日々の中で、恥ずかしい思いをすることは多々ある。
その中でも自らは防ぎようがなく、かなりの破壊力を持つのは、公衆の面前で、誰かに「○○に似ているね」と言われることではなかろうか。
そして、○○が美男美女や人気者であるほど、その恥ずかしさの度合いは増す。
リアクションにも困る。
喜べば、周囲は「見てみ、喜んでるで。ぜんぜん似てないのに恥ずかしいな。けけけ」
否定すれば、「見てみ、ムキになって否定してるで。わかってるっちゅうねん、恥ずかしいな。けけけ」
軽く流しても、「見てみ、あながち否定せえへんで。あれは自分でも似てると思ってるで、恥ずかしいな。けけけ」
と思うかもしれない。
自意識が過剰に反応し、恥ずかしさと困惑のあまり、その場から走り去りたくなるのは、私だけではないだろう。
先日、職場で上司に書類を持っていった時のこと。
10数人の同僚はそれぞれがパソコンに向かっている。
次の瞬間、その上司が私に発した声が、静寂を破った。
「あんた、高橋大輔に似てるなあ」
うおおお、そう来たか。
悶絶するぐらいに恥ずかしい。
高橋大輔? 残念ながら、整形手術をしてもかすりもしない顔だ。
その場にいた誰にも聞こえているはずなのに、誰も反応しない。
女性の同僚の眉間にしわがよっている。
この上司は何か私の仕事ぶりに気に入らない点があって、こんな非道な仕打ちをしているのか。
悪魔のような上司はさらに追い打ちをかける。
「うん、似てる似てる。よく言われるやろ?」
おおおお、いま思い出しても身震いがする。
その場に刀があったら、切腹したかもしれない。
「そ、そんなこと言ってたら、ファ、ファンの人に怒られますよ」
動転した私は消え入りそうな声で反論し、振り返ることなく逃げるようにその場を離れた。
この一件を奥さんに報告したら、腹を抱えて笑われた。
ちなみに、奥さんが今までに「似てる」と言われて一番恥ずかしかった相手は、中山美穂らしい。
ああ恥ずかしい。
「そういえば、きょう買い物していたら……」と奥さん。
店員さんが息子を見て、「こども店長に似てるねえ」と言ったらしい。
親の欲目で見ても、まったく別の顔である。
高橋大輔と中山美穂から生まれた加藤清史郎。
ああ、恥ずかしい恥ずかしい。