論理を信じないイギリス人  | 人差し指のブログ

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「 日本人の矜持 九人との対話 」

藤原正彦 (ふじわら まさひこ 1943~)

株式会社新潮社 2007年7月発行・より

 

 

~ 論理を盲信しないイギリス人に学べること ・ 中西輝政 ~

 

 

 

 

藤原 私はイギリスに行ったとき、頭が混乱しました。

 

 

    先にアメリカの大学で三年教えたことで、

    「論理的によいと思ったら改革はどんどんすべきである」 

    といったアメリカの価値観に染まっていたんです。

 

 

    ところがイギリスでは 「改革に熱を上げるのは愚かだ。改革なんて

    しても多くは改悪になるだけだ」 と冷めている。

 

 

    そして伝統を非常に重視する。

 

 

    口角泡を飛ばして論理を主張したりすると、

    「やれやれ」 という感じで一同が白けてしまう。

 

 

     この点でイギリスに行って、本当によかったと思います。

 

 

    論理のつまらなさと伝統の重要性を肌で感じることができました。

 

 

中西 イギリスの哲学者の言葉に、 「三段論法は地獄への道」 

    というものがあります。

 

 

    彼らは形式的な論理にはこだわらないのです。

 

 

    人種や社会の構造は日本と正反対ですが、論理を盲信しないという

    点ではイギリスには学ぶことが多く、アメリカやドイツの幼稚な形式

    論理の影響を防ぐうえで、きわめて有用だと思うのです。

 

 

藤原 たしかにイギリスに行くと、アメリカが論理だけの国であるということ

    を感じます。

 

 

    イギリスではフランス人の批評に対しても、

    「あいつらは論理をくねくねと哲学的にいうだけだ」 と軽蔑していま

    す。

 

 

    ドイツにたいしては、

    「あいつらは原理原則をいうばかりで、どうしようもなく頭の固い

    やつらだ」 と見ている。

 

 

    イギリス人は、もっと現実や史実に即して行動する。

 

 

     論理というのは 「AならばB、BならばC」 と発展させていくもので

    す。

    Zを結論とすると、Aが出発点になる。

 

 

    ところが出発点Aはつねに仮説ですから、これをどうするかで結論

    はいくらでも変るのです。

 

 

    イギリス人はこのことを本能的に知っていて、だから 

    「論理的な正しさなんて、どうでもいい。それよりも現実を直視しよ

    う」 と考えるのだと思います。

 

             初出 『Voice』  2006年6月号 (PHP研究所)

 

 

 

 

 

奈良公園に可愛い子鹿がいたので写真を何枚も紹介します。16日撮影