。なのでジョギングはない。ゆっくりできるって素晴らしい。

(ここにもラダーバック。関連でもあるのか?)
とはいいつつ朝風呂は入る主義。女将さんの奮闘は続く。

初日以上に厚い膜が張っていた。入るとパリパリと肌に触れる。セメントの中に入っている気分(笑)。「湯加減どうですかー?」と背後から声が届いた。
=朝 食=

前夜と同じ会場で。柚子の風味が効いた味噌汁が飲み疲れた体に優しい。ほどよい量だった。

デザートにブルベリー&ブランマンジェ。以前はおサルに作ってもらったものだが。
「糖質が多いからダメ!」
ということらしい。最後にもうひと風呂浴びてお暇することに。

清算を終えた僕らを中村家の老夫妻と息子さんが車が見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。バックミラーの中でだんだん小さくなっていく三人の姿を見ながら「この先どうなるのだろう。息子さんが後を継ぐのだろうか。長く続いて欲しいな」などと思いを巡らす。余計なお節介かもしれないけれど。と15分ほど走ったところでおサルのスマホが激しく震動した。
「えっ!忘れ物ですかにゃ!」
聞けばタブレット端末を忘れているという。もうこれで三回目。慌てて戻ると、おサルの指痕まみれのタブレットを平盆のうえに恭しく掲げた女将さんが走り寄って来た。そして改めて高々と両手を振って別れを惜しんでくれた。宿の心配などしている場合ではなかった。心配すべきは僕ら自身だった。
「恥ずかしかった」
(五日目につづく)
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