アメリカ軍は皇居に入らなかった | 人差し指のブログ

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「 山本七平全対話  日本学入門 山本七平他 」

山本七平 (やまもと しちへい 1921~1991)

株式会社 学習研究社 1984年11月発行・より

 

 

「天皇陛下の経済学」         ベン・アミ・シロニー(1937~ イスラエル歴史学者ヘブライ大学名誉教授イスラエル日本学会名誉会長

                             1982.11 「諸君」

 

 

 

 

シロニー 西洋とか、中国の王様の周りには、王様を守るために、近衛軍

       といいますか、そういう軍隊がたくさんいましたね。

 

 

      日本の天皇の住んでいるところには、そういう近衛軍はあまり

      いなかったでしょう。

 

 

      だから、誰でも暴力的に入ろうと思えば入ることができた。

      でも、入らなかったんですね。

 

 

 山本 もっとも泥棒が入ったことはだいぶあるんですよ。

 

 

     平安時代にも泥棒が天皇の近くまできて何かを盗んだ。

 

 

     まあ、最近、バッキンガムでもそんなことがあったんだけれど、

     そういう事件はあるんですね。

 

 

     しかしだからといっていつも軍隊で警備をするようなことはしない。

 

 

      大体、お城の中に天皇は住んでいないものなんですね。

 

 

      普通の塀で囲まれているところに住むのが本来なんです。

 

 

      だから誰でも入っていけた。

      でも、誰も入っていかないんですな。

 

 

シロニー そう。 アメリカが日本を占領したときも、アメリカ軍は皇居に

       入らなかったですね。

 

 

       これは日本の大変大事なものだから、そこに入ることはできな

       いという考え方があった。

 

 

       皇居の中にいろいろな資料がいまでも残っているはずですね。

 

 

      たとえば東京裁判のためにも役に立つ資料があっただろうと思

      います。

 

 

      天皇自身についてとか、いろいろな政治家についてとか、天皇の

      日記などがもしあってアメリカがそれを押収したら、アメリカ軍は

      大変助かったかもしれないのにです。

 

 

 山本  そうですねえ。天皇の日記を、そのときアメリカ押収していて、

      三十年以上たったら公表するなんていったら、いま頃はもう大変

      だな。

 

 

      それを出版したらもう まちがいなくベストセラーだ。

 

 

シロニー そうですね。でも、入らなかった。

 

 

      天皇制が悪い、これが戦争を起こした一つの原因じゃないかと

      アメリカ軍が思っていたとしたら、当然入ったと思うんですがね。

 

 

 山本  駐日大使だったグルーなんていう人が、絶対入っちゃいけないと

      いって、ものすごく反対したんでしょうね。

 

 

シロニー ええ。それに日本を占領統治するために天皇が非常に役立ち

      ました。

 

 

      天皇がいなければ、直接の占領が必要だった。

 

 

      アメリカには、日本語を話し、日本のことがわかる人が少なかっ

      たから、もしそうするとしたら大変難しかった。

 

 

      もしアメリカの直接の占領があれば日本人はゲリラになるような

      可能性が非常にありました。

 

 

      アメリカはそれが大変怖かったんです。

 

 

      ですから、天皇をそのまま、残して間接占領をするのがいちばん

      いいんじゃないかという考え方でした。

 

 

      これはドイツと全然違います。  ドイツは直接の占領だった。

 

 

      アメリカ人はドイツのことをよく知っていましたし、ドイツ語もでき

      たから、問題はなかったわけです。

 

 

 

 

                           5月21日の奈良公園