「世界は邪悪に満ちている だが、日本は・・・・。」
日下公人(くさか きみんど)・高山正之(たかやま まさゆき)
ワック株式会社 2015年12月発行・より
<高山> サダム・フセインは、イラク石油の国有化をやって、その収入で学校をつくりユネスコから表彰されているんです。
イスラムの宗教支配からみんなを解放して、
女性のチャドルも脱がせて、女性の軍隊もつくって、
女性が夫以外の男性と話をするのも一切お構いなしにした。
彼自身は、ポルトガルのロゼワインを愛飲していて、
リブロースも大好きだった。
イスラムとは一線を画している人間だった。
そのサダム・フセインをアメリカは潰した。
先ほど触れましたが、イラク領内のカルバラという地域で、
六八〇年にフセイン王子がスンニ派に虐殺されています。
シーア派は殉教したこのフセイン王子を崇めているから、
カルバラはシーア派の聖地になっている。
この地域はシーア派が多いんです。
彼らは、サダム・フセインの 「脱イスラム」 をすごく憎んでいて暗殺を何度も試みた。
暗殺犯グループだから、その都度、サダム・フセインがグループを潰すのは当たり前なんです。
シーア派の力が強いから、
うるさいシーア派を南部に強制的に移住させた。
そういうことをしているから、
シーア派からサダム・フセインはものすごく恨みを買っていた。
アメリカはそういう事情を知りながら、
また彼の偉さを知りながら、「サダム・フセインはシーア派を虐殺するスンニ派の親分」 という宗教派閥争いの貶(おとし)めて、
サダム・フセインを捕まえて絞首(こうしゅ)刑にしてしまったわけです。
あれはひどい。
中東をイスラムのくびきから解放しようとした人間を、
ああいう形で葬(ほうむ)り去る。
そういうことを中東の民衆たちはみんな見てきたわけです。
そして今度は、同じイスラムを志すシリアのアサドを悪人にして叩いている。
そういう欧米の身勝手に中東の人々の不満がたまり、
イスラム国の台頭につながっていると思います。
昨年12月3日 新座緑道(埼玉・新座)にて撮影 道の向こう側は大泉学園町(東京・練馬)