本国では知られていない『ファーブル昆虫記』  | 人差し指のブログ

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本を読んで面白かったところを紹介します

「 本と虫は家の邪魔 奥本大三郎対談集 」

奥本大三郎 (おくもと だいざぶろう 1944年~)

青土社 2018年11月発行・より

 

 

~ トンボ採りのノウハウを今のガキに伝えたい・阿川佐和子 ~

 

 

 

阿川 奥本さんたちの会の元になった アンリ・ファーブルさんがお書きに

    なった 『ファーブル昆虫記』 は、日本では少年時代に読んでない

    子はいないぐらいのロングセラーですけど、本国のフランスの子ども

    たちは?

 

 

奥本 誰も知らない。

 

 

阿川 エエーッ!?

 

 

奥本 というと語弊があるけど、知ってるのは南仏のインテリの大人、

    少数のフランス人だけ。

 

 

    今は向こうでもファーブルがかなり再評価されてますが、それには

    日本の影響もあるんですよ。

 

 

阿川 なんで!?

 

 

奥本 だって、ファーブルの曾孫(ひまご)だって、日本に来るまで自分の

    曾祖父(ひいじい)さんが有名な昆虫学者だって知らなかったんですか

    ら。

 

 

阿川 知らなかったの!?

 

 

奥本 ヤン・ファーブルっていう絵描き。

 

 

    ビッグのボールペンでシーツにグシャグシャっとラクガキするので

    評判になった人。

 

 

    来日したときに曾祖父ちゃんのことを知って。

    それで、虫のモチーフを描くようになったそうです。

 

                                               「週刊文春」 2004年9月16日号 

 

 

                                      

 

 

   「 本と虫は家の邪魔 奥本大三郎対談集 」

 

 

~ ”感覚でとらえる”ことの大切さ ・ 養老孟司 ~

 

 

 

 

養老 『昆虫記』 の日本での翻訳は、これまで何種類出ているんですか。

 

    (略)

 

奥本 (略) ですから完訳だけで三種類あるんです。

 

    (略)

 

養老 世界ではどうなんですか。

 

 

奥本 イタリア語訳とポーランド語訳がありますけど、どれも抄訳ですね。

 

 

養老 英語は?

 

 

奥本 英語はもちろんありますけど、これも抄訳ですね。

 

 

養老 そうすると、完訳があるのは日本だけで、しかもこれまでに三種類

    あって、奥本さんのが四つ目になるわけですね。

 

 

     これは日本人のファーブル好きの証だけれども、ファーブルは

     フランス本国ではそれほど読まれていないわけでしょ。

 

 

     本国で必ずしも流行らないで日本で流行る人というのは、

     ファーブルとゲーテですね。

 

 

奥本 ゲーテもドイツ本国ではそれほど人気がないんですか。

 

 

養老 有名な割には あまり読まれていない。

 

 

    ドイツの新聞に、「ゲーテは日本人か」 という記事が出たことがあっ

    たほど、日本人のゲーテ好きは不思議に見えるらしい。

 

 

    ゲーテも解剖とか自然が好きだった。

    そういうのがやはり日本の文化と合うんですね。

 

 

     ファーブルのような観察というか、感覚で世界をとらえるというのは

    ヨーロッパでは少なかった。

 

 

    一方、日本人はそれが得意というか、そういう自然のとらえ方は

    当たり前だから、ゲーテやファーブルに親近感をもつわけですよ。

 

                          「青春と読書」 2005年12月号 

 

 

                                      

 

 

辞書の世界でも似たようなことがあります。2019年1月1日に 『西洋の辞書と「日本人の知識欲」』 と題して渡部昇一の発言を紹介しました。↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12420297311.html

 

 

                                 2月6日の春日大社

                              東大寺前の交差点