『 歪曲報道 巨大メディアの 「騙しの手口」 』
高山正之 (たかやま まさゆき 1942~)
PHP研究所 2006年10月発行・より
たとえば、衆院解散で大騒ぎになっていたさなかの2005年8月13日付各紙に載った 「妊婦のマグロの食べすぎ注意」 の記事だ。
厚労省の薬事・食品部会が発表したもので、クロマグロやメバチマグロなどに胎児に有害な影響を及ぼす恐れのあるメチル水銀が蓄積している。
だから妊婦が大量に摂ることは避けたいという内容だ。
みんなはこれに似た情報をどこかで聞いたことがあるはずだ。
そう。同じ審議会が2年前にまったく同じ理由で 「キンメダイが危ない」 とやって、伊豆・下田などで甚大な風評被害が出た。
これが問題なのは危険と目されるメチル水銀はどの魚も微量に持つ。
そしてキンメダイたちが棲む海には誰でも知っている食物連鎖があることだ。
小さい魚を大きい魚が食べていくあれだ。
結果、より大きい魚により多くの水銀が蓄積されるから食物連鎖のほとんど頂上にいる大型マグロには当然、キンメダイの何十倍にもなる高い濃度の有機水銀が含まれる。
ところが前回の厚労省の発表は小さなキンメダイだけを標的にし、マグロには言及もされなかった。
理由は簡単だ。 厚労省の役人ときたら傘下の社保庁が象徴するようにカネに汚い。
使い込みから恐喝から何でもやる。
小役人がマグロの汚染話を当のマグロ関連業界に持っていって 「発表しようかな」 と仄めかす。
あるいは 「話を抑えてやったぜ」 とあとから恩に着せるか。
いずれにせよ前回はそれほど不自然なマグロ外しが行われた。
今回、そのマグロの名が出たのは国際機関の基準見直しからだが、
よその国がいわない限り、この厚労省はカネを脅し取れるからと国民を騙し続けるつもりだったわけだ。
こんなふざけた役所の発表を批判1つなしでそのまま鵜呑みにし、またどす黒い噂も放置したままでは、「手抜き記事」 といわれてもしようがないだろう。
ちなみにいえば役所もメディアには黙らせる手を打っている。
すなわち役人の悪さに目をつぶっていれば、そういう審議会のメンバーに任命される、という慣行がある。
そんなところに尻尾を振っていく記者や論説委員が結構各社にいる。
これでは批判記事が出るはずもない。
では審議会のメンバーになって政府の悪口を言ったらどうなるか・・・・・。
2016年3月19日に 「私が勲章を貰えない理由」 と題して鈴木孝夫の文章を紹介しました。コチラです。 ↓
https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12138004802.html
朝霞(埼玉)の花火大会 8月4日 中央公園にて撮影