中国のはじまりと漢字 | 人差し指のブログ

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紀元前221年の秦の始皇帝の統一が、厳密な意味での 「中国」 のはじまりである。

なぜならこのときはじめて、中国文明の三大要素、「皇帝」 と 「都市」 と 「漢字」 が出そろったからである。

始皇帝が、文字どおり中国における最初の皇帝で、都市が中国の各地に城壁をめぐらされて建築され、

漢字がその都市に住みながら言語の異なる人々を統一するために発明された。

この三大要素については、拙著 『皇帝たちの中国』(原書房)、『中国文明の歴史』(講談社現代新書)でくわしく説いたので、ここではくりかえさない。


 ただし注意すべきことに、「漢字」 は中国ではごく少数の支配階級の人、

しかも特殊な訓練を受けた人しか読めず、決して大衆の文字ではなかった。

漢字には、品詞も、性も数も格も、時称もなく、漢字で綴(つづ)った漢文には文法もない。

漢文の意味を解読する手がかりは、古典での熟字の用例しかない。

そのため漢字の使用法に精通するには、厖大(ぼうだい)な量の古典のテキストを丸暗記しなければならない。

そこへもってきて、漢人の話す言語は、土地土地ごとに違いが大きく、

聞いただけでは理解できないという事情が重なってくる。


 とどのつまり、中国の統一を保つためには、話し言葉(漢語)書き言葉(漢文)とのあいだの断絶に、目をつぶらなければならないことになったのである。

「だれが中国を作ったか 負け惜しみの歴史観
岡田英弘 (おかだ ひでひろ 1931~)
PHP研究所 2005年9月発行・より


8月7日 中央公園(埼玉・朝霞)にて撮影

太陽ー10-2