「 税金を払う人使う人 加藤寛・中村うさぎの激辛問答 」
加藤寛 (かとう ひろし 1926~2013 経済学者 )
中村うさぎ (なかむら うさぎ 1958~ コピーライター)
日経BP社 2001年7月発行・より
[ 加藤寛 ] そこでね、私は税金の多い少ないということは、
「国民負担率」 という物差しで考えるのがいいんじゃないか
と思うんですよ。
つまり、所得税とか消費税とか固定資産税とか、税の種類は考慮せず、
健康保険や年金など、社会福祉の負担まで全部含めて国民総所得の何%かということにすればいい。
この国民負担率を50%以内に収めれば、先進国の水準から見ても重税というほどのものではないだろうなと私は思うんです。
たとえていえば、スウェーデンなんかは、高福祉国家といわれているけど、国民負担率が50%を超えている。
でもやっぱり、最近は経済成長率がダウンしてしまっているようです。
50%以上になると、国民の消費にブレーキがかかり、よろしくない。
そこで、日本の国民負担率なんですが、財務省の発表によれば、2001年度に36・9%。
財政赤字を加味した潜在的な国民負担率は45・3%。
そう高いともいえないでしょう。
これから新しい税制をつくっていくときには、この水準を超えないように調整していくようにすれば、論理的にいって消費に影響はないということになるんです。
これで失敗しちゃったのが、消費税引き上げのときの話なんです。
97年度に3%から5%に引き上げた。
経済学者のなかに、これにより消費がダウンしちゃったという人もいるけどウソなんです。
引き上げになったのは97年の4月です。
その直前に駆け込み需要があり、3月がど~んと伸びているから、4月、5月は、ダウンした。
これはまあ、予測されていたことでした。
そのあと、6,7,8,9月と、順調に消費は伸びていったんです。
これをぶちこわしにしちゃったのが10月。
社会保険料が上がってしまって、以来消費は低迷するようになってしまった。
当時私が会長を務めていた政府税調では、消費税を引き上げても、国民負担率が上がってはいけないので、各省庁が管轄する諸税を引き上げないように、と、お願いしたんです。
ところが厚生省がやっちゃった。
国民負担率が、これによりどんと上がることになってしまい、一気に景気は急降下です。
このときは、私たちから厚生省に抗議して、すみませんといわれたんですけど、すみませんじゃあないですよね。
日本の税制を考える上で一つの大きな問題がここにあるのではないでしょうか?
財務省は財務省、厚生省は厚生省とてんでんばらばらに税のコンセプトや徴収方法、税率について決めている。
税体系の全体で国民にとってどの程度の負担とメリットがあるかという考え方ができないんです。
これでは当然いびつなものになっていきますよ。
4月14日の興福寺、白い建物の一階が最近スターバックスになりました、左は猿沢池。