名建築を歩く 内藤廣「茨城県天心記念五浦美術館」(茨城県) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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名建築シリーズ284

茨城県天心記念五浦美術館

 

往訪日:2025年6月7日

所在地:茨城県北茨城市大津町2083

開館:9時30分~17時(月曜休館)

料金:(天心記念室)一般210円 高校生140円 小学生90円

アクセス:常磐道・北茨城ICから15分

駐車場:125台(無料)

■設計:内藤廣建築設計事務所

■施工:松村組・岡部工務店JV

■竣工:1997年

 

《連続する切妻長屋を模したデザイン》

 

2025年6月初旬。この日は北茨城の五浦(いづら)を旅することにした。岡倉天心とその弟子ゆかりの地である。まずは天心を顕彰する五浦美術館を訪ねる。内藤廣(1950-)が手掛けた名建築でもある。

 

「美味しいものはどこで食べるのち?」サル ←食べ物に釣られてついてきた

 

 

見通しのいい道路に入り口は面している。

 

 

そこから高台まで緩くて長い坂道が続く。

 

 

駐車場はこの広大な車寄せの一段下。

 

「めっちゃ広いにゃ」サル

 

 

まず車でないとこられない。そのあたりを配慮してのことだろう。

 

 

天心が心を寄せただけに五浦海岸は太平洋の荒波に洗われた風光明媚な断崖を成している。その高台の上に美術館は建っていた。

 

 

数棟の巨大な切妻の建物が並んでいるようなデザインだった。空撮ならばともかく側面からではよく判らない(笑)。

 

(流水に並置された緩やかな導線)

 

早稲田では吉阪隆正に、卒業後は菊竹清訓の事務所に在籍したものの、師匠に似ず、穏やかな作風が内藤のスタイル。海の博物館(1992)や安曇野ちひろ美術館(1997)に代表される疑和風建築か、フォレスト益子(2002)や虎屋工房(2007)のような簡易建材を用いた扇面建築。荒っぽく大別すればそう言える。少なくとも奇抜さはない。

 

 

内藤先生の建築は容れ物であって見世物ではない。美術館というよりは大きな家。それも温かみのある家を思わせる。ひとつこだわりがあるとしたら、その土地の風土や生活と深く関わるデザイン乃至は素材を活かすことだろうか。

 

 

水盤もまた内藤建築には欠かせない。

 

 

ひたひたと打ち寄せる水際。

 

 

プレキャスト梁を採用。短工期とクリアランス確保のための選択らしい。

 

 

側面に置かれたコンクリートパネル。犬矢来を模したものか?

 

 

天井が抑えられている。

 

 

裏に回ってみた。切妻のデザインが全て異なる。

 

 

ベンチの日除けも凝ったデザインだ。

 

 

芝生がよく手入れされている。

 

 

生温かい空気が沖合から押し寄せたせいで、やや靄の多い一日だった。

 

 

白御影の広場が所々に整備され、天心の詩(主に漢詩)が紹介されていた。

 

 

それでは中へ。

 

 

エントランスは幅24㍍の大ホールを兼ねる。

 

 

柱を立てずにこの空間を確保するためにプレキャストコンクリートのトラス梁で支えた。

 

「すごい造りだのー!」サル

 

 

技術上のリクエストが産んだ構造だが、その美しさと圧倒的迫力はグラントワで感じたそれに近い。

 

 

内藤建築は外見は穏やかだが、内部空間にアッと言わせるものがある。

 

 

レストルーム

 

 

側面から見ると表現主義的。

 

 

両サイドからテンションをいれてPC鋼線で繋いでいるようだ。

 

 

常設展示の岡倉天心記念室と企画展示室からなる。この奥が記念室。

 

新海竹蔵《岡倉天心肖像》(1942)

 

新海竹蔵による天心のレリーフ。新海といえば内田祥三が手がけた公衆衛生院(港区)の講堂レリーフを思いだす。

 

 

壁は丁寧な櫛目引き。

 

 

ガラス壁の衝突防止マークが天心の横顔になっているのが面白い。

 

 

梁は延長可能なピースのようにも見えるし、桟を模したただのデザインなのかもしれない。しかし、この回廊と建物をひとつの景色として観ているうちに、短工期を叶えるための手段ではなく、見せる要素も多分に含んでいるように感じられた。

 

(アート篇につづく)

 

ご訪問ありがとうございました。