「今、ちょっと悩んでいることがあって」
ある日電話で相談された。
「大手旅行会社へ転職を考えてて。入社するには面接や試験があるんだ。今の会社でも悪くはないのだけど」
「ヘぇーチャンスがあるならトライすればいいじゃん!応援するよ」
「ワタシが大手旅行会社に入ったら、sayaはうれしい?」
「クトゥが幸せならそれが一番だよ」
彼が勤めるのは小さな旅行会社。この会社が催行するツアーで私は彼に出会った。
もしその大手旅行会社に入れれば、安定した仕事・収入になる。
「うん、がんばってみる」
それからしばらくして、吉報が入った。
「面接受かったよ!」
「ほんと!?すごいじゃん!」
面接だけでも高い競争率で100人以上受けて合格者はたったの10人だったとか。
でもこれはまだ始まりでしかなくて。受かった10人は丸二ヶ月、会社で研修とテストを受ける。このテストに合格して初めて正式に入社となるのだ。
研修はひたすら暗記。バリの主要な観光スポット10ヶ所以上の日本語の解説文をすべて暗記し、見ないでも言えるようにすること。
ただ暗記するだけだって大変なのに、外国語なのだからその大変さは想像に難くない。しかも研修中は無給だ。
研修と勉強の様子はちょこちょこ連絡をくれ、私は時にはちょっぴり手伝って、見守り、応援した。
本当に必死でがんばっていた。
そして二ヶ月が過ぎた。
「今日、最後のテストなんだ。行ってくるね」
「うん、がんばって。祈ってる」
夕方、SNSでメッセージが入った。
テキストはなくて、泣いたキャラクターのスタンプだけ。。。
ダメだったのかな。。。
その直後、
「ukatta yon」
やられた。
私はオフィスをぬけすぐに電話をした、
「おめでとう!!」
「sayaが応援してくれたおかげ。すごいパワーをもらったよ、ありがとう」
胸がいっぱいで、込み上げてきて、涙がでた。
「だけどね、1人ダメだったんだ。10人全員受かればパーティしようって言ってたのだけど」
彼は落ちてしまった仲間を気遣って合格の喜びをSNSに投稿することはしなかった。
危うく私が投稿しちゃうところだった。
惚れなおした。