アメリカの「主婦の座」 | 人差し指のブログ

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本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

 

 

「 古事記と日本人          神話から読みとく日本人のメンタリティ 」

渡部昇一(わたなべ しょういち 1930~2017)

祥伝社 平成16年11月発行・より

 

 

 

 まずアメリカの生活に経験ある主婦で、しかもちゃんとした家庭を持ったことのある日本人の婦人の証言を聞いてみよう。

 

 

 

『週刊朝日』 (昭和五十一年一月十九日号) は、江崎玲於奈夫人 真佐子さんと広中平祐夫人 和歌子さんとの対談を載せている。

 

 

お二人の話で意見が一致しているところは個人の主観以上のものと言ってよいと思うが、それがまた私の個人的観察と大体において一致している。

 

 

 お二人ともウーマン・リブ(正しくはウイメンズ・リブ)がアメリカに起ったことは、よくわかるが、日本の婦人が一緒にやったら大きな間違いであるという意見である。

 

 

その理由の第一は、アメリカの家庭の主婦には、日本人が考えているほどの実権がないからというのである。

 

 

経済面について、それぞれの体験をお二人は次のように語っている。

 

 

 

 

 江崎 たとえば、留守番をしてくれた人にお金を払いたいと思って、

     そういうことをよくやっている方にお聞きしたんです。

 

     どのくらい払ってるか、ってもちろん奥さんに電話をかけて聞いた

     んですよ。

 

     そうしたら、彼女それを知らないんです。

     そういう大きなお金は全部ご主人が賄(まかな)っていて自分は知

     らない、というんですね。

 

 

 広中 そうね。買いものに行きましてもね。電気洗濯機とかの大きなもの

     を買うときは、私一人ですと、向こうはこっちが真剣に買おうという

     気はないんだと思うんですね。

 

     ダンナが来たら本当だと思って、セールスマンもちゃんと付き合っ

     てくれるんです。

 

(略)

 

 

 さらに両夫人がした重要な指摘は、アメリカの女性たちには 「落ち着きの場」 がないと言うことである。

 

 

 

江崎  ・・・・もう一つは、アメリカの社会では、子どもを育てるということ

     が、日本の社会のように大きな問題じゃないんです。

 

 

     私の周りを見てますと、婦人も子どもの母親であるということより

     も、ご主人のよきパートナーであることのほうが最低条件になるん

     です。

 

     ですから日本の女性が持っている母親の座というものがないんで

     すね。

 

 

     パートナーだったら簡単に替えることができるでしょう。

     小どもの母親というのは替えることができませんけど。

 

 

      そういう意味で、アメリカの女性の占めている座は、外側で日本

     人が、コートを着せてもらえるからとか、デパートに連れていっても

     らえるからということで判断していることより、実質的にはしっかり

     した場がないように思います。

 

 

広中  そうですね。夫婦が精神面でうまくいっている間だけは続くけれど

     も、それ以外の、たとえば子どものこと、経済的な事情、それから

     社会の規制というもので、夫婦でサポートされてないんですね。

 

 

 

江崎  私もそう思います。アメリカの女性はずいぶん努めてますよね。

     いくつになっても磨いて。

 

     ですけど磨いて努めてるわりには、日本の女性が持ってる落ち着

     きの場が与えられてないですね。

 

 

 

ここで日本の主婦とアメリカの主婦は、どちらが立場が強いか、という点からの問いに対して両夫人は次ぎのごとく答える。

 

 

江崎  日本の方が強いです。絶対に。

 

広中  うらやましいですね。

 

江崎  ほんとうにうらやましいですね。アメリカのほうは実によくやります

     けど、その割には報いが少ないような気がする。

 

 

 

アメリカの主婦から見ると、日本の主婦は羨ましがられるような安定した地位を持っており、その安定の理由は、単なる夫婦間の愛情だけによるものではないことがわかる。

 

 

 

 

 

5月11日  光が丘公園(東京・練馬)にて撮影