今年の夏の台湾映画はヒット作が多いような気がします。
まず、7月に公開され、ロングランヒットしたのが、台湾のヤクザ社会を描いた「角頭GATAO」から始まり、同性愛を描いた「酔•生夢死」や私の大好きな張孝全(ジョセフ・チャン)が出演する「青田街一號」に「迷城」。そして巨匠•侯孝賢監督の8年ぶりの新作「聶影娘 」(黒衣の刺客•The Assassin)に、同じく巨匠•呉 宇森(ジョン•ウー)監督の「太平輪」(THE CROSSING)後編が続き、さらに青春映画「我的少女時代」が現在口コミで大ヒット中です。

見応えのあるものばかりが続くなか、まず自転車ロードレースを描いた「破風」(To The Fore)をご紹介したいと思います。
自転車ロードレースでは、チームのエースを優勝に導くために、ほかの選手たちはアシストとして働きます。アシストはペースメーカーとして走ったり、よいルートを先導したりするほか、とくに先頭に位置することにより、「風除け」の役割を果たします。この風除け選手のことを中国語で「破風手」と呼ぶそうです。
映画は、台湾の人気俳優•彭于晏(エディ・ポン)と中国の人気俳優•竇驍(ショーン・ドウ)が破風手、韓国の大人気ユニット・スーパージュニアのシウォンがエースとなり、一つのチームでロードレースに挑むことから始まります。
その後、各々別々のチームに別れ、それぞれの人生を歩むことになっていくのですが、自転車ロードレースにかける選手たちの意気込みと友情を描きながら、夢を追いかけることの難しさ、夢を諦めないことの大切さを感じる内容となっていて、見終わってとても爽やかな気持ちになれました。
監督は昨年大ヒットした「激戦 」を撮った香港のダンテ・ラム。
次から次へと繰り広げられるレース展開はものすごいスピードで、見ているわたしはいつの間にか手や肩に力が入り、息ができないくらいの緊張状態となっていました。
一方、台湾の高雄、花蓮、墾丁や北海岸といった台湾の多くの名所をバックに自転車が走る様子からは、台湾がいかに自然豊かで美しい風景を持つ国だということがわかり、うっとりしてしまいました。

ロケ地は台湾だけでなく、香港、韓国、イタリア、上海に加え、内モンゴルのトングリ砂漠でも行ったそうです。映画のために役者陣は過酷な肉体改造を行い、慣れない自転車を乗りこなすためにハードな練習を積み、ケガも経験し、半年にわたる撮影で、なんと10万キロ以上自転車で走行したという記事を読み、その成果が映画にしっかりと映し出されていたので、とても感動しました。

深く、美しい海に浮かぶ緑豊かな台湾全土を見渡すことのできる映画なので、日本でも是非公開して欲しいです。