今年最大のヒット作になるだろうと言われているのが映画「總舖師 (Zone Pro Site)メインシェフへの道」。
台湾映画は人気がないとすぐに上映が打ち切られてしまうという厳しい情況で、8月の公開から2ヶ月たったいまでもトップ10入りする大人気。

タイトルにもなっている「總舖師」とは日本語のサブタイトルにもなっているメインシェフのことですが、何のメインシェフなのかちょっと解説をしたいと思います。
台湾人はもとから大のもてなし好き。その昔、冠婚葬祭等のイベントがあるときは、廟の前の広場や家の前の道をそのまま区切り、青空の下でいくつもの円卓を並べ、親戚、知人のみならず、近隣の人までも招いて大宴会をやっていたのです。
これを「辦桌(バンズゥオ)」と言いますが、その辦桌での全ての料理を任される人が「總舖師」と呼ばれているのです。

台北で辦桌の風景を見かけることはほとんどできませんが、南部にいけばまだ辦桌文化が残っています。

映画のロケ地は台南。いまから約20年前、北、中、南部にそれぞれ有名な「總舖師」がいました。北から「憨人師」「鬼頭師」「蒼蠅師」と呼ばれ、人々は彼らを「人、鬼、神」と崇めていたのですが、辦桌文化の衰退とともに、後継者探しも難しく、消えかけている現代から物語は始まります。

南の總舖師である「蒼蠅師」は亡くなり、その妻(リン・メイシウ(林美秀))が引き継ぐのですが、味はさっぱり。一人娘キミ・シア(夏于喬)は女優になりたいと台北に行くけれども、恋人の借金を押し付けられ、実家に戻っています。莫大な借金を返すため、娘は全国料理大会に出ることを決意する。小さい頃から食べて来た父の作る一流の料理の味だけが頼りだけれども、肝心の料理の腕は全くの初診や。そこで料理ドクター(トニー・ヤン(楊祐寧))に出会い、頑張っていくというストーリー。
美味しそうな中華料理の数々が登場し、映画中頃にはお腹が空いてぐうぐう鳴りそうになりました。登場人物も個性豊かで、台湾の田舎の雰囲気やお節介なのに憎めない台湾人の陽気さ、人の良さもよく描かれていて、実に台湾らしい映画だなあと思います。
ただ、後半のメインテーマである料理大会の様子が長くて、ちょっと間延びしていたかな~と。

ウー・ニエンチェン(吳念真)も出演し、90年代に活躍した陳玉勳(チェン・ユーシュン)監督の16年ぶりの長編映画。
出演者のリン・メイシウ(林美秀)は今年度の金馬奨にノミネートされている女優。コメディからシリアスまでなんでもこなし、テレビ、映画と大活躍中。とってもチャーミングで個人的に大ファンです!
東京国際映画祭にも出品される注目の一作、是非見て下さい。

先月機会があり、台南に行って来た私ですが映画の中でトニー・ヤンが良く口ずさむ台湾語の歌「三八阿花吹喇叭 」が街角で生演奏されていて、数日ぐるぐると頭の中でリフレインして困りました(笑)。