【広瀬隆氏が「脱原発先進国」ドイツをルポ 「廃炉でも地元経済は衰退しない」】
〈週刊朝日〉
[6/13 16:02]
「廃炉で地元経済が破綻する」と不安を抱く原発立地自治体と、その住民は多い。
作家の広瀬隆氏は俳優の山本太郎氏らとともに、日本に先んじて2022年の「原発ゼロ」を決めたドイツへ赴いた。
8基すべての廃炉を進めるドイツ北部のグライフスヴァルト原発で、広瀬氏が目の当たりにしたのは地元経済の衰退ではなかったという。
* * *
見学後、われわれの目的である地元の雇用問題を尋ねると、「かつて原発運転時には2000人ぐらいだったが、原発を受け継いだ現在の国営廃炉企業EWN社(Energiewerke Nord)の従業員は700人余りなので、ほぼ3分の1に減った。
社内の労働者は、その分だけ解雇されたので、決して廃炉だけで地元の雇用が確保されるわけではない」という。
しかし、次に廃炉コストを尋ねると、「現在まで20年間で、およそ20億~26億ユーロが廃炉作業に投入された。
したがって、20年間でおよそ2000億円、毎年100億円ぐらいを要し、その大金が地元に落ちたことになる」という。
またほかの資料によると、東ドイツ側の原発の廃炉はすべてここEWN社がおこない、ロシアの原子力潜水艦の解体もおこなって、さらに西ドイツ側の原発の解体も引き受けているので、ここがドイツ全体の廃炉センターとなって、42億ユーロを要した、という。
つまりさらに大きな4000億円以上の金が地元に投入されたことになる。
毎年200億円という大金だ。
EWN社の廃炉ドキュメント映像をみると、廃炉解体とは、放射能のかたまりを扱うので、それほど大変な時間と、労力と、資金を要する、われわれが想像するよりはるかに大規模な難工事なのである。
そのため、廃炉の解体に伴って成長した鉄鋼関連の機械工業が生まれていたのである。
したがって、経済崩壊と高齢化が進んできた東ドイツ側の中では、この地域の雇用悪化はそれほど悪くない状態にあるという。
※週刊朝日 2013年6月21日号
【独、最終処分場探しやり直し 脱原発でも避けられぬ壁】
MSN産経ニュース
2013.6.9 07:00
ゴアレーベンの調査鉱山内。
ベルトコンベヤーは掘削した岩塩層の搬出に使用されていたが、今は止まっている
ドイツで高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設地選びが混迷している。
約35年間、唯一の候補地で調査を進めてきた計画を政府が白紙に戻し、場所選びを一からやり直すことを決めた。
背景には、安全性や選定過程への疑問が拭えなかったことがあるが、地元住民の心境は複雑だ。
脱原発を決めても廃棄物処理は避けられず、苦悩は続く。(ドイツ北部ゴアレーベン)
ベルリンから北西へ約150キロのゴアレーベン村。
唯一の候補地だった「調査鉱山ゴアレーベン」は松林に囲まれていた。
地上からエレベーターに乗り、耳が少しつまるのを感じながら約2分。
地下840メートルに到達すると、大きな空間が広がった。
肌色がかった白い壁面や天井は、すべて塩だ。
「家に少し持ち帰って料理に使う人もいる」。
案内役の従業員の言葉を受け、壁を触った指をなめると、塩味がした。
この岩塩層は250万年前に形成されたとされ、高レベル放射性廃棄物埋設の適否を調べるため、地下探査が続けられてきた。
そのために整備された坑道の総延長距離は約8キロに上る。
ただ、従業員の表情はすぐれない。
穴だらけの壁の前で「発破を使い坑道を延ばす」と説明した後、「もうやっていない」。
昨年調達したばかりの特注の掘削機を指して「1台250万ユーロ(約3億2500万円)だ」と誇りながら、「使っていないんだ」と肩を落とした。候補地選定のやり直し決定に伴い、地下探査が中止されたためだ。
政府がゴアレーベンの地下探査に乗り出したのは、コール政権時代の1983年にさかのぼる。
激しい反対運動などが起き、「反原発」を掲げる緑の党が参加する政権下で探査は一時中止されたが、2010年にメルケル政権が再開した。
ただ、それでも反対は強く、政府は計画の白紙化を決定。今年4月、全16州と新たな候補地選定手続きに合意した。
国内全域が対象でゴアレーベンも除外はされないが、探査が中止されたのは「公正さ」を期すためだ。
これまで探査に投入した費用は16億ユーロに上り、いつでも再開できるよう維持管理に今後は年2千万ユーロが必要だという。
◇
調査鉱山から約2キロの集落では所々で黄色の「×」マークをつけた車や家屋が目についた。
ゴアレーベンでの処分場建設への反対を示す印だ。
反対派のプール管理人の男性(44)は「親の世代が生んだ核のゴミは何とかしなければいけない。だが、ここは安全ではない。アッセを見れば分かる」と強調した。
「アッセ」とは独北部で保管の研究のため、70年代後半までに低中レベル放射性廃棄物が大量に搬入された旧鉱山を指す。
その後、地下水の浸水が発覚し、放射性物質漏出による土壌汚染が懸念されているが、連邦政府は対応に苦慮。
ゴアレーベンはアッセと同じく岩塩層で地下水脈があることから、同様の事態が不安視されている。
反対派には候補地に決まった経緯にも不信感があるようだ。
当時は東西ドイツ分断の時代。
ゴアレーベンは旧東独との国境付近に位置していたことから、「事故があっても影響は東独側に行くという政治判断で選ばれただけだ」(55歳の自営業男性)との声が上がる。
ただ、経済的基盤の弱い村や周辺地域にとり、処分場探査は重要な雇用創出の場でもある。
調査鉱山付近には放射性廃棄物の中間貯蔵施設もあり、双方の従業員の約8割は地元住民だ。
探査中止後、調査鉱山の従業員はすでに240人から150人に減らされ、今後の雇用継続に不安は強い。
ゴアレーベンを含む集合自治体ガルトーのフリードリヒ・ウィルヘルム・シュレーダー首長は、探査中止により地元雇用とともに、「従業員が培ったノウハウが失われる」と懸念する。
その上で「メディアでは反対派の声の方が大きく報じられるが、実は反対派は住民の25~30%だ」と明らかにした。
「×」印を掲げた住宅の向かいに暮らす男性(71)もこう語る。
「中間貯蔵施設で20年間働いたが、毎年検査を受け、危険は感じなかった。最終処分場探しをまた最初からやると時間と費用がかかるじゃないか」
◇
「ゴアレーベンの適性を否定する調査結果は現時点では出ていない」。
核廃棄物処理に関する連邦政府の助言機関「処分委員会」のトーマス・ファンヘネル委員長代理はこう指摘する。
調査は中止されたが、まだ途中で、ゴアレーベンが安全とも危険とも最終判断できないということだ。
調査鉱山を管轄する連邦放射線防護庁も、アッセのような事故への懸念について、過去に岩塩が採掘されたアッセと未開発だったゴアレーベンの状況は異なるとの立場。
旧東独国境付近という「政治判断」が選定理由との見方も「推測」としている。
ただ、当時の文書保管が不十分で、今となっては正確な選定の経緯は分からないという。
長年かけた議論は結局、振り出しに戻った形だが、ファンヘネル氏は「ゴアレーベンが反原発と原発推進の議論に結びついた」ことも議論が膠着(こうちやく)してきた大きな要因とみる。
ゴアレーベンは計画当初から、当時盛り上がった反核運動と原発推進派の対立を象徴する場所となった。
そのため問題は安全性だけでなく、「政治色」を帯びてしまい、尾を引いてきたとの見方だ。
新たな候補地の選定では専門家委員会が15年までに選定基準を提案し、その基準や候補地選定など各段階の決定を連邦議会が行うことなどで「透明性」の確保を狙う。
処分委員会のミヒャエル・ザイラー委員長は今回の決定を歓迎する一方、「決断は科学的根拠に基づかねばならない。
だが、それを下すのは政治であり、決定は政権が代わっても持続されねばならない」と述べ、党派を超えた幅広い合意の必要性を訴えている。
◇
ゴアレーベンの経緯 ドイツ政府は1974年、使用済み核燃料の再処理施設、放射性廃棄物の中間貯蔵施設、最終処分場を1カ所に集中整備する方針を決定。
候補地はニーダーザクセン州の3カ所に絞られたが、反対運動が起き、州側の判断で77年、3カ所に含まれないゴアレーベンが選ばれた。
国内での再処理断念で再処理施設は建設されていないが、中間貯蔵施設をめぐり、放射性廃棄物の搬入に対する大規模な抗議行動なども起きた。
最終処分場候補地選定やり直しに伴い、この間は中間貯蔵施設にも新たに搬入しない方針。
~~~~~~~~~~~~
全原発廃炉を決めたドイツでも使用済み核燃料・核のゴミ問題は深刻だ。
日本は、福島第一原発事故を経験したにも関わらず国内の再稼働はおろか海外にまで原発を輸出しようとしている。
しかも、使用済み核燃料・核のゴミ問題は先送り。
福島第一原発事故以前の自民党政権が先送りして来たモノを再び先送りしようとしているのだ。
このまま、原発を再稼働させれば更に核のゴミが増え続ける。
自民党・安倍政権は、「夢の核燃料サイク「」に託しているらしいが、見果てぬ夢のまた夢。
核のゴミは、未来へ先送り!!
.