北蔵王縦走(雁戸山~刈田岳~熊野岳)② | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

日程:2018年5月26日~27日

天候:(2日目)晴れ

行程:(2日目)熊野岳避難小屋4:45→5:28刈田岳5:47→6:32熊野岳避難小屋6:55→7:03熊野岳7:15→9:50祓川登山口→10:00蔵王温泉バスターミナル

 

≪刈田岳山頂から五色沼を望む≫

 

こんばんは。メタボ診断が確実視されるなか遊んでばかりのひつぞうです。

ま、悩んでも仕方ないね。酒量を減らすことから始めようかな。

早速ですが「北蔵王縦走①」の続きです。

 

★ ★ ★

 

避難小屋から名号峰までは、なだらかで長大な尾根が、馬の背のように続いて

いた。途中わずかだが(逆にわずかゆえに)面倒な残雪があった。総じて眺望は

なく、蒸し暑い真夏の前夜祭といった風情だったね。若干標高がさがったぶん樹

木の背丈が高くなり、クリアランスが確保できて藪藪攻撃はなくなった。それだけ

でもありがたい…。気がつけばエゾハルゼミの大合唱が始まっていた。

 

 

心和むのは時折姿を現すシロヤシオの白い花。実は僕、シロヤシオを見るの初

めてなんだよ。鈴鹿の竜ヶ岳や丹沢の畦ヶ丸など、この花の名山は登っている

んだけど。…それにしても暑い。全く風もない。たいした距離を歩いてる訳じゃな

いのに、暑さと藪漕ぎと羽虫の襲来にやられて、体力はどんどん失われてゆく。

むしろ、おサルの方が頑張っていて、僕の後方にぴったりついてくる。

 

「ひつぞう、単に太り過ぎなんじゃね?」サル

 

返す言葉が見つからない…。

 

そんなときだった。緩い登り坂に、野生動物の落とし物が点々と続いていた。

これは熊の縄張りの主張ではないか。とおサルに語った時だった。尾根を乗り

越した瞬間、反対の斜面を大きな音を立てて何かが動いてゆく。その距離10メ

ートル。

 

姿は見えない。特有の生臭い臭いもない。だが、大型野生動物の重い動作を

感じる。おサルに静止の合図を出して、カウンターアーソルト(撃退スプレー)

の安全弁をゆっくり外した。動きはなくなった。半泣きのおサルを誘導し、その

場を静かに離れた。

 

斜度は緩い。しかし全く名号峰につく予兆はない。「山と高原地図」には所要

時間「1時間40分」とあるが既に大幅に過ぎていた。見積もりが甘いのか、単

純に僕らの歩みが遅いのか。だんだん判らなくなった。

 

 

樹木の背丈が再び低くなり、亜高山帯が近いことを物語る。青空に淡く桃色

に映える花が満開だった。あたりはミネザクラ(高嶺桜とも云う)の群生地だ

った。

 

 

おサル、ようやく抜けたよ。

 

 

名号峰(みょうごうほう)に着いた。時刻14時15分。45分超過してしまった。

でもおサルの表情は明るかったね。ゴールの避難小屋まで残り1時間半だって

判ってたから。平然と写真を撮ってるようだけど、ハエが凄いんだよね。油断し

てると、お尻に30匹以上もたかってくる。アフリカかよ。ここ。

 

名号峰は火山の蔵王連峰にあって唯一花崗岩からなる鈍峰。予備知識なしだ

と、ここがピークと判らない。「名号」とは釈迦や菩薩の異名であり、唱和するこ

とで功徳が得られるという。「南無阿弥陀仏」がそれだね。恐らく、山体を螺髪

の仏頭に見立てたんだろう。

 

「またまたまた。テキトーなことばかり言ってんじゃねーよ!」サル

 

チコちゃんかよ。

 

 

じゃ行きましょうかね。雁戸山を過ぎて以降、ブドウ沢からの入山者一人と

スライドしてからというもの誰にも逢っていない。

 

 

20分ほどで「追分」に到着。蔵王ダム(鍋倉不動経由)方面と、かもしか温泉

跡に続く登山道とクロスする。ただし、かもしか温泉への通り抜けと、ロバの

耳岩へのバリエーションコースは進入禁止だった。かもしか温泉は1980年の

泡雪崩(ほうなだれ)により温泉宿「白雲山荘」が全壊。それ以降廃業した儘

だけど、温泉はいまだ滾々と湧き出ていて、一部の野湯マニアにはよく知られ

た存在なんだよね。

 

「這入ゆ!」サル

 

今回は無理だよ。

 

 

追分の先は「自然園」というエリアになる。まるで日本庭園のような、砂礫とハイ

マツからなる独特の風景。雲ノ平の○○庭園と一緒だね。

 

 

こんなに歩いてきたんだ。雁戸山も離れて見ると巨大だなあ。

 

 

礫地の歩きがまたまた体力を奪うんだよね。ペンキマークがあるので道迷いは

ない。この時、大東岳方面から災害ヘリが飛んできた。その儘仙台市内へと旋

回していったようだが…(その後調べてみて、事故があったと知った)。

 

 

岩場を登り詰めると、もう一段、丘があった…。

 

 

ようやく稜線に辿りついた。烏帽子岳や屏風岳の巨躯が眼に飛び込んできた。

手前になにやら建物がある…。そうか。あれが県営レストハウスなのか。観光

で訪れた時と全く異なる荒涼とした気配に満ちていた。太陽の反射で車の所

在が知れた。まだ客がいるようだった。なのにここには僕とおサルしかいない。

不思議な感じがしたよ。

 

 

今夜はここにお邪魔します。

 

 

ドアを開けると誰もいなかった。貸し切りだよ♪ま、そりゃそうだよね。熊野岳は

エコーラインかロープウェイを使えば、簡単に日帰りできる。すき好んで宿泊す

るのはうちくらいだ。

 

早速着替えて、寝床を拵えたら酒宴と夕食の準備にかかる。今夜は初のお好

み焼き。カップヌードルミュージアムの土産物コーナーで、特製お好み焼きを

買ったんだ。チキンラーメンをパリパリに揉み解して具材にするんだよ。ベビー

スターラーメンみたいだな。

 

 

水で粉を溶いてあらかじめ下準備してきたキャベツの千切りと生卵を混ぜて

よく練り合わせる。その一方豚のバラ肉を強火で炒めて良い脂を引き出す。

 

 

パンが温まったらタネを投入。万遍なく脂を掛けてカリカリに焼き上げる。最

後にマヨネーズとソース、青のりと鰹節を振りかければ完成だ!

 

最高においしかった。翌朝まで室内はお好み焼きの匂いで充満していた。僕

らがいなくなった後に訪れたハイカーは、なんだろうって思っただろうね。

 

17時を回ると一気に冷え込んできた。蔵王山頂周辺は風衝地帯なんだよ。ワ

インを飲んだ後、シュラフを繋げて寝ることにした。でもおサルは寝相が悪い

からなあ…。

 

★ ★ ★

 

21時頃に眼が覚めた。外に出て見ると霧に包まれていた。月に暈が掛かってい

た。明け方には回復しそうだ。安心してシュラフに包まった。気がつけば4時。慌

てて朝食を作り始める。先日作ったカップヌードルに湯を注ぐ。トマト味のスープ

が旨かったな。

 

 

身支度を整えて刈田岳を目指して出発。おサルは空身でピストン。

 

 

素晴らしい天気になった。下界は雲海の底。五色沼を囲むように歩いてゆく。

 

 

仙台市内方面。記憶の中の御釜はもう少し小さな印象だったが、実に雄大そ

のもの。

 

 

避難小屋から45分で着いた。

 

 

おサル大慌てでトイレに向かうが、建物の中にあるようでスゴスゴ戻ってきた。

 

 

山頂には刈田嶺神社(奥社)が安置されていた。

 

 

これでリベンジだな。

 

 

当たり前だけど誰もいない。こんなに広いエリアなのに。

 

 

そこかしこにケルン。

 

 

前方には南蔵王連山。ここもいずれは登らないとね。

 

「頑張れー」 サル

 

なんで。一緒に行こうよ。

 

 

ジッとしていると肌寒い。

 

 

遥か先に吾妻連峰が見えた。充分景色も堪能にしたので戻ることに。

 

 

月面世界のようだね。

 

 

ようやく太陽が御釜を照らし始めた。抹茶色だよ。

 

 

小屋までは雪田を横切っていく。荷物を背負い直して熊野岳へ。ここは雪山で

一度歩いているけど、なにも見えなかったんだよね。

 

 

ほとんど勾配差はない。

 

 

熊野神社が見えてきた。

 

 

雁戸山っすね。

 

 

これで熊野岳もリベンジ達成だ。

 

 

いまはこんなだけど…

 

 

ホワイトアウトだとこう。カメラも睫毛も凍りついて大変だったよ。

 

 

名残り惜しいけど下山だ。まずは地蔵岳方面へ。

 

 

岩の隙間に小さなミネズオウが開花していた。土質によってピンク色にも

染まる。

 

 

ワサ小屋跡を通過。ロープウェイ駅へはこの尾根を越えていくが、僕らは

左の巻道へ。

 

 

直ぐに崩壊地を通過。慎重に。

 

 

この辺り一帯もミネザクラの大群落地だった。

 

 

とても(八方平周辺と)同じ山域とは思えないくらい立派な登山道だった。

 

 

熊野岳(ワシ岩)を見返す。山肌一帯にミネザクラが満開。

この辺りを通過していた時だった。おサルが突然つぶやいた。

 

「なんか頭の後ろがデキモノみたいな感じになって痛いにゃ」サル

 

えっ!それってもしや…。

 

慌てておサルの後頭部を掻き分ける。いた。ヤツの姿がそこにあった。おサル

は是非写真に撮れというが、僕にはそういう趣味はない。マダニは無理に取る

と頭部が残ってしまい、化膿したり(最悪の場合)ライム病に感染しかねない。

 

「ひ~!」サル

 

そのままにして翌日病院に直行することにした。

 

「なんか痛いよう」サル

 

引っ張られるような痛みがあるそうな。そうだろう。マダニの顎がしっかり頭

皮に食い込んでいるんだから…。

 

 

スキー場ゲレンデを二回横断。この後だったね。おサルがマダニにハッカ水

を掛けてみてはどうかというのだ。そういえば、山岳雑誌の特集記事に毒虫

にはハッカ水やメンソールを掛けると効果的と載っていたような。

 

これでもかっというほどかけてやった。おサルの頭皮の地肌がヌメヌメになる

くらい。どうやら動きが止まったらしい。

 

「なんか痛くなくなった!」サル

 

 

距離はあるが、登山口までは斜度が緩くて広い道で快適だった。

 

 

砂防提を渡り、ずっと似たような道を降っていくと、次第に硫黄の臭いが濃厚

になり、最後は温泉採取小屋が現れ、一気にゲレンデに飛び出す。

 

 

着いたね!

 

 

祓川コースの登山口はこんな感じ。

 

 

10分に一度のペースでマダニを観察するが、一向に離れる様子はない。ただ

し動きは停止したようだ。吸血したダニ特有の膨張は一切なく、茶色の小さな

身体がおサルの髪の毛の隙間から見える…。

 

一端道路に降りて、向かって右(つまり北方向)に進むと、洒落た煉瓦色の建物

が現れる。これが蔵王温泉バスターミナル。バスチケットも売っている。支払い

は降車時でOKだけど、高額紙幣しかない時はあらかじめ購入しておくといい。

 

 

一時間に一本。だいたい20分頃の出発となる。ちょうどいい時間についた。

JR山形駅まで45分(1,000円/人)。そこから小型タクシーに乗り換えて、関

沢まで20分(料金4,550円)だった。時刻11時25分。Y村まで渋滞にハマる

ことなく帰宅した。

 

★ ★ ★

 

問題はおサルの飼っているマダニである。翌朝早く皮膚科を往訪した。なお

マダニは切開して除去するため、手術施設のある皮膚科でないと処理でき

ない。更に少し抉るため、頭皮の場合だと、小さいけどハゲが残ってしまう。

 

「え~っ!いやだああああああああ」サル

 

そうは言ってもね。

 

★ ★ ★

 

昼前に携帯に電話が掛かってきた。

 

「あのさ。ピンセットで先生が抓んだら取れちゃったって」サル

 

結論から云うと、ハッカ水が功を奏してマダニを殺傷できたらしく、死んで

浮き出ていたらしい。好かったよ。おサルがキズものにならなくて…。

 

「っていうかさ。ハッカ水使うアイデア、ひつぞうが真っ先に言うべきなんじゃないの?」サル

 

今回の山行で一層僕の信用は落ちてしまったらしい。

 

 

(終わり)

 

【行動時間】 

一日目…9時間35分

二日目…4時間20分

 

いつもご訪問ありがとうございます。