詩人がデブだったら嫌だ  | 人差し指のブログ

人差し指のブログ

パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

「 向田邦子全対談集 」

向田邦子 (むこうだ くにこ 脚本家 昭和4年~昭和56年) 

株式会社世界文化社 昭和57年8月発行・より

 

 

 

~谷川俊太郎( 詩人・昭和6年~ )『家庭画報』 昭和55年10月号~

 

 

 

 

向田 最初に申し上げたように、詩人に対して、たいへん遅れてるもので

    すから、詩人がデブというのはおかしいとか・・・・・。

 

 

谷川 アハハハ。

 

 

向田 大食いは困るとか、家庭円満というのも不愉快だとか。

 

 

谷川 だいたい僕が、「詩を書いて原稿料をもらっています」 なんて言う

    と、不愉快だとおっしゃるかたがありますよ。

 

 

向田 それはもちろん思わないんですけどね。

 

 

谷川 それはご同業なんですね。

 

 

向田 そうなんですよ(笑)。

    それから、安楽に死んではいけないとかね。

 

 

    陋巷(ろうこう)に窮死(きゅうし)して、血を吐いて、誰にも看取(みと)られず

    に死んでもらわないと困るとか・・・。

 

 

谷川 大金持ちになって死ぬっていうのはだめなんですね。

 

 

向田 もちろん、困ります (笑)。

    別荘を持っている、車を持っているというのも、とっても困るんです。

 

 

谷川 ああ、じゃ、ほとんど落第しているなあ。

 

 

    一つ二つ合格点もある様子だけれども、それは単なる趣味の問題じ

    ゃないんですか。(笑)

 

 

向田 そうかもしれません。  からだが丈夫というのも困るんですけど。

 

 

谷川 僕、からだが丈夫なんです。

 

 

向田 ああ、困る (笑)。  全部裏切られたわ。  

    咳ぐらいしていただきたいとか・・・。(笑)

 

 

谷川 なにか大正時代という感じがしますね。

 

 

向田 そうなんです。北原白秋とか萩原朔太郎とか、石川啄木とか、私が

    子どものときに詩人だと思っていた何人かのエッセンスみたいなの

    があるんですね。

 

 

     貧しくなくてはいけない。洋服はボロボロでなきゃ困るとか。

    どこか破れていてほしいとかね。靴下なんかが。

 

 

谷川 でも、相当大事な点ではあるんですよ、今世紀の初め頃、イギリス

    でも詩人が銀行員みたいになってしまったと言われた時代があるん

    ですね。

 

 

                                      

 

 

2017年11月18日に~「嫌われた詩人」の「美しい詩」~と題して中原中也のことを紹介しました。コチラです。 ↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12328009934.html?frm=theme

 

 

 

 

 

 

鹿が草を全部食べてしまい土が浸食されて根が剥き出しになっています。

                           2月25日の東大寺境内

                                東大寺の南大門