西行の本当の人物像とは | 人差し指のブログ

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「知識ゼロからの徒然草入門」
谷沢永一(たにざわ えいいち 1929~2011)
株式会社幻冬舎 2006年12月発行・より


 ◆ 人の努力によって成し遂げられた、さまざまな方面における、名手達人の素晴らしい逸話などは、

その道の勘所(こつ)を知らないのに思い込みの深い人たちが、

むやみやたらに祭り上げて、神さまみたいに褒(ほ)めそやすものだけれど、

実際にその方面の真髄を知っている人であれば、頭から信用せず黙っているのではなかろうか。


時代を経ながら転々と言い伝えられた噂話と、

昔におこなわれた本当の姿かたちとは、何事につけても異なると思われる。



{谷沢の視点}    
鎌倉時代に歌人として活躍した西行法師の逸話を集めた『撰集抄(せんじゅうしょう)』という書物があります。

江戸時代の文化人が愛読した有名な本ですが、

西行を崇拝する誰かが創作した作品と謂(い)われています。

歌人とはどうあるべきか、という理想的な幻想(イメージ)に合わせて、

 西行の挿話(エピソード)を作っていった虚構(フィクション)です。

世に伝えられている西行の人物像は、このように崇拝者の想像によって作り上げられていったのです。


 書物からは、西行については何も知ることができません。

わかるのは、当時の人々が、どのような人物を歌人として立派であると思っていたのか、ということ。

世に伝わる誉れ高い評判は、そのほとんどが嘘だと思っていいでしょう。


8月23日 中央公園(埼玉・朝霞)にて撮影

雲ー10ー11