「一の文明」と「二の文明」  | 人差し指のブログ

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「 山本七平全対話 8 明日を読む 山本七平他 」

山本七平 (やまもと しちへい 1921~1991)

株式会社学習研究社 1984年12月発行・より

 

 

~ インド人が最後に生き残る民族 森本哲郎 (1925~2014) ~

 

 

 

山本 結局インドというのが多の世界とすると、セム族というのは徹底的に

    一の世界なんです。

 

    これが大変不思議ですよね。

    なんでも でないといけないんですから。

 

 

森本 ええ。

 

 

山本 なかでもイスラム教がもっともはっきりしているでしょうけれど、

    一神、一予言、一聖典ですよね。

 

 

    歴史の進む方向も一方向で、回帰なんて絶対受け付けないんです

    わ。

 

 

森本 ぼくは、地球上の文明を次のように分けているんです。

 

    一の文明、これは一神教の地域。

 

 

    ついで、二の文明というのがあって、これは中国だと思います。

 

 

    中国人の考えというのは、必ず二ですよ。それは、易にあります。

 

 

山本 ああ、陰陽ね・・・・・。

 

 

森本 そうです。 陰陽の考え方です。

 

 

    日本人は、子供を教育するのに、人間には表裏があってはいけな

    いと教えますけど、中国人は逆に人間には表裏がなければいけな

    いと教える。

 

 

    ということは、私的なものと公的なものを分けよ、ということなんでし

    ょうね。

 

 

    そのルールというのが、すなわち礼ですよ。

    儒教は、そのためのルール集みたいなもんですね。

 

 

山本 はい。

 

 

森本 たとえば、中国の故事に”塞翁が馬”というのがありますけど、

    中国人は幸福の裏にちゃんと不幸をみている。

 

 

    また、不幸のときには、必ず幸福をみるというふうに、いつも二元的

    ですね。

 

 

    大同と小異にしても、そうでしょう。ですから毛沢東のいう弁証法

    は、もともと中国本来の弁証法といっていいんじゃないですか。

 

 

    ぼくは、最近知ったのですけれど、中国語には反訓というのがある

    んです。

 

 

    たとえば、中国語の”逆”という字は、文字どおり’逆らう’という意味

    ですね。

    ところが、それと並んで’迎える’という意味もあるんです。

 

 

    ”帰”という字にも、’帰る’ と、 ’行く’という反対の意味を併せ持っ

    ている。

 

 

    このように、同じひとつの字に、正反対の意味が含まれているという

    ことは、やはり二元的思考の現れだと思うんです。

 

 

    こういう例は、世界にないですよ。

 

 

山本 ないでしょう。この陰陽という発想を駒田信二先生も日本人は理解

    していないといっておられました。

                          『週間ポスト』 1975・10・1

 

 

                                        

 

 

「山本七平全対話 6 根回しの思想 山本七平他 」

~  名伯楽の条件    駒田信二(こまだしんじ1914~1994)  ~

 

 

 

駒田 中国人は契約しなくていいんです。

    しかし、その場合ちょっと戸惑うことは、契約したとして次の段階で

    契約違反するということです。

 

 

山本 と、いいますと・・・・・。

 

 

駒田 契約を守る中には守らないという反対概念が内包されてる。

    だから、都合によっては契約は破られる。

 

 

    政治家ももう少し勉強すればわかると思うんです。

 

 

    いま、こういう反対の方向をやってるけど、本当はそこに内包されて

    いる反対概念をやってるんだ、と。

 

             駒田信二著 『遠景と近景』 1983・6 勁草書房

 

 

                                       

 

 

2018年2月28日に 「中国文化は左右対称」 と題して陳舜臣の文章を紹介しました。コチラです。↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12324377033.html

 

 

 

 

                         12月25日 奈良公園にて撮影