~ルビや振り仮名などは幾つか省略してあります・(人差し指)~
「日本と台湾 なぜ、両国は運命共同体なのか」
加瀬英明(かせ ひであき 1936~)
祥伝社2013年9月発行・より
2012(平成24)年12月に、ワシントンで古本屋を覗いたら、1924(大正13)年に刊行された 『GLIMPSE OF JAPAN AND FORMOSA』(グロセット・アンド・ダンラップ社)と題する本が売られていたので、買い求めた。
「日本、台湾一瞥(いちべつ)」 とでも、訳せようか。
著者はハリー・フランクという紀行作家で、全235ページある。
帰りの機内で手に取ったが、90年あまり前の台湾が、アメリカ人作家の眼にどのように映ったのか、興味深かった。
著者は中国福建省の福州から海路で基隆港に到着する。
中国から台湾に直航して、タイホクをはじめとする市街が、「あまりに清潔」
で 「整然としている」 ので、「不可思議な気分にとらわれる」。
「台湾人が住んでいる区域ですら、中国の街のような、堪えられない不潔さがない。ニューヨークの住宅区よりも、清潔だ」 「日本人が厳格なのについては、プロシア人ですら、ここまで実現したことはなかろう。日本人はかつての中国式の生活に、落ち着きと秩序をもたらした」
と驚嘆している。
著者は緑茂るマルヤマ公園を訪れて、台湾神社を見学する。
今日ここには、円山大飯店が建っている。
「まるでキョウトを、そのまま移してきたようだ。シントウの神社が市内にいくつかあるが、みな日本の清らかな雰囲気が保たれて、台湾人が拝む極彩色で、喧噪をきわめる廟と、まったく対照的だ」
「台湾海峡の対岸と較べて、人力車の車夫の着衣、編笠までが清潔で快い」
「中国では鉄道を利用しても、旅といえば無政府状態だが、台湾の列車に乗って、近代に戻ることができた。(略)車内の検札係は三等車でさえ”顔のない”乗客に対して、まず制服を脱いでお辞儀をする。(略)中国と違って、日本の美的水準によって、客車の床下が掃き清められ、水が打たれている」
「(中国と違って)どこへ行っても、悪臭がない」
「日本がわずか20年あまり努力(注 ・統治)したことによって、何と大きな変化がもたらされたことか。おそらく、世界の人々はいまだに台湾といえば、禁断の山々が密林によって覆われ、野蛮人が盤踞(ばんきょ)する島だと思っていよう」
本に著者が撮った写真が、多くある。
一等車に乗る子連れの台湾人夫婦、三等車の日本髪を結った女性、「懸社臺中(けんしゃたいちゅう)神社」 の大鳥居を通して見る鎮木(ちぎ)をのせた拝殿。
こざっぱりした服に、草履の小学生(日本が台湾中に、立派な校舎を建てたと説明されている)、白い制服を着た日本人教師を中心にして、満面笑みの山岳民族の小学生の男女(「つい最近まで、首狩族だった」と説明)などだ。
読み進んでゆくと、著者は 「このところ国際世論のなかで、中国が無秩序にあるよりも、しっかりとした勢力の”保護領”となったほうがよい というよりも、必要があるという声が聞こえてくるが、台湾の現状を見ると、日本に統治させたらどうなるか、という展望をいだかせる。
昨年11月27日 平林寺(埼玉・新座)にて撮影