外国人が政権の中枢になるロシア  | 人差し指のブログ

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「 山本七平全対話  日本学入門    山本七平他 」

山本七平 (やまもと しちへい 1921~1991)

株式会社 学習研究社 1984年11月発行・より

 

 

~苦手なロシア人とつき合う法~ 内村剛介(うちむら ごうすけ1920~2009

                        ~1981.8 「活性」 53号~

 

 

 

 

山本 ところで、アメリカですと、キッシンジャーのように、れっきとしたドイ

    ツ系ユダヤ人の一世が、いきなり国務大臣になるんですが、帝政

    ロシアの時代も、フランス人などが、大抜擢されたんじゃないです

    か。

 

 

内村 ピートル大帝の子分なんか、みんなそうですよ。

 

 

    異民族をいきなり重用することは、アメリカもロシアも共に若い国、

    形がまだ定まっていないところで起こる現象なんですね。

 

 

     しかし、ロシアがアメリカと違うのは、入って来た人間がロシア人

    より、もっとロシア人的なスーパー・ロシア人になってしまうこと。

 

 

    キッシンジャーがどんなに偉くても、大統領にはなれないでしょう。

 

 

    ところがロシアの場合は、外国人が本来のロシア人を二乗、三乗

    したみたいなロシア人になる。

 

 

    それだけ凝集力があるという感じがするんですね。

 

 

山本 何かわけがあるんですか。

 

 

内村 いちばん端的な例は、ロシアで最初にできた国語辞典。

 

 

    これはダーリが編纂した四巻辞典で、いまもって個人編集の辞典で

    これよりいいものはない。

 

 

    日本でいうならば、さしあたり大槻文彦の 『大言海』 。

 

 

言海(げんかい)は、国語学者大槻文彦明治期に編纂した国語辞典日本初の近代的国語辞典とされる。

大言海   ~     言海の改訂増補版。晩年の大槻文彦自身が、改訂作業に務めたが、事半ばにして1928年昭和3年)に没したため、兄の大槻如電らが引き継いだ。如電没後の1932年(昭和7年)より冨山房で刊行された(1937年(昭和12年)に全4巻・索引で完結)。    ~wikipedia

 

 

    そのダーリは何者なのか。

    父親はロシア宮廷の下級医者、オランダから来ている。

 

 

    母親はフランス系のベルギー人で、ダーリの中にはロシア人の血が

    一滴も流れていない。

 

 

    そういう人間がロシアで成人すると、もうロシア最初の辞典をつくっ

    たりする。

 

 

    外国人が国語辞典を最初につくるなんてことは他の国ではないでし

    ょう。

 

 

    それくらい、ロシアというところは、ロシアに入った者を、ロシア人に

    勝るスーパー・ロシア人にしてしまうということです。

 

 

山本 エカテリーナ二世がそうですね。

    ドイツの田舎貴族の小娘が、ロシアの専制君主になっちゃった。

    (笑)。

 

 

内村 最近では、グルジア人のスターリン。

    あれぐらい徹底したロシア人はいない。

 

 

    ロシアの血が一滴も入っていないスーパー・ロシア人の典型です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                           5月4日の猿沢池付近