現代でいちばん地を払ったのは、人間の気品である。
品のあるヒト、というのを見ないこと、久しい。
私がテレビをあんまり見ないなは、品のない人間がやたら出まくるからだ(ではあんたはどやねん、といわれると返事に困るが)
私の思うに、ですね、人間の品は究極のタイプ一つきりというのではなく、いろんなタイプの品位があると思う。
一、いつもよく考えつづける人の、人生観から出る品。
二、生まれ育ちからくる品。
三、一つの道をきわめたことから出る品(職人さんの手わざ、学者先生の蓄積、長年修業のたまもの
このうち、どれか一つでもあればいいことにしましょうや。
いや、まだホカに一つある。自然の中で自然相手に生きてる人も品がある。『楽老抄 ゆめのしずく』
「静かにしてる」
ということ、それ一事が、教養の象徴のように思えて仕方がない。
静謐(せいひつ)というコトバが世の中にあるのを、知ってるのと知らないのとで、人間の格がきまるように思ってしまう。
話し声をコントロールできること。
大きな物音をたてないこと。
おとなしい動作。
なんでそんなことができないのかねえ。男も女も同じ。『ラーメン煮えたもご存じない』
「おせい&カモカの昭和愛惜」
田辺聖子(たなべ せいこ 1928~)
株式会社文芸春秋 二〇〇六年一〇月発行・より
光が丘公園(東京・練馬)1月23日撮影