フィンランド保健局が15年がかりで行なった追跡調査で、「医者の健康指導は、体によくない」 ことが、はっきりしています。
「まじめに定期健診を受け、異常が見つかったらライフスタイルを改善したり、治療をする」 という努力は皮肉にも、命を縮めるんです。
調査では、生活環境と健康状態の似た40~55歳の管理職の男性を、くじ引きで600人ずつに分けました。
そして 「介入群」 の600人は、4カ月に1度ずつ5年間、医者の健康指導を受けて、運動不足なら運動プログラムに取りくみ、タバコはやめ、食事は摂取カロリー、飽和脂肪、コレステロール、アルコール、砂糖を減らす。
一方で不飽和脂肪(主にマーガリン)、魚、鶏肉、子牛の肉、野菜の摂取を増やしました。
高血圧、高コレステロールの人は降下薬を服用、厳しい介入でしたが、75%が医者の言いつけをしっかり守りました。
あとの600人は 「放置群」。
健康管理についてなにも言われなせんでした。
5年間の試験期間のあとは全員、自由に任せたら、10年後、信じがたい結果が出ました。
せっせと 「体にいいこと」 に励んだ介入群は、病死、自殺、事故死、総死亡数ともすべて放置群よりずっと多かったのです。
この皮肉な結果から 「薬を使っていくら数値を改善しても、健康長寿にはつながらない」 「検査で異常があると言われて落ち込んだり、いやいや運動したり、好物をひかえなければならない精神ストレスは、寿命を縮める」 ことが推測できます。
日本では単に 「体によさそうだから」 と定期健診やがん検診がはじまり、フィンランドの政府のように調査して効果を確かめることもなく、ここまで続いてきています。
体は自分のものです。検査の数値に従わないで、
体の声を聞いてください。
『 「余命3カ月」 のウソ』
近藤誠(こんどう まこと 1948~)
KKベストセラーズ 2013年4月発行・より
4月12日 光が丘(東京・練馬)にて撮影