昔、買った本を見つけて、ホコリをはたいて読んでいたら面白い部分があったので御紹介を・・・・・・
この頃は三人ともまだ五十代の半ばだったんですね。
「いいたい放題 三ピン鼎談 日本の常識・世界の非常識 」
堺屋太一/渡部昇一/竹村健一
株式会社 太陽企画出版 昭和59年12月発行・より
<堺屋> 外国語が翻訳されると、漢字に書くでしょう。
漢字ってのは、一字ずつ意味を持ってるんですよ。
だからそこから概念が発展してしまうんですよ。
昔 swan という鳥を、「白鳥」 と訳した悪い奴がいた。
それ以来、黒い白鳥は日本では非常に具合が悪いんですよ。
swan という言葉には白とか黒とかいう概念ないんですよ。
<竹村> あ、ないのか。
<堺屋> ないけど、「白鳥」 と訳したから黒い白鳥はね、どうも日本じゃ肩身が狭い。
<渡部> swan ていうのは、「音」 というのと語源が同じですからね。
<竹村> 音?
<渡部> sound と語源が同じなんですよ。ですから元来は鳴き声で名前をつけたわけ。
<竹村> あ、そうなの。
<渡部> それを日本では色でやった。
<堺屋> 色でやった・・・・・・・。あのね、もっとおもしろいのはね、
navy を 「海軍」 と訳した人がいるんですよ。
これがね、幕末の外国奉行でね。そしたら、スイスの海軍は、日本じゃ肩身が狭いんですよ。
「なんで海のないスイスに海軍があるのか」 ってこう言うんですよ。
ところが、navy ってのは navigation とか、そういう語源がつながってるので、「航行」 とか 「就航」 とかいう意味はあっても、「海」 なんて意味は本来ないからね。
ボーデン湖でも、ライン川でも海軍がいていいわけですよ。
<竹村> ああ。
<堺屋> ところが、困ったのは、万国博覧会のスイス館の館長が海軍提督だったんですよ。
それで、「この人はスイスの海軍提督でね」 って連れて行くとみんなが
「なんでスイスに海軍提督がいるのか」 と、「こいつインチキじゃないか?」 という顔をするからね。
そうすると 「昔、幕末の外国奉行が・・・・・」 っていうところから説明しなきゃならない。
<渡部> 軍艦奉行と言わなきゃならないですね。
「水軍」 という言葉を思いつきましたよ、スイスのスイグン・・・・(人差し指)
4月28日 中央公園(埼玉・朝霞)朝霞市内にて撮影