≪20㍍二段の大滝≫
こんばんは。ひつぞうです。今夜も鷹ノ巣谷遡行の続きです。
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立ちはだかるように現れた20㍍二段の大滝。向かって右手のスラブ伝いに登れば中段にテラスがあり、比較的容易に登れると言われるが、おサルは頑なに嫌がる。そこまで嫌がる者を無理強いするのも酷というもの。
当初の計画どおりに右手のガレを詰めて高巻くことに。落石しやすいので注意しよう。
ここで左側のバンドに取りついて巻きあげる。ガレを詰めすぎると取りつけなくなる。
割りに高度感がある。ホールドにする岩は脆く、そして浮いている。細心の注意で。
「緊張すゆー」
大滝の上に出て間もなくすると二俣が見えてきた。左に進めば金左小屋窪。右に進めば水ノ戸沢。前者は最後のツメで笹薮に苦労するが、後者は比較的楽に詰めあげることができるそうだ。無論、後者を選択。
水量は1:1と「岳人」の紹介記事に書かれていたが、実際に見た印象では「左右=2:1」。
こちらが金左小屋窪。
こちらが目指す水ノ戸沢。水量が乏しく幅も狭い。この出合で小休止した。予報通りに晴れ間が現れて、陽射しが差し込み始める。ここでおサルはハードシェルを脱いで水分と行動食を補った。
水量が減ったと思ったのも束の間。僕らには程よい水量の2㍍ほどの小滝が連続する。
(特筆すべきことでもないが)ブヨがしつこくつきまとう。防虫対策はしっかりと。でないと我がおサルのように大変なことになる。
「おでこ咬まれてお岩さんになってしまった…」
今朝起きてびっくりしたよ。
(すでに恢復しました)
振り返るとこんな感じ。緑が映えていい雰囲気。
標高を稼ぐに従って心なしか水温が低くなった気がする。
そのうち左手にワサビ田の跡が。
渓は一層狭くなり、傾斜も増してきた。
岩肌で日向ぼっこをしている昆虫を発見。これって蛾だよね。
(調査の結果、ツマキシロナミシャクというシャクガの仲間と判った。つまり幼虫は尺取虫。食草はサルナシ。この沢に生えているのだろう)
教えてもいないのにステミングで突破。さすがサル。
むひー
今度は左岸側に立派なワサビ田跡の石垣が。
「あ!こりは!」
やあ。栽培種が野生化したみたいだね。
「採っちゃダメかにゃ?」
残念だけど酸素豊富な清流でなければ根茎は太くならないんだって。茎は炒めて食べると旨いよ。
「今回は鑑賞だけにゃ」
なかなか奥の二俣につかないね。
こういう場所は丁寧かつ慎重に登るけれど…
こうした場所では油断してしまいがち。とりわけ周辺は(近年の出水被害の影響だろう)土石流の堆積が著しくて浮石だらけ。そぞろ歩きしていると足許をすくわれかねない。
ちょっと時間が押し気味なのが気になってきた。
そうとは知らずおサルはトボトボついてくる。最初の勢いは既になく、疲労の色が滲み始めたようだ。
二俣はそろそろのはずだよ。
「これなんじゃね?」
もう一段上のようだね。ここで右側の流れは涸れてしまった。
ここだよ。奥の二俣。右手に進路を取る。
あとはガレた涸れ沢を詰めるだけ。
これがまた急登。登山道のない山は歩き慣れているが、今回はストックなしの全身運動。翌日の筋肉痛は確定だ(翌々日までひどい筋肉痛でした)。水平距離は僅かにみえて、稜線までこの斜度で標高差残り230㍍。つらいと言われるはずだ。
涼しい風が抜けることが唯一の救い。
最後はガレ沢(右側)になるので、岩が露出した泥尾根を四つん這い気味で進む。
この時間が一番青空が覗いていた。
写真では伝わらないけれど。つらいよ。ここの斜面は。
こうして見下ろせば少しは判るかも。
ようやく登り切った。時刻は13時12分。いい時間になっちゃった。でもおサルの顔から笑みが零れる。いや。苦笑い?
「いろいろあったけど無事登り切ったにゃ」
ここで沢足袋を脱いでアプローチシューズに換装。
稜線は肌寒いくらいだ。それにしても羽虫の多いこと。
三年半前の鷹ノ巣山は年の暮れだった。タワ尾根から取りついて酉谷山避難小屋で一泊。山の仙人様と愉しいひと時を過ごした。翌朝未明に出発して雲取山から鷹ノ巣山まで歩いた。その時も12時間超のロング。おサルが激怒してザックを鷹ノ巣山の二等三角点に放り投げたことを鮮明に覚えている。ま、悪いのは僕なのだが。
その時はもちろん山は禿げ山。なので今回は印象が全く違った。
山頂についた。当然だが、稲村岩尾根側にはロープが張られて「通行禁止」の案内板。自己責任でお願いします。
すでに午後の14時なのに、山頂には数名のハイカーがいた。
東の稜線にはキューピー頭の大岳山と秀麗な御前山が見えていた。石尾根はレンゲツツジが見頃のようだ。少し雲が多くなったのは残念だけど、今日は沢登り、こんな天気も悪くない。碌なものを口にしていない僕らは充分な休息を取ったあと、下山の途についた。
(つづく)
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