おもしろ五十音図
 
                                                       ◇まゆつば国語教室9
 
今回はまた趣向を変えて……
ひらがなの五十音図ってご存じですよね。
 
あいうえお(ア行)   かきくけこ(カ行) ~~
 
というやつです。
この五十音図から、あるいは口語と文語の五十音図の違いから、いろいろ面白いことがわかります。
 
◎怪しい行はどれ? 
 
同じ行は、基本的には「音の出し方」が同じなんですが(ア行、カ行で試してみてください。唇の開け方以外は同じでしょ)、
じつは怪しい行が二つあるんです。
つまり、音の出し方が違うのに同居している行。
──さて、どの行でしょう?
 
音はアルファベットで書くと区別がつきやすい。
    ア行→  a   i   u   e   o
    カ行→ ka  ki  ku  ke  ko
この方式でやると……おかしい行がわかります。
 

 (*゚ー゚)ゞ  ?( ̄_ ̄ i)・・  (^o^ゞ  ( ̄□ ̄;)!!  <(_ _)>
 

サ行→ sa  shi  su  se  so  (「し」が仲間はずれですね)
タ行→ ta  chi  tsu  te  to  (「ち」と「つ」がそれぞれ別です)
 
サ行は、本来2つであるべき行が交ざっているんです。
サ行1→  sa   si   su   se   so   (サ・スィ・ス・セ・ソ)
サ行2→ sha  shi  shu  she  sho   (シャ・シ・シュ・シェ・ショ)
このそれぞれが、同じ音の出し方です。
 
同じくタ行。これは何と3つの行が交じっている!
タ行1→ ta    ti    tu   te   to   (タ・ティ・トゥ・テ・ト)
タ行2→ cha  chi  chu  che  cho  (チャ・チ・チュ・チェ・チョ)
タ行3→ tsa   tsi  tsu  tse  tso   (ツァ・ツィ・ツ・ツェ・ツォ)
 
この複雑怪奇!な五十音図は、日本語を学ぶ外人さんの最初の壁らしいです。
「なんだこりゃ?!」なんですよ。
 
◎口語と文語の違いから何が分かる?
 
口語と文語の五十音図で、違うのはヤ行とワ行です。
だぶっている文字があるア行を加えて書き出してみます。
 
  口語  あ い う え お
        や   ゆ   よ
        わ        を
 
  文語  あ い う え お
        や い ゆ え よ
        わ ゐ う ゑ を
 
文語のヤ行、ワ行は、古代には
    ya  yi  yu  ye  yo    
        wa  wi  wu  we  wo
という音だったと考えられています(まゆつば)。
また、文語の五十音ができたのは平安時代初めらしい(まゆつば)。
──ということを前提にすると、日本語の「音」の変化についてわかることは?
 
 
 (*゚ー゚)ゞ  ?( ̄_ ̄ i)・・  (^o^ゞ  ( ̄□ ̄;)!!  <(_ _)>
 

1)平安時代初めには、すでにヤ行の「yi」「ye」、ワ行の「wu」は、ア行の「i」「e」「u」と同じ発音になってしまっていた。だから同じ文字で済ませた。
(最近の若いやつはいいかげんな発音をしおって、嘆かわしい、とおじいさんたちは怒っていただろうな)
 
2)ワ行の「wi」「we」はそのころでも、ア行の「i」「e」とは別の発音だった。だから「ゐ」「ゑ」という別の文字を入れた。
今、学校で古文を読むときは「ゐ」「ゑ」を、「い」「え」と発音してしまいます。ほんとは違うんですよ。
 
3)ワ行の「wo」は、口語でもア行の「お」とは別の「を」を入れている。これはなかなか変化しないようですね。
「おかし」の「お」と、「本を読む」の「を」、区別していますか? 違うんですよ。
──はい。区別していない人が多そうですね。これまで見た流れからすると、この区別もだんだんなくなる方向へ動いているんだと思います。
 
日本語の単語や文法が変化してきたことはみんな知っていますが、「音」も長い時間をかけて少しずつ変化しているんですね。

◎ついでに、五十音図のトリビアをもうひとつ。
 
・ハ行は古くは「f音」だったと言われています。
     川(かは)→ kafa → kaha → kawa 
     母(はは)→ fafa → haha
 
・もっともっと大昔は、「p音」だったと言う説があります。
     川= kapa    かっぱみたい(笑)
     母= papa      パパ? あれ?
 
こういうのを万葉仮名(日本語の音に漢字を当てたもの。かなの元)や古代中国語の音韻をもとにして、研究している学者さんがいらっしゃるんですね。