「自由と宿命・西尾幹二との対話」
西尾幹二・池田俊二
株式会社洋泉社 2001年10月発行・より
<池田> 次に 「羞恥について」 をお願いします。
冒頭、先生が高校一年生のとき、嘗てのクラスメートが病気で一年遅れて中学三年生をやり直しているのを慰めるつもりでその友へ発した言葉が、
彼を激しく怒らせてしまったという苦い思い出が語られています。
その際の両者の心理を顧みられて、
「私が他人の劣勢に同情したことで自分の幸福を噛みしめたほどに自分を惨めな存在だとは思いたくないが、それでも、相手を傷つけたことは紛れもない。そしてあのとき、相手が私から同情されていることを苦痛とした以上、私は彼の魂の深部に土足で踏み込み、同情によって自分を楽しませていると邪推されたの違いない」
と くやんでおられます。
それから友が死ぬ四〇歳代まで会うこともなく年賀状を交しつづけたエピソードが淡々と綴られ、
「人間は他人に同情せずにはいられない状況にぶつかるものだが、そういうときには、できるだけ相手に気づかれぬように、遠いところからそっと同情したいものである」
と自戒をこめて語っておられます。
4月15日 朝霞市内(埼玉)にて撮影