サルヒツのグルメ探訪♪【第230回】
邸宅レストラン 雅俗山荘
℡)072-751-1333
カテゴリ:本格フレンチ
往訪日:2024年3月9日
所在地:大阪府池田市建石町7‐17(小林一三記念館内)
営業時間:(月火水定休)
(L)11時30分~14時30分
(D)17時~21時
アクセス:阪急池田駅から徒歩約15分
駐車場:10台(無料)
■ダイニング20席(テーブル5×4人)+個室
■予算:ランチ10,000円(税込10%)+アルコール
■予約:要
■カード:可
■オープン:2010年4月
《料理を介して皆笑顔》
ひつぞうです。今年の1月28日にぶらりと訪れた雅俗山荘。阪急東宝グループの創業者・小林一三ゆかりの邸宅と古美術が目的でした。ところが併設されたレストランのなんと気品に溢れたことか。聞けば最高の料理とサービスを堪能できるらしい。早速日を改めてランチを頂戴しました。以下、往訪記です。
★ ★ ★
最初の往訪からひと月余りが経った。春遠からじ。山荘の庭には馬酔木の白い花が鈴なりだった。
席はダイニングに五つのテーブル。できれば光が差し込む窓際がいい。
「窓際をお願いしたら一瞬間があって笑われたけど」 ←予約はサルに一任した
忙しいというのは口実で、お願いするのが気恥ずかしかったんだよね。
「ひっどい!」
意外にシャイなんだよ。僕。
(閉店後に撮ったので入り口が閉じられています)
グランメゾン系はひさびさ。
角の一番いい席に案内頂いた。意思は通じたようだ。
料理長の安島浩二氏は銀座《HENRI》や《レ・サンジュ》などで修業を積んだのち、パリの《GUY SAVOY》でセクションシェフを務め、1992年にホテル阪急インターナショナル開業に合わせて帰国。多数の阪神阪急ホテルズレストランにたずさったのち、雅俗山荘で総指揮を振るっているそうだ。
カトラリーは銀細工で有名なクリストフルのアンティーク(だと思う)。
まずはロゼのスパークリングで乾杯。
飲むね…。
「そりゃもう」 酒とあらば幾らでも
ランチメニューはお任せのみ(税込み10,000円)。
もちろん満席。窓際にしてよかった。
「花も紅葉もない季節だけどにゃ」
むー。確かに。でも早く来たかったんだよ。
切り花のブーケ。花瓶もクリストフル。持つと判るが銀なのでかなり重い。
暫くしてシニアソムリエと思しき白髪の紳士が恭しくグラスを差し出した。
逸翁愛用の金メッキのハンドカットクリスタルだった。
「触っていいんですかの?」
「どうぞどうぞ」(笑)
いや、うちのはサルですからね。迂闊に与えると粗相もあり得ますし(と心中で呟く)。
「やーん。しゅてきー♪」
もういいんじゃない…。
=アミューズ・ブーシュ=
最初はアミューズ。素材はレッドアナナスとノルウェーサーモン。贅沢にシャルドネのジュレを絡めてセルフィーユ(フレンチパセリ)で飾る。
「なに?アマママスって?」?
端的に言えば赤いパイナップル。普段イメージするパインとやや違うね。
「ほんとだ。酸味まさってゆ」
=前菜=
フォアグラと林檎のコンフィ・プレッセ
帆立貝と蕪のサラダ仕立て ヴァニーユの薫り
これも贅沢。フォアグラと焼き林檎のコンフィプレッセ(型に嵌めてコンフィした焼き菓子風)。
「まわりのオイリーなものは何ですかの」 バニラは判ゆ
何でも質問する僕らにギャルソンが厨房まで確認に走る。
ひまわりの種油にヴァニーユ(ヴァニラ)を惜しげもなく散らしたソースらしい。
「帆立も旨い!」 ←とにかく貝が好き
新鮮な北海道産の帆立の貝柱を薄くスライス。蓚酸と酸味が味を引き締めるレッドソレル(スイバ)とチコリを散らす。それをオレンジのブールブラン(バターソース)で頂戴する。貝柱と蕪の甘味に複雑な酸味とバターの旨味がマリアージュ。
ここでワインを所望した。予想どおりフルボトルは8000円~数万円。なので大人しくソムリエに相談。いいレストランは無闇に高級品など薦めない。ボディも果実味もあるタイプを求めたところ、これが推薦された。
ブルゴーニュの地方名ワイン(10,000円)。それ以上は判らん(詳細は後追い情報)。
ドミニク・ローラン ブルゴーニュ ル・クールジョワ 2021
生産者:ドミニク・ローラン
ヴィンテージ:2021年
タイプ:赤(ミディアム)
品種:ピノ・ノワール、ガメイ
地域:ブルゴーニュ地方(フランス)
アルコール:13.5%
輸入:㈱ジャパンインポートシステム
市場価格:4,000~5,000円(推定)
1989年スタートの比較的若いネゴシアン。但し新樽と50年以上のヴィーニュヴェイユにこだわる。あまりエレガントに決め過ぎないピノ。エチケットにはジュヴレ=シャンベルタンの文字も見えるが、ガメイもアッサンブラージュされているし、一般的な地方名ワインだろう。情報が少ない銘柄なので、ソムリエ自ら(初心者向けに)選んだものだろう。
「よいよい。それで」
また暫くして「売り物ではないんですが」と断ってソムリエがあるものを差し出した。
サントリーのウィスキーだ。菊の御紋もある。
「AKIHITOって書いてない?」
1953年の明仁上皇様の皇太子就任を祝った非売品だった。社内外の贈答品として製造されたとか。
状態によっては30万円近い値がつくコレクターズアイテム。
「なんだ。飲めんのかい」
ということで暫く眺めて返却(笑)。
=魚料理=
小鯛 黒トリュフの芳香 菊芋のブルーテ(右)
石川早生コンフィ&アンディーブ(左)
ブルーテ((英)ベルベット)は文字通り、ベルベットのように滑らかなソース。ルーをブイヨンで延ばす点が特徴。トリュフの香り豊かなソースをソテーした小鯛にかけてカリカリの菊芋と一緒に頂戴する。
「これは白ワインだったにゃ」
石川早生は石川県産の早生品種かと早合点したが、大阪府泉南市の特産里芋。それをコンフィしてアンディーブ(チコリ)の柔らかい内葉と菊芋を散らす。こっちは菊芋なくてよかったかな(芋が被ってる)。
パン・ド・エピス(スパイスハーブのパン)。無塩バターで。
一皿目を平らげたところでメインの肉料理。
=肉料理=
フランス産仔鴨のフィレのポワレ 蜂蜜エピス風味
シャンテーヌ・ポワレ ノアゼットの香り
フレンチにしてもイタリアンにしても、素材と料理法に関する単語はネイティブでも意外に判らない。日本人が懐石用語を必ずしも理解できるとは限らないのと同じだ。判らなければ訊けばいい。むしろそれがマナー。
「何を無駄な言い訳を」
まずエピス。ずばり香辛料である。一見半熟成のような鴨だが、裏表をポワレしたものスライス。辛口の香辛料と蜂蜜のソースで頂戴する。
「しゃんてーぬとのあぜっとは?」
栗とヘーゼルナッツ。そして零余子(むかご)も。
「食べれば栗って判るよ」
そういえばそうだ(笑)。
香りづけにエストラゴン。付け合わせはエチュベ(加温調理)或いはポシェ(茹でる)された菜花とアスパラガス。ピスタチオソースで頂いた。
また花器が増えた。セロリと玉葱ですな。
=デザート=
モンブラン・カシス
グラス・プラリネ・アマンド
カシスのチュイールを添えた可愛いモンブラン。グラス(glace)はアイス。プラリネ(plaliné)はマカダミアナッツを加えてカラメリゼしたもの。アマンドは文字通りアーモンド。
「ナッツを加えたキャラメル風味のアイスにゃ」
そういうこと。覚えるギャルソンも大変。
プティフール二種
(フィナンシェとマカロン)をつまんで…
最後はコーヒーで。
「またなんか来たね」
クリストフルのデザートワゴン。めちゃ高級品らしい。百万円くらいか?
「見るだけっつーのが多いにゃ」
大阪だよね。サービス精神旺盛というか(笑)。
再びソムリエ登場。食後酒のワゴンを押して。
食後酒も選り取り見取り。稀少な銘柄も。
「飲む」
「これがいい!」
カルバドスのポム・プリゾニエール(40%)。
「ポム(林檎)の実がそのまま入っています」
「ほんとだ!」 どーやって入れたんですか?
「いやいや。瓶の中で実を育てるんです」
そりゃそうだよね。なので市場価格で約2万円。
僕はこれ。ボルドーのシャトーが造ったブレンドタイプのスコッチ、ダルシュ5年(43%)をロックで。ナッティーでエレガント。香り高く独特の甘さがある。万人受けするタイプかな。
そしてまた違うワゴンを押して来た。
「他にもありますよ」
「飲む」
見せちゃいけないね。おサルには。
サントリー響の特別ヴァージョン。何が特別かと云えば…
故・鳥井信一郎氏(三代目。早世した吉太郎の御長男)と佐治信忠氏(やはり三代目。佐治敬三の御長男)の就任記念ラベルだった。信一郎氏の御母堂・春子さんが小林一三の娘でもあり、小林家と鳥井家は姻戚関係にあるんだ。
「閨閥とか系図とか好きだよね」 梨園とか皇族とかも
うん。自分には縁がないもの(笑)。
その後も暫く歓談したチーフソムリエから名刺を頂戴した。副支配人の三田卓司氏だった。かつて都ホテルで腕を磨いた名士で、この世界では一期生にあたるそうだ。それなのにとても腰の低い方だった。「サービスとは何か」を学ばせてもらった気がする。
「大層ご馳走になりましたです」
払いは家計で(笑)。
(おわり)
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