名建築を歩く 曽禰達蔵・中條精一郎「旧田中光顕別邸(小田原文学館)」(神奈川県) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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名建築シリーズ182

旧田中光顕別邸(小田原文学館)

 

往訪日:2025年1月11日

所在地:神奈川県小田原市南町2-3-4

開館:(冬期)10時~16時30分(月曜休館)

料金:一般250円 小中生100円

アクセス:JR小田原駅より徒歩20分

駐車場:7台(無料)

■設計:曽禰達蔵・中條精一郎

■施工:不明

■竣工:1937年

■国登録有形文化財(2000年)

※館内撮影OK・資料撮影NG

 

《簡素ながら気品に満ちた名建築》

 

成川美術館を訪ねたあとそのまま帰るのもなんなので、二週連続で小田原に寄り道することに。北条氏のイメージが強くてあまり文学ゆかりの町という感じがしないが、北原白秋、北村透谷、牧野信一、尾崎一雄などが暮らしたことで知られる(白秋以外は素人ウケしないけれど)。そんな作家たちを顕彰する文学館が小田原の旧市街の一角にある。

 

 

実はその建物が曾禰達蔵(1852-1937)と中條精一郎(1868-1936)による名建築のコンバージョンだった。

 

 

もとは土佐藩・佐川村出身の勤王の志士で明治政府の大臣職についた政治家、田中光顕(1843-1939)の旧別邸にあたる。ちなみに田中は植物学者・牧野富太郎と同郷だ。設計はコンドルの弟子曽禰達蔵とそのパートナー、中條精一郎が立ち上げた曽禰中條建築事務所。曽禰としては最晩年の作品になる。洋風建築の本館(1937年)と和風建築の別館(1924年)からなり、別館のほうが竣工が早い。こちらは白秋童謡館として公開されている。

 

 

鉄筋コンクリート三階建て。グリーンの釉薬瓦と白壁が印象的なスペイン風洋館だ。微妙に配置が異なるポツ窓も面白い。

 

 

手挟にも似た軒のデザインはやや和洋折衷的。

 

 

リシン仕上げの壁にヘキサゴンの組子細工風の飾り。裏に回ってみよう。

 

 

がらりと印象が変わる。一階にサンルーム、二階にリビングと八角形の塔屋が続く。

 

 

木造と見紛う軽快なデザインだ。

 

 

最上階はテラスになっているそうだ。

 

 

あがってみることにした。この時代の洋館らしく天井が高い。ちなみに一階、二階の文学資料室は撮影不可。

 

 

三階の応接室へ。

 

 

ハーフティンバー調の内装。恐らく殆ど改修されている。

 

 

暖炉もあったのだろう。

 

 

テラスに出てみる。一部がパーゴラで覆われている。

 

 

ほぼ往時の雰囲気を残している。

 

 

地中海的意匠の疑似手水鉢。

 

 

「半魚人?」サル

 

たぶん鯉。

 

 

葺き替えの部分と残置部分がよく判る。この時代にこれだけ発色のよい釉薬瓦を作ったのだから腕利きの職人がいたのだろう。

 

 

「美しいにゃ♪」サル

 

色がいいよね。

 

 

一階に戻ってみよう。

 

 

窓ガラスはやり直しかと。

 

 

採光のよいデザイン。

 

 

サンルーム。詳しいことは判らないが、曽禰の亡くなる年に竣工しているし、得意とした石造風の建築と随分ディテールも違う。事務所スタッフの手が入っているのではないだろうか。

 

 

壁面は化粧用の小口タイルで処理されていた。現存作品が少なくなっている曽禰達蔵と中條精一郎の作品。実は今回が初めて。小振りながらいい建築だった。

 

(文学篇につづく)

 

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