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MISIA - 約束の翼
フォッサマグナと日本列島
フォッサマグナは「大きな溝」
日本列島の真ん中には、大地をつくる地層を知ると見えてく
る「大きな溝」があります。
ドイツ人地質学者のナウマン博士がこの「大きな溝」を発見
し(図1)、フォッサマグナと名づけました。
フォッサマグナとは、ラテン語で「大きな溝」を意味します。
ナウマン博士のフォッサマグナの
東端がはっきりしないこと
から、現在は、図2左の範囲をフォッサマグナとしています
(範囲についてはいくつかの説があります)。
図1
図2
大地の裂け目
古い地層でできたU字溝のような溝の大部分は、かつての海
底にたまった新しい地層によって埋め立てられました。
これらが隆起した後、焼山や富士山を含む、南北方向の火山
列
ができました。
フォッサマグナは、日本列島がアジア大陸から離れる時にで
きた大地の裂け目と考えられています(図2右)。
糸魚川-静岡構造線
糸魚川-静岡構造線は、日本列島を地質学的な東北日本と西
南日本に分ける断層であり、フォッサマグナの西側の境界断
層でもあります(図3)。
また、この断層は、北アメリカプレートとユーラシアプレー
トの境界とも考えられていますが、両プレートの境界につい
ては、いくつかの説があります。
糸魚川-静岡構造線の断層は、山梨県早川町、山梨県北杜市
などで見学することができますが、フォッサマグナパーク
(図4)では遊歩道や解説板が整備され、もっとも気軽に見
学できます。
図3
図4
大地震発生が最も心配されている糸魚川―静岡構造線、1260年も息をひそめる活断層
地震調査研究推進本部のHPより
地震本部による主要活断層帯の長期評価
1995年阪神・淡路大震災を受けて、地震防災対策特別措置
法が制定され、政府に地震調査研究推進本部(地震本部)が
設置されました。
地震本部では、主要な活断層で発生する地震や海溝型地震を
対象に、地震の規模や一定期間内に地震が発生する確率を、
「地震発生可能性の長期評価」として公表しています。
現在、主要断層帯として114断層が選定されており、毎年1
月1日に、地震規模、地震発生確率、地震後経過率、平均活
動間隔、最新活動時期などが一覧して示されます。
2022年1月1日時点で、今後30年間の地震発生確率が15%
以上と評価されたのは、糸魚川―静岡構造線断層帯と日奈久
断層です。
熊本県の日奈久断層は、2016年熊本地震の前震で北東部が
活動しましたが、南西部が割れ残っているため八代海区間で
高い確率になっています。
地震発生確率が最も高い糸魚川―静岡構造線
主要断層で最も地震発生確率が高い糸魚川―静岡構造線断層
帯は、4つの区間に分けて長期評価が行われています。
今後30年間の地震発生確率は、北部区間ではM7.7の地震が
0.009~16%、中北部区間ではM7.6の地震が14~30%、
中南部区間ではM7.4の地震が0.9~8%、南部区間ではM7.6
の地震がほぼ0~0.1%で発生すると評価されています。
これらの区間が同時に活動すればM8クラスの地震になる可
能性もあります。
確率が最も高い中北部区間は、平均活動間隔が600~800年
程度なのに、最新活動時期から、約800~1200年程度経過
しており、地震発生の切迫度が高いと考えられています。
日本を東西に分かつ糸魚川―静岡構造線
糸魚川静岡構造線は、新潟県糸魚川市の親不知付近から諏訪
湖を通って、安倍川付近に至る大断層線で、日本列島を南北
に縦断する大地溝帯「フォッサマグナ」の西端に位置します。
フォッサマグナは、ドイツの地質学者のナウマン博士が名付
けたもので、ラテン語で大地溝を意味します。
この場所は、東北日本と西南日本を分断する境だと考えられ
ており、断層や褶曲構造が沢山発達していて、活動度の高い
活断層が多くあります。
糸魚川-静岡構造線を境に、地質や生態系も大きく異なって
いて、構造線の西側には高山が連なる日本アルプスがあり、
東側の地溝帯には、諏訪湖などの湖があります。
甲府から静岡まで身延線に乗ると、構造線が作った大規模な
地形を見ることができます。
1260年前の6月に起きた大地震
北部と中北部の断層帯が活動した最近の地震の候補としては、
762年の地震が挙げられています。
この地震については、続日本紀に、「天平寶字六年五月己卯
朔、丁亥、美濃、飛彈、信濃等國地震、賜被損者穀 家二斛」
と記されています。
西暦では、1260年前の6月9日に当たります。
被害が信濃、美濃、飛騨と広域に及ぶため、相当に大きな地
震だったようです。
ちなみに、糸魚川―静岡構造線断層帯中部の松本市に位置す
る牛伏寺断層は、活動間隔が平均約千年で、最新活動時期が
700~1500年前、平均変位速度が千年あたり8m前後と考
えられていますので、762年の地震の規模はM8程度だった
可能性があります。
地震、火山噴火、感染症に見舞われて花開いた天平文化
762年の地震の前には、大きな地震が続発し、感染症も流行
しました。
734年5月18日には、生駒断層の活動が疑われる畿内七道を
揺るがす地震が起きました。
直後の735年から737年には、天然痘と思われる疫病が流行
しました。
この疫病で、藤原不比等の息子の4人兄弟(武智麻呂、房前
宇合、麻呂)が病死しました。
地震や疫病、飢饉に悩んだ聖武天皇は、国分寺や国分尼寺を
各地に作らせ、総本山として東大寺と法華寺を建てました。
さらに、745年6月5日に天平地震が発生しました。
この地震は養老断層が活動したと考えられています。
養老断層は、1586年天正地震でも活動したようですから、
養老―桑名―四日市断層の今後30年間の地震発生確率は、ほ
ぼ0%~0.7%と低めに見積もられています。
天平文化の成立の裏には、感染症と大地震があったようです。
心配される南海トラフ地震発生前後の活動
南海トラフ地震の発生前後は東京以西の内陸直下での地震活
動が活発化すると言われています。
平成の30年間には、1995年兵庫県南部地震以降、2000年
鳥取県西部地震、04年新潟県中越地震、05年福岡県西方沖
地震、07年能登半島地震、新潟県中越沖地震、11年長野県
北部の地震、静岡県東部の地震、14年長野県北部の地震
(長野県神代断層地震)、16年熊本地震、鳥取県中部の地
震、18年島根県西部の地震、大阪府北部の地震など、多く
の地震が発生しています。
ちなみに、神代断層は、糸魚川―静岡構造線断層帯の最北部
に位置します。
また、1854年安政東海・南海地震の翌年の1855年3月18日
には飛騨白河周辺でM7クラスの地震が発生しています。
今後30年間の地震発生確率が70~80%と言われる南海トラ
フ地震の発生前後に糸魚川―静岡構造線断層帯で大規模な地
震が発生することもありえます。
直下の地震ですから震度7の強い揺れが襲い、山間部故の土
砂災害や河道閉塞に伴う洪水災害も懸念されます。注意を怠
らないようにしたいと思います。
May be the best year of my family.