旅の思い出「木の葉化石園」(栃木県) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

木の葉化石園

℡)0287-32-2052

 

往訪日:2019年9月28日

所在地:栃木県那須塩原市中塩原472

営業時間:9時~16時30分

料金:大人(4月~11月)500円/(12月~3月)450円(JAF優待あり)

駐車場:30台ほど

 

≪この化石こそ僕の化石道楽の原点≫

 

こんばんは。またまた台風きてますね。もう無理な出社はやめようと誓っているひつぞうです。廃墟系カルト温泉を堪能したあと向かったのは、塩原の「木の葉化石園」です。

 

★ ★ ★

 

南会津の登山や温泉旅行の行き帰り、必ず通過する場所があった。それがこの木の葉化石園である。地方によくあるトンデモ系の子供騙しと決めつけてスルーし続けていた。ところが、ある専門誌を読んでいて、学術的価値の高い由緒ある博物館と知った。

 

 

小学生の頃、僕を魅了し続けた場所がある。野尻湖ナウマン象博物館(長野)、黒曜石石器資料館(長野)、そして、全国の化石・岩石系資料館である。前者はいずれも休館やそれに近い状態だった。やはり、昭和の展示方法の儘では客足は遠のくばかり。しかし、僕にはそれが逆に懐かしい。

 

昔、学校の廊下に貼ってあった少年写真新聞を覚えているだろうか。僕はあれを食い入るように見ていたくちだ。特に、巨人の帽子をかぶった同学年の小学生が、化石や鉱物採集しているフィールドワークの写真を見ては激しく嫉妬した。

 

「地味~」サル

 

その現場のひとつがここだったのだ。

 

 

営業開始後間もないとあって(それだけが理由じゃないと思うが)閑散とした駐車場から橋を渡って資料館に向かった。建物の前には人為的にカットされた地層が露わになり、ここがかつて高原山の噴火によって堰き止められた古塩原湖の湖底だったと記されていた。

 

今から約三十万年前の新生代第四紀更新世と呼ばれる時代の地層である。既に人類は誕生していた時代だ。

 

 

ふと足許に眼をやれば、ごく普通に木の葉の化石が転がっている。

 

 

建物は野尻湖ナウマン象博物館と全く同じテイスト。旅の目的を廃墟めぐりに絞ったという訳ではないが、普通の観光客であれば、思わず引き返してしまう雰囲気(笑)。

 

設立は1905年(明治38年)。恐らく一度はリニューアルされていると思う。まずは地層から掘り出された木の葉の化石がこれでもかというくらい展示されている。

 

 

そう。これが見たかった。小学館の学習図鑑⑩「地球の図鑑」の小さな白黒写真に、普段見るモミジとは明らかに形状を異にするヤマモミジの化石があった。残念ながら同じものはなかったが、ハウチワカエデやブナなど、山歩きでおなじみの植物の化石が、その葉脈や付着した黴まで、完全な形で残っていることに感動を覚えた。

 

「全部同じに見えるにゃ」サル

 

 

これが古塩原湖の模型。湖には珪藻類が繁殖し、その死骸が珪藻土となり、また高原山からの火山灰などの堆積も加わり、状態のいい化石ができあがった。現在は箒川の開析によって、湖は姿を消して、塩原温泉郷が広がっている。

 

 

魚類(写真はウグイ)や昆虫、齧歯類なども展示されている。これらはスウェーデンの地質学者アルフレッド・ナトホルストによって木の葉石として世界に紹介された。

 

塩原には塩原五名石として珍重された石がある。水葉石・貝石・鮫石・鍾乳石・芋がそれだ。水葉石はさきほどの木の葉石の別称。

 

 

貝石は文字通り貝の化石。これはカネハラヒオウギカネハラカガミの化石群衆。現生の貝とほとんど同じだ。

 

 

鮫石はマンガン鉱の一種ではないかと書かれてあった。確かに鮫肌状のザラザラした表面をしている。石英の緻密な結晶のようだけど。

 

 

鍾乳石。石英の結晶。

 

 

芋石は穿孔類の巣穴が化石化した生痕化石の一種。ここまでが五名石。

 

他にもある。

 

 

判りにくいが、松脂石といってガラス質の岩石。割ると琥珀色の綺麗な破断面が観察できる。愛知県の鳳来寺山が有名だが、けしからんことに盗掘の跡があちこちにあった。

 

 

珪化木。今更説明するまでもないね。珪質化した樹木の化石。これも条件次第でオパール化して宝石のような輝きを持つことがある。アリゾナ州の化石の森国立公園が有名だ。

 

ということで塩原は火山活動と堆積圧縮作用が働いた関係で、珍しい岩石や鉱物が産出されるんだよ。

 

「また石ばっかりきゃ~」サル

 

いやいや。面白いものや綺麗なものもあるから♪

 

 

これは古生代後期の有孔虫の一種フズリナの化石。フズリナは石灰質の殻をもっていたので良質の石灰岩となる。新潟の青梅黒姫山秋吉台が特に有名。この標本は栃木市の鍋山鉱山産。地蔵岳を中心とする足尾山地は、周辺が火山からなるのに対して付加体の堆積岩なんだよ。だから足尾鉱山が開発されたんだ。

 

「なんかブツブツしてて気持ちわる~い」サル

 

 

牡蠣の化石(第三紀中新世/秋田県産)。こんな巨大な牡蠣がいたんだね。

 

 

ビカリア。巻貝の化石だよ。右上だけサザエの肝みたいな形している。これは貝殻部分が取れて内部が残ったからだ。その形から月のおさがって云うんだって。詩的な表現だね。

 

「なに?おさがりって」サル

 

有体に云えばう〇こ。

 

「げっ!」サル

 

それでは化石はこれくらいにして次は岩石。

(※アンモナイトや三葉虫など絵的に面白い化石も沢山あるけど僕の趣味で纏めた)

 

 

角閃石の一種である緑閃石。鉄の含有量によって緑から黒褐色まで色調が変わる。こうした針状結晶の集合体になるのが特徴。全ての標本に通じて言えるが、国産の、しかも巨大な標本が多い。これは比較的早い時期に設立された専門資料館であることと、鉱物・化石ブームの最中に標本を購入したことが理由として挙げられると思う。

 

建物の古さはともかく、標本のレベルはずば抜けて高い。

 

 

紅石英

 

憶測だけど、コレクターからの寄附も結構あるのではないだろうか。飾り台のついた研磨済みの標本などは、昔の田舎の資産家の応接間でよく見かけた。

 

 

正長石(福島県石川町産)

 

「ただの石のどこか良いのちよ?」サル

 

鉱物の結晶って基本的に小さいじゃん。その単一結晶が巨大だということがすごい。

 

 

魚尾状双晶をなしている石膏。これは珍しい!

 

「石膏ってあのギプスに使うの?」サル

 

そう。吉野石膏の石膏。石膏ってね、条件次第で様ざまな形になったり、巨大になったりするんだ。モロッコの沙漠のバラについては、以前触れたけれど、ナショジオで有名になったメキシコのナイカ鉱山の巨大石膏なんかもそうだ。

 

(写真はネットよりお借りしました)

 

一度は自分の眼で見てみたい。

 

 

菱マンガン鉱(青森県西目屋村・尾太鉱山)

 

尾太(おっぴ)鉱山の菱マンガン鉱は、その美しさで世界的に有名で、コレクター垂涎の的。以前伊吹山で拾った石をこれと間違えて、一所懸命に研磨した事があったね。

 

「途中でセメントの臭いがするってポイって棄てたよにゃ」サル

 

伊吹山は石灰岩の山なんだよ。よく考えたら。バカだった。

 

 

方鉛鉱

 

 

透入双晶をなした蛍石

 

鉱物の中では柘榴石蛍石がずっと欲しかったなあ。子供の頃。さすがに国産でこれだけの規模の標本はないね。

 

 

足尾銅山産の胆礬。つまり硫酸銅ですな。人工物を除いて、こんなに美しい大型標本はないよ。

 

 

御覧のとおり、標本のグレードは高いが、館内はモロ昭和。

 

 

そして客はわれわれ二人だけ。しかも五十過ぎのおっさんが子供並みに大はしゃぎ。ちょっと藪蚊が多かったな。写真撮影にうつつを抜かしてあちこち喰われまくった。

 

 

おサルが並ぶと、煙水晶の巨大さがよく判るね。

 

 

最後にこれも世界的に有名な市ノ川鉱山(愛媛県)輝安鉱。神様が気紛れで作ったとしか思えない完成度の高い鉱物結晶。とまあ、駆け足だったけど、ニュアンスだけは伝わったかな?

 

「君の趣味爆発じゃん。だれも判らんって!」サル

 

※屋内で化石発掘体験もできます。小さなお子さんから、お子さんの心の儘おっさんまで幅広く愉しめます。

 

(つづく)

 

こんな趣味におつきあい頂き、いつもありがとうございます。