今週末の6・7から公開する台湾映画「GF*BF」を見た。二回目だ。
 一回目は2年前台北、二回目は先週の東京で。

 二年前に観たとき、正直そんなによい映画だと思わなかった。主役はグイ•ルンメイ(桂輪美)、ジョゼフ•チャン(張孝全)、リディアン•ヴォーン(鳳小岳)の三人。どれも好きな役者さんで魅力的だったが、内容がいま一つ理解しにくく、そんなに印象に残らなかった作品だった。
あれから約2年。日本で公開されるにあたり、再び観ることになった。
今回は……。
「とっても深い良い作品」と感じた。

 この作品は主人公たちの27年間にわたる友情と愛情を描いたもの。これだけの時間軸があると、人だけでなく、社会情勢も大きく変わるが、特に始まりが1985年の戒厳令下の台湾から始まっているので、変化の振り幅は大きい。

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 1985年、美宝(メイバオ=グイ•ルンメイ)、忠良(チョンリャン=ジョゼフ•チャン)、心仁(シンレン=リディアン•ヴォーン)の三人は高雄にある同じ高校の同級生。美宝は忠良に、心仁は美宝に恋をする三角関係にあるが、表面上はいつも一緒の仲良し三人組。
 学校での髪型は女子は「西瓜頭」と呼ばれるおかっぱ、男子はスポーツ刈りと決められている。
 国民党の一党独裁の政治下で、みかけは自由だけれども、本当の自由はなかった。そのため、学生たちは「争取自由」(自由を求む)や「造反有理」(反乱には理由がある)をスローガンに、校内報を作っていたが、内容には先生がチェックを入れ、厳しく言論規制をしている。
 街中で人気があったのは「民主」「自由」「フォルモサ」といった地下書と呼ばれている読み物だ。
 3人は自由を求め、校内報作りの中心人物だった。
 卒業を前に、美宝は心仁の気持ちと優しさに打たれ、忠良に思いを残しつつも付き合うことを決心する。
 
 1987年、戒厳令解除。台湾に劇的な民主化の波が押し寄せる。
 大学生になった三人は、民主化運動に身を投じ、1990年3月、中正記念堂前で行われた最大の学生運動に参加していた。
 美宝と心仁は付き合い続けていたが、心仁に浮気相手がいることを知る。
 そして忠良にも、好きな「男の人」がいた。

 更に時が流れ、社会人となった3人は1997年を迎える。心仁は浮気相手の女性と結婚し、美宝との関係も続けていた。忠良は妻子ある男性との交際を続けている。3人がお互いにそれぞれ身動き取れない事情を抱える中、美宝は心仁の子供を身ごもってしまう。

 3人の友情、恋はどうなったのか……。

 2012年、すっかり自由が定着した台湾だが、台北のある中学で女子学生たちが短パンをはかせろという学生の抗議運動が起きた。
 その中心にいたのが、美宝の生んだ双子の姉妹だった。

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 まずこの映画を通して、80年代の戒厳令下の台湾において、学生と社会に流れていた空気がわかる。
 私も1981年まで台湾•台北で生活をしていたが、何不自由ない生活を送っていた。ただ、理由は分からなかったけれども、中学に上がれば、女の子はおかっぱ、男の子はスポーツ刈りが強制されることは知っていた。
 美宝の「西瓜頭」を見て、当時ロングヘアで三つ編みやポニーテールをするのが大好きだった私は、本当に中学に上がりたくないと思っていたことを思い出した。
 後に、学生は勉学に打ち込むのが本業であり、おしゃれにうつつを抜かさないよう、「西瓜頭」とスポーツ刈りが定められていたと聞いたが、いま考えれば、ひどい決まりだ。
 夜市で書物に託された人々の「自由」が売られていたことは初めて知った。
 やがて戒厳令が解け、時代は変化した。
 3人が参加したのは台湾で1990年3月16日から3月22日に行われた学生運動だった。中正記念堂広場に座り込みを行い、国民大会解散などを求めた「野百合学運」だ。
 ちょうど今年の4月、台北で学生たちが立法院を占拠した「ひまわり学運」や大規模な反原発運動を見てきたばかりだったので、シンクロする部分が多く驚いた。
 映画の中ではゲイ同士の結婚パーティーも登場する。台湾では同性婚はまだ認められていないが、家庭を持ち、子供も育てている人が増えてきているそうだ。
 権威主義から民主主義へ。
 社会の寛容度が確実に大きくなっていることを示している。

 民主化された台湾だが、いまでも学生や市民がそれぞれの理想を持っている。社会へ訴ったいかける情熱は、日本よりももっとストレートで強い。
 観る年齢、経験によって感じ方が変わることを痛感させられた一作だ。
 監督も私も40代。映画で描いた27年間は監督自身の歩んできた道のりであると同時に、台湾社会が歩んできた道でもある。
 
 食べ物がおいしいと人気のある台湾だけれども、台湾らしい食べ物は一切出てこない。その代わり、台湾社会が抱える問題や今の台湾につながるものがたくさん詰まっている。
 それは今の日本社会が抱える問題にも通じ、考えさせられた。
 特に3、40代の方にこの作品をおススメしたい。

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6・7(土)よりシネマート六本木、シネマート心斎橋ほか順次公開
公式サイト 「GF*BF」

同時にアンジェラベイビー(楊穎)マーク•チャオ(趙又廷)主演の香港•中国映画『メモリー~First Time(第一次)』も公開
福建省廈門の美しい町並みを背景に進んでいく切ないラブストーリー

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