「文学のレッスン」
丸谷才一(まるや さいいち 1925~2012) 聞き手・湯川豊
株式会社新潮社 2010年5月発行・より
<丸谷> こんなのがあったな。『袋草子』 という本にある話。
歌を詠みかけられると、返しをしなきゃならない。あれは難しくて困る。
詠みかけられたとき、どう しのげばいいかという心得が書いてある。
答えはあっけにとられるほど簡単で、聞こえなかったふりをする(笑)
聞こえなかったふりをして、相手が何度か飲みかけてきたら、「ん?」 とか 「うん、うん」 とかいろいろやっていると、
向こうは嫌になって行ってしまう、そういうことが書いてあって、これも歌話なんですね。
<丸谷> 平安末期じゃないかな。
誰もがとっさにうまい歌を返せるわけじゃありませんからね。
7月17日 中央公園(埼玉・朝霞)にて撮影