「中国4.0 暴発する中華帝国」
エドワード・ルトワック/訳者・奥山真司
株式会社文藝春秋社 2016年3月発行・より
ホワイトハウスでオバマ大統領は、習近平に南シナ海での人工島の建設について懸念を伝えている。
それに対して習近平は、次のように回答をしている。
「人工島は、あくまで空と海の救難活動用の非軍事的な施設である」。
これが何を意味するかと言えば、戦闘機を駐留させないということだ。
オバマ大統領は、これで中国側には悪意はないことを確認できたと喜んでいた。
実際のところ、習近平も、軍の関係者から 「南シナ海では救難活動用の施設しか建設していない」 と聞いていたのだろう。
ところがこの直後に、中国軍の高官が報道陣に聞かれて 「そんな約束はしていない、これは軍事基地だ」 と発言してしまったのである。
この明らかな矛盾について、アメリカのメディアは
「習近平のトップダウン式のリーダーシップが、さまざまな問題を引き起こしている」 と報じていた。
ホワイトハウスの発表でも、同様の表現が使われた。
これはとても奇妙なフレーズだ。
習近平はそもそも中国の三つの要職を兼任する独裁者である。
そうだとすれば、トップダウン型のリーダーシップで当然だからだ。
要するに、ここで判明したのは
「習近平にはフィードバック・システムがない」 ということだ。
彼は誰にも相談できず正確な情報も伝わっていない。
彼には美しい妻がいて、三つの重要なポストを兼任して、身体も健康なのに、唯一欠いているのは、彼に真実を伝えてくれる人物なのである。
サダム・フセインも全く同じ問題を抱えていた。
2003年にアメリカが最後通牒をイラクに突きつけた際、「イラク軍は戦えません、全滅します」 という事実を誰も伝えなかったからである。
独裁国というのは、どこも似た問題を抱えているが、中国が厄介なのは、他の独裁国と違って国の規模が桁違いに大きく、他の大国と違ってあまりに不安定だからだ。
(略)
中国の 「パラメータ」 は、「中国は共産主義による一党独裁国家」 というものだ。
しかし、先に見たように、習近平が推進する 「反腐敗運動」 によって共産党の 「求心力」 が失われ、中国の 「パラメータ」 自体が現在、揺らいでしまっているのである。
それに加え、大統領選を始めとした、日々流れてくるアメリカからの情報が、中国共産党の一党独裁体制を根底から破壊しつつある。
というのも、さまざまな候補者が名乗りを挙げる大統領選のニュースを見れば、「では習近平は誰が選んだのか?」 と問わざるを得なくなるからだ。
日本人も同じようなことを言ってます。2017年7月12日に「孤立する習近平」 と題して長谷川慶太郎の文章を紹介しましたコチラです ↓
https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12287058220.html
昨年12月14日 光が丘公園(東京・練馬)にて撮影