中国文化財の海外流出 | 人差し指のブログ

人差し指のブログ

パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

テレビ番組の 「なんでも鑑定団」 を永年見ていて覚えたことの一つに

中国で大枚をはたいて買った骨董品は全部ニセ物だということです。

 

 

 

「日本に敗れ世界から排除される中国」

黄文雄(コウ ブンユウ)・石平(セキ ヘイ)

株式会社徳間書店 2014年12月発行・より

 

 

<黄>    モノについて言えば、20世紀に入ってから中国の文化財が海外へ流出しはじめました。

 

 

よく中国の文化財は1840年のアヘン戦争以後の列強の侵略によって略奪されたと言われますが、むしろ大部分は中国人が海外に不正に売り払ったのです。

 

 

20世紀に入って成立した中華民国の歴代の博物館館長や宝物の管理者が、偽物と本物をすり替えて本物を海外へ流出させるということが横行したのです。

 

 

台湾の美術専門家から聞いた話ですが、かつては故宮博物院にしても

そういうことをよくやっていたそうです。

 

 

館長と職員がグルになるわけですが、職員が協力するのを断わると、

「あいつは中国のスパイだ」 などと嘘の密告をされて、逮捕されたといいます。

 

良心のある人間は、口封じのために殺されてしまうのです。

 

 

大陸では1911年の辛亥(しんがい)革命後の中華民国の時代から、北京の博物館館長たちがそうしたことを繰り返してきたといいます。

 

 

大陸に進出している台湾の骨董品関係者から聞いた話では、中国の博物館を見学していると、館員らしき者が 「同じものを買わないか?」

と誘ってきたそうです。

 

 

現在の文化財の流出は、主に地方政府と結託したマフィアがおこなっています。

 

マフィアは金を持っているから、世界の考古学者たちと人工衛星を通じて、歴代の皇帝の墓陵のどこにどのような宝ががあるか、その宝物にどのくらい価値があるかなどをやりとりしながら、盗掘するといいます。

そして海外に売りつける。

 

 

<石>     おっしゃるとおり、文化財の流出は清(しん)王朝の崩壊後から始まりましたが、もっとも大量に持ちだしたのは、蒋介石ですね。

 

 

国共内戦に敗れた蒋介石が台湾に逃げるときに、北京の紫禁城(しきんじょう)の宝物も一緒に台湾へ持って行った。

 

 

ある意味では、蒋介石に感謝しなければいけない。

 

もし蒋介石が台湾に持ち逃げしなければ、文化大革命でまずぶっ壊されたでしょう。

 

中国はこの100年あまりの間に、あらゆる宝物が流出するか、破壊されました。

 

 

最初がアヘン戦争以後の西洋人による略奪、次に清朝末期の宦官(かんがん)たちによる流出、さらに中華民国初期の戦乱による流出、そしていちばんいい宝物を蒋介石が台湾に持って行った。

 

 

その間には、本物とニセモノのすり替えによって、海外に流出したものもあったでしょう。

 

そして中国にわずかに残っていた宝物は、毛沢東時代の文化大革命によって破壊されました。

 

 

文化大革命は伝統や祖先崇拝の否定でしたから、祖先がつくりあげたものを全部一掃したのです。

 

 

個人的な体験を言えば、以前、天安門広場にある中国国家博物館に行ったことがあります。

 

 

これは昔の革命歴史館を改造したものですが、非常に立派な建物です。

その贅沢さと雄大さはイギリスの大英博物館の数倍以上でしょう。

 

 

ところが2時間も並んでようやく入場すると、なかには何の文化財も展示されていない。

 

かろうじてあったのは、この20年間に発掘されたものだけです。

 

あとはすべて写真と文字の説明で、実物は何もないのです。

 

あの驚くべき貧困さは、いかにも現在の中国を象徴しています。

 

 

コレクションの量や質は、大英博物館どころか、日本の地方都市の博物館と比べてもはるかに低い。

 

たとえば陶磁器といえば、中国が誇る芸術文化の象徴でしょう。

陶磁器を 「チャイナ」 というくらいですから。

 

 

大阪市の中之島に市立東洋陶磁美術館がありますが、そこで展示されている中国の陶磁器のコレクションは非常にすばらしいのですが、

本場の中国にはこの10分の1のコレクションすらない。

 

現在の中国において、歴史の蓄積は空っぽなのです。

 

 

 

4月26日 和光市内(埼玉)にて撮影