東電歩道(野反湖~切明ピストン)① | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

東電歩道 群馬県・長野県


日程:2016年10月15日~16日

天候:(1日目)快晴、(2日目)快晴のち曇

行程:(1日目)野反湖(白砂山登山口)6:17→7:08地蔵峠7:15→10:40東電小屋(30分ロス)11:30

         →14:28切明温泉

◆登山ポスト(トイレ小屋の中にあり)/トイレあり(綺麗です)/駐車場50台は可能

◆関越道「伊香保IC」より国道353→国道145→国道405経由で約1時間40分ほど



≪大倉山山腹最高点1808mから臨む野反湖。中央に浅間隠山≫



こんばんは。ひつぞうです。
ようやく週末に快晴の二日間がはまり、多くのアウトドア愛好家の皆さんが
溜飲を下げたことでしょう。

かく言う僕も以前から予定していた計画がうまく達成できて感無量です。
今回訪れたのは「東電歩道」。ピークハントのない山旅です。
あまり耳慣れない場所だと思うので説明を加えておきます。
以下、いつもの山行記録です。


【今回のルート】



三年前のちょうど同じ頃。
佐武流山から苗場山の周回縦走をやりたくて、長野県の秘境「秋山郷」を訪ねた。
ここは冬場は雪に閉ざされ、陸の孤島になることも珍しくない魚野川上流の際奥にある。

結局、悪天に阻まれて土舞台の幕営ポイントで撤収し、赤線を繋ぐことは
適わなかったが「山と高原地図」を見ていて、あるラインの存在に気づいた。

なんと群馬県の野反湖から秋山郷まで登山道がついているのである。
途中ピークらしいものはない。こんな酔狂なコースを歩く人がいるのだろうか。

しかし、地図に書き込まれた「紅葉時期は小黒部的な趣きあり」の一文に心がときめいた。



どうせ繋ぐなら切明温泉に泊まってゴールを飾りたい。
手頃な雄川閣は宿泊経験があるので秘湯で知られる「雪あかり」さんに投宿することにした。

ひとつ問題があった。標準タイム片道8時間強のコース。
片道で繋ぐには群馬県のJR「長野原草津口」駅から
野反湖まで「ローズクィーン交通」の乗合いバスで向かう必要がある。
(所要時間1時間16分)

だが肝心のバスが(往復共に)1日2便しかない。
そのバス移動を取り入れても温泉到着は19時過ぎになってしまう。

おさるが黙っている訳がない。
(というより陽がくれて危険だあせ


【参考】

長野原草津口駅発→野反湖着
10:42→11:58
13:45→15:01

野反湖発→長野原草津口駅着
12:19→13:31
15:11→16:27

10月20日で営業終了

(※ローズクイーン交通の時刻表はHPには掲載されていませんが廃線ではありません。
ただし念のため電話で確認されることをお勧めします)

★ ★ ★

ベストプランは野反湖キャンプ場で1泊。翌日早朝より和山温泉まで抜けて
津南交通でJR津南駅まで移動。電車で戻るパターン(この場合温泉はない)。

セカンドベストとして、1日目ローズクィーンバスの第1便(10:42発)で出発。
途中の東電避難小屋で一泊という方法もある。
標準タイムで小屋到着は16時頃だし、避難小屋はあくまで非常時のものなので
お勧めはできないけど。

温泉泊で片道ルートだと、やはり2泊(野反湖・切明温泉)は欲しい。



年休はとれず温泉泊は譲れない。
ということで自動的に一泊二日となり、車を停めた野反湖から切明までを
嫌でもピストンするしかなくなった。まったく同じコースを往復…。
片道延長約15km。酔狂以外の何物でもない。

まずは白砂山登山口をスタート。
紅葉の季節とはいえ、わりとマイナーなエリア。
登山客よりも鱒釣りの客が多い。



一端軽く登って再びくだる。

「全然意味がないじゃん!」サル

残念ですけど、このコース、途中渡渉があるため地味なアップダウンが続くのだ。


最初はハンノキ沢の渡渉。
一番大きい沢だが木道が設置されている。



ただ早朝で気温4℃。霜が降りている。いつ滑るか知れたものではない。
細心の注意で渉る。



地蔵峠までは西側斜面を詰めるので
しばらく陽が当たらないので肌寒い。

おさる、今回ポイントでゲットしたビーニーを持参。



素晴らしい紅葉の森だった。
先週のリベンジを果たせた。ありがとう山ノ神。



地蔵峠に到着。ここで白砂山方面と切明方面が分岐する。
呼んで名の通り。お地蔵様が鎮座していた。
旅の安全を祈願してここから再び降っていく。



ここを左下へ。
実はこの先、道標の類はおろか、赤テープも一切なかった。
道迷いするポイントは全くない訳ではないが
充分な刈り払いがされていて危険箇所もない。



直ぐに北沢の第二渡渉点についた。
水量が多いと面倒くさそうな沢だが、飛び石伝いになんとか行けた。



ここから緩いジグの坂を登っていく。



陽が差し込めば黄金の世界。
全体を通じてこのあたりが一番紅葉していた。
その後は山腹の巻道となり、1808m最高点を越して次第に高度をさげていく。
今年の紅葉は10日ほど遅れているようで、
最盛期を迎えている筈の秋山郷の色づきはまだ三割程度だった。

(次の週末もまだ愉しめそうです)



この辺りはダケカンバが多い。



モミジの仲間も多い。癒されるなあ。

「ひつぞう、最近仕事で疲れているもんニャ」サル

山に来れれば全て忘れるのです。



自然の営みの全てが愛おしく、そして美しい。


時間の経過を忘れるほどだ。

忘れてならないのは熊対策。
ここのところ、山深いエリアで熊の被害をよく耳にする。
まだ全然使っていない(使いたくもないが)熊避けスプレーを持参したので
時々遭遇を想定してホルスターから抜き出す練習をするが
我ながらまったく様にならないのはどうしたことか。


このコース、野反湖側が標高が高いため、初日に下山、二日目に登山という
変な構成になる。二人とも本確的な登山は久しぶり。
ほんとに大丈夫なのだろうか。



これだけの快晴は久しぶりだから
有名ピークはハイカーで溢れているだろう。
単なる偶然だけど静かな山旅を求める二人にはちょうどよかった。

温泉宿を予約しているので、もし悪天候だったら
この歩きの旅は中止して車移動になって頓挫していた。
だから、ほんとにラッキーだった。




長い長いアップダウンのあるコースだが急登はない。



ようやく平坦になり、山裾を巻くような水平移動になる。
すると野反湖と、その背後に白煙を吐く浅間山が見えた。



更に、魚野川の深い渓谷を挟んで、岩菅山と裏岩菅山の稜線。



三つ目のイタドリ沢はちょろちょろだった。



イタドリ沢から西大倉山までは横断方向にきつく傾斜していて
ネマガリタケの根っこまで露出している。歩きづらくスリップに注意。
ここを登り詰めれば西大倉山だ。ただし、標識もなにもないので
気づかずに通過してしまうだろう。
当然三角点もない。(本当の最高点は通過しない)

眺望は最高だ。
すこし降ると反対の稜線にこの山域最高峰の佐武流山が顔を現す。



なんということもない茫洋とした、個性のはっきりしない形の山だが
切明からの渡渉や針葉樹の根が張り出した急登など変化に富んだ
山行は素晴らしい達成感を約束してくれる。

テント泊で臨めば山深さを身体全体で味わうことができるだろう。
土舞台と西赤沢源頭の間に水場があるが、この季節は涸れやすい。
同じ時期に登ったが、500mlのペットボトルを一杯にするのに5分かかった。



長い長い尾根を一気にくだってゆく。
途中ブナの森を通過する。空間全体が黄色くなった。

おさるよ、来てよかったなあ。

「きのこはないのかの~?」サル

たぶん、あると思いますよ。ただナメコはまだ早いね。
あるとすればムキタケとかクリタケかなぁ。


もうね。凄いよね、烏帽子岳。
これ見てくださいよ。圧倒されるような個性と迫力。

僕が百名山を選定するとすれば絶対入れる一座。
マイナーピークとは思えない独特の山容で
切明の林道からみると巨大な飛行船か空母みたいだ。
鉢が大きい割りに、周囲が切れ落ちているのでアルペン的。
岩菅山から縦走すれば訳はない。
ちょっぴり危険な場所もあって、スパイスの効いた山行ができる。いい山だ。



おっ、チャナメツムタケ。優秀な食用菌。
でも見るだけにしておこう。



ちょっと疲れがでてきた。
というのが暑いのよ。10月も中旬なのに。いやマジで。
汗が滴り落ちて半端ない。水は東電小屋までいけば補給できる。


ムキタケ見つけた!
まだ小さい。見るだけにしようかな。帰りに頂こうかな。



今度はヒラタケ。
よくスーパーにシメジとして売られているのは全てこれだ。美味菌。



ベニチャワンタケモドキの幼菌??



降りてきました。以前の避難小屋。完全に朽ちています。



吊橋を渉れば東電小屋はすぐ。
このあたりは岩魚釣りの客が多いのだろうな。
河原の至る所に焚き火の跡がある。



一瞬、制限重量40kgに見えた。渡れないじゃん!

400kgの見間違いだった(笑)。そんな筈ないよな…確かに。



最高の天気になったので空が碧い!
渋沢ダムの水門主塔が見えてきた。



幾つも人工的なものが見える。
真ん中が東電の管理事務所。当然這入れない。
右の茶色の建物が釣り師と登山客に開放された避難小屋。



ここで大休止することにした。
持参したリンゴを食べる。重かったけど、こんな暑い日には果物がいい。

「ひつぞう、ひっどい!私二切れしか食べてないのに!」サル

さるよ、うかうかしては人生生き残れないよ。


なかはご覧のとおり。清潔。詰めれば7人は寝られそうだ。
(他の方のブログに書かれていた様に)
確かにパックのお酒がデポしてあった(笑)。


越し方を振り返る。下ってきた尾根は左側に隠れて見えない。
あの左の雲の下が野反湖かのう。



さて、そろそろ出発しよう。
とここで思わぬトラブル発生。
「山と高原地図」にはこのまま右岸に道が続いている。
なので、刈り払われた道を直進したら、なぜか渓谷に導かれてしまった。

変だな。

と思いながらも階段を降る。
すると鎖がついていて降りられるようになっている。

河床には複数の重機が置かれている。
多分ここ一月ほど集中した豪雨で傷んだ渓の補修工事かなにかだろう。

今日は週末なので誰もいない。
はて、こまった。どう考えても違っている。
というのは、この先200mで左岸に橋が跨いで、トンネルに続くことになっているからだ。
渓を歩くわけがない。

透明な水のなかを尺越えの岩魚が悠然と泳いでいる。

戻って藪の中を彷徨するが、背丈より高いネマガリタケの密藪に覆われ
あまり深入りするとどんな野生生物が出てくるか知れたものではない。

万事休す。

おさるの冷たい視線が痛い。

「どーするの!反対に道があるけど」サル

確かにダムの提体を越すと左岸に道が続いている。
ところが「山と高原地図」にはそんな記載はない。
ガーミンGPSを見たら、道は破線として標示されるものの
トンネル前で消えている。ただの巡視路ではないのか。



ダムの底の水は翡翠のように美しかった。
たまらず写真を撮ったら「そんな写真なんか撮ってる場合!?」となじられた。



こっちにいってはいけません!



策が尽きてしまったので、一縷の希望を託してダムサイトを通過することにした。



果たして、この後どうなるのだろうか。

がんばれ、ひつぞう。怒るな、おさるこ!

「怒るにきまっとろうが!ばかちん!」サル

(つづく)


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