9月8日、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターにて、台湾カルチャーミーティング2017第6回が開催された。
ゲストは台湾の超有名漫画家・魚夫さん。
一度聞けば印象に残るちょっと面白いペンネームだと思いませんか。
1980年代、魚夫さんは新聞記者やテレビ番組の司会者として名を馳せ、その後、民進党系の政治団体の幹部や大学の教授なども務めた経歴を持つ。
現在は、食や建築の絵を描くことで、台湾の文化を多くの人に伝えている。
魚夫さんは屏東県の出身だが、奥様が台南出身ということもあり、今から約10年前に、台南に移住した。
2013年に出版した「移民台南」は、台南で魚夫さんが日々食べているものが中心だ。店の歴史や、作り手の思い、さらには魚夫さんの感想などを含め紹介し、読み応えがある。ちなみに、2013年度の台南を紹介する本のうち、ベストセラーにもなった一冊だ。
翌年は「楽居台南」を出版した。今度は食に加え、台南の建築にもスポットを当てている。清朝、オランダ、日本と統治者が変わってきた台湾では、建物も時代とともに変化してきた。そんな歴史的背景もわかる内容だ。
ちなみに、この2冊は今でも私の台南バイブルだ。
著書である『わたしの台南: 「ほんとうの台湾」に出会う旅』の中国語版を出版する際に、対談相手として魚夫さんをお願いしたことから、知り合った。
魚夫さんのイラストはとにかく線が細かく、色が鮮やかな印象を受ける。食べ物のシズルやテリ感を再現しているので、すぐに食べたい衝動にかられてしまう。建築は立体感にあふれ、臨場感が伝わってくる。
ちなみに、建造物の横には大抵自転車屋スクータと人物が描かれている。よく見ると、誰もとってもキュートで表情が豊かなので、私は特に気に入っている。
ところで、今回の講演テーマは「小吃(屋台料理)から見る戦後台湾食文化のアイデンティティ」。
台湾を旅された方のほとんどが、台湾の小吃に魅せられ、また行きたいと思うのだが、その小吃について存分に聞けるということで、とても楽しみに参加して着た。
会場は台湾好きな日本人で埋め尽くされ、魚夫さんが話す中国語を通訳しないうちから反応する人も多かった。
魚夫さんによれば、現在我々が認識している「台湾料理」とは、中国の各地の料理にオランダや日本時代のすべての要素がミックスされた、とても複雑で、多様性のある料理だとか。
例えば雲林斗六の「炊飯」。
ご飯の上に、 肉そぼろのほか、錦糸卵やグリンピース、かまぼこがのせられている。付け合わせは茶碗蒸し。錦糸卵、かまぼこ、茶碗蒸しは日本。グリンピースはオランダ。肉そぼろは台湾。台湾の歴史が凝縮されているワンセットということで紹介していた。
他にも、台湾でしか食べられないのが「眷村料理」。
終戦後、広い中国各地から台湾には約200万人もの中国人がやってきた。彼らが暮らすために作られたのが「眷村」だ。
四川、河北、広東、北京、湖南……それぞれの省で食べていた料理が台湾の眷村で融合され、美味しい眷村料理として定着したのだ。
何気なく食べている台湾の料理、紐解くと、深い歴史的な経緯や面白いエピソードがたくさんあることを学んだ2時間でした。
ちなみに魚夫さんは台南に移住して10年が経つ。来年は10年を経た台南生活を描く新作を出版される予定と教えてくれた。
楽しみがまた一つ増えた!
*明日10日は、「日本統治時代の台北城内建築と懐かしい味」をテーマとした講演が行われます。