「靖国問題と中国」
岡崎久彦(おかざき ひさひこ)・屋山太郎(ややま たろう)
株式会社 海竜社 2006年7月発行・より
<岡崎> 何かあったら財界に持っていけばしっかりした反応が
あったのに、今は何の頼りにもならない。
やはり、世代の変化でしょうね。かつての全学連・全共闘世代というか、
団塊の世代が今、財界の首脳になってきたので、財界がおかしくなってきました。
<屋山> そう。だから、サンクトペテルブルグにトヨタが進出して、
奥田碩(ひろし)さんとプーチン大統領が鍬入れ式を
しました。
奥田さんのほうは、商売の一つという意識でしょうが、プーチン大統領のほうは 「世界のトヨタが来るんだから、もう、両国間の交流は順調に進む。平和条約は要らない」 という位置付けになってしまうのです。
ですから、大企業が国際戦略を持たずに企業進出するのは問題です。
先日、トヨタの幹部四百人に、「今やトヨタは、多国籍企業のような形で世界に出ているが、無国籍では駄目だ。
ロシア進出も、果たして今、進出することが日本の国益にかなっているかどうか、考えて投資してくれ」 と話してきました。
日の丸を背負った経済人としての矜持(きょうじ)を
示してほしいところです。
<岡崎> もっとも最近、経団連の御手洗(みたらい)富士夫会長
(キャノン会長)が 「小泉首相は適切に判断して行動している。靖国参拝が中国との経済関係で支障になっていることはない」
と、しっかりした発言をされたと聞きました。
関西経済同友会といい、時に笵蠡無きにしも非(あら)ず、の感はありますね。
千鳥が淵(東京・千代田区)にて4月10日撮影