ミイラは薬になるのか? | 人差し指のブログ

人差し指のブログ

パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

「 お言葉ですが・・・・❺ キライなことば勢揃い 」

高島俊男 (たかしま・としお 1937~)

株式会社文藝春秋 2001年2月発行・より

 

 

 

 

 ミイラという言葉は、戦国時代に宣教師が もたらした ポルトガル語である。

 

 

その もとを たどれば、アラビア語の mor (あるいはmurr) にせよ、これは保存遺体を作るのに使う薬剤の名称である。

 

 

アラビアやアフリカ方面に生えるカンラン科の植物の樹脂から製するものであるよし (漢語では没薬(もつやく)と言う。「没」は mor の音訳)。

 

 

 

 ところがそれを日本人は、その薬を用いた保存死体の意味に受け取っちゃった。

 

 

ことばと、それが指すものとが食い違いがったわけである。

ために話がややこしくなった。

 

 

 百科事典にこうある。

       < 南蛮人が日本に渡来するようになると、十六世紀の終り

       ころからエジプトのミイラが日本に輸入され、薬用として歓迎

       された。

       十七世紀の後期(延宝、天和、元禄ころ)にはミイラ薬効説は

       爆発的で、万病に効くとして、上は大名から下は庶民に至るま

       で使わぬ者はないくらいであった。>

 

 

wikipediaでもこうなっています~人差し指

16〜17世紀のヨーロッパにおいて、ミイラは一般的な薬として広く使用されていた。そのため、ミイラを取ることを生業とする者が増えた。なお、ミイラを取るためには墳墓の中に入ったり、砂漠を越えたりする必要があることから危険がつきまとい、ミイラを探す人間が行き倒れることもあった。彼らの死体がどれほどの確率で自然乾燥によりミイラ化したかは不明であるものの、このことを指して「ミイラ取りがミイラになる」という言葉が生まれたなどとする説がある。

 

 

 

うっかりこれを読むと、まるで南蛮人がエジプトの王様のミイラを盗み出して日本へ かつぎこんだ みたいだが、そうじゃない。

カンラン樹脂の薬をもたらしたのだ。

 

 

 ところが話がゴッチャになっているものだから、日本人はそれを、大昔の異人の死体から取り出した薬と思って信仰したのである。

 

 

日置昌一 『 話の大辞典 』 にひく元禄期の笑話本に、ある人が薬屋に

ちかごろのミイラは ニセモノ が多いそうなと言えば薬屋腹を立て、本物の証拠に当店のは 人がたち のまま売って おりますと答えた、とある。

 

 

 なお支那人はそんな変な取り違えはしてない。

 

明代の医薬書 『 本草綱目(ほんぞうこうもく) 』 (日本の織田信長のころに出た) に没薬の項があるが、橄欖(かんらん)に似た木の樹脂から作ると製法をしるし、薬効を説いてある。

 

しごく冷静である。  だいぶ あちらのほうが科学的だ。

 

 

 以上ずっとカタカナで 「ミイラ」 と書いてきたが、従前は漢字で 「木乃伊」 と書くほうが普通であった。

 

(略)

 

「木乃伊」 は漢語である。はじめて文献に見えるのは元末明初の人陶宗儀(とうそうぎ)の著書 『輟耕録(てつこうろく)』、日本の南北朝のころの本である。

 

 

 

 

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12196050656.html

 

 

 

 

 

 

                          興福寺付近 12月2日