岡本太郎の母・岡本かの子 | 人差し指のブログ

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パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

 

 

  作家の平林たい子が岡本太郎の母親で作家の岡本かの子につい

  て話をしています。

 

 

 

「 徳川夢声の問答有用 2 」

徳川夢声 (とくがわ むせい 1894~1971)

朝日新聞社 昭和59年10月発行・より

 

 

    ~ 職業転々、反権威を貫く   平林たい子(1905~1972) ~

 

 

 

平林   岡本かの子さんの 「鶴は病みき」 という小説に、岡本さんらし

      い女性が出てくるんですけど、芥川(龍之介)さんと着物のことで

      いい合って、芥川より自分のほうがわかるっていうようなことが書

      いてありますね。

 

 

      死んだ人のことをいうのは悪いんですけどね、わたしの先生の

      某氏がパリでばったり岡本さんにお目にかかったんですって。

 

      化けものがきたかと思ったっていうんですよ。

      まったく派手ですからね。

 

 

      とても大きな頸飾り、毛の飾りのついた外套・・・・。

 

 

夢声   まず双璧は岡本かの子と三浦環でしょう、これは大変なもんです

      よ、おふた方とも。

 

 

平林   しかしね、女の立場はこうもいえるんです。

 

 

      三浦さんが真ッ赤なドレスを着てステージに出ると、見物席から

      失笑が起る。

 

      そのうちに歌い出す。まりをつく手つきなんか始めると、みんなが

      つり込まれちゃって物凄い拍手なの。

 

 

      だからやっぱりあの人の人柄ってものがわかって服装を見ると、

      べつな見かたが出るんですね。

 

 

      岡本さんもそうじゃないかと思うんです。

 

 

夢声   結局、ガラにない恰好をしてたわけじゃないんですね。

 

 

      いつか歌舞伎座で岡本さんを見かけた時はね、大江山の酒顚

      童子みたいな顔をして、大きな狐の襟巻きをしてる。

 

 

      狐のほうがよっぽど上品で貴族的な顔をしたましたがね。(笑)

      【太郎さん、怒る勿れ】

 

 

平林   あの人のいいところだと思うのはね、自分を美人だと思っていた

      ことです。

 

      「母子叙情」 という小説の中に、自分が非常に美人のように書

      いてあるんですね。

 

 

夢声   うん、一種の美人かも知れないな。

      ありふれた美人じゃないけれども。

 

 

平林   非常に独創的な美人ですね。(笑)

 

 

夢声   それはもう絶対ですね。どこへいったって岡本かの子ですよ。

 

      銀座だろうが、パリだろうが、アフリカだろうが目立ちますね、

      あの人は。

                             (昭26.7.21日 対談)

 

 

 

 

 塀の向こうが奈良の興福寺です、急な坂道にあるので塀がちょっと斜めになっています。 4月7日撮影