参考資料3164 | シフル・ド・ノストラダムス

シフル・ド・ノストラダムス

ノストラダムスの暗号解読

飢えのテーマ———軍隊、圧制
「『飢え』と『ペスト』の二つのことばは別個にそれぞれ18篇の四行詩のグループもつくっている。『飢え』はそれだけで独立して15の四行詩に、『飢饉』は二つの四行詩に登場する。ひとつ欠けているが、それは『飢饉』を誘発するイナゴ戦争について語っている四行詩で補うことができる。
 この『飢え』と『ペスト』の二つのことばが同じ四行詩に顔を出したら、最初の暗号テーマをさしているものと考えられる。もし二つが別々になっていたら二番目、あるいは三番目のテーマを構成していることになる。
 そのほかにも、『ペスト』とつながっていない『飢え』ということばの入った二つの四行詩がある。そのうちのひとつ、『諸世紀』Ⅴ-63では、”船は寒さと飢えと波に古代ローマの海をさまよう・・・人類にいくつかの疫病が流行するだろう”と、ペスト以外の災厄について語っている。もう一篇では、”ジュネーブの人びと、飢えと渇きに干あがるだろう/目の前の希望ははかない夢と消え/セベーナの法はまさに崩壊寸前になり/艦隊は大きな港に入ることはできないだろう”(『諸世紀』Ⅱ-64)と、『飢え』と港に入ることのできない船について語っている。船が港に着けない理由については書かれていないが、その原因はおそらくペストであろう。

Mabus puis tost, alors mourna viendra,
De gens & bestes une horrible defaite:
Puis tout à coup la vengeance on verra,
Cent, main, soif, faim, quand courra la comete.

マビュスが来て、すぐに死ぬことになる
人びとと獣の恐るべき破壊
そして突然の復讐が明らかになり
100本の腕、渇きと飢えは 彗星が走るときにあるだろう(『諸世紀』Ⅱ-62)

<解釈>
これはハレー彗星が地球に接近する年(1986年)、飢饉や暴動が発生することを予言した詩である。マビュス Mabus にはいろいろな解釈があり、指導者の名前のつづり替えとする説もあるが、私は火星(マルス Mars)のことではないかと思う。火星は占星学で、血、暴力、軍隊などをあらわす星だ。1988年9月に火星が地球に大接近するという天文学的データもあり、このときには、テロ事件やクーデターがあいつぐだろう。また、”人びとと獣の恐るべき破壊”とは、すべての生物を一瞬にして殺戮する、中性子爆弾のようなものが使われることを暗示している。」
「ノストラダムスの遺言書」ダニエル・ルゾー著・流 智明監修より

感想
>『諸世紀』Ⅴ-63では、”船は寒さと飢えと波に古代ローマの海をさまよう・・・人類にいくつかの疫病が流行するだろう”と、ペスト以外の災厄について語っている。

詩百篇第5巻63番
無為な遠征による名誉、不相応な不満。
船乗りたちは寒さ、空腹、荒波の中、ラティウムをさまよう。
テヴェレ川から遠くない大地は血塗られる。
人々は様々な痛手を負うだろう。
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/2643.html

別に「疫病」については語っていないようだが。一応、ノストラダムスサロンからも引用してみよう。

無益な企てにより名誉と不当な訴え
ラテン人に入り混って漂う船 寒気 飢え 波浪
ティベル川からほど遠からぬ土地 血に汚され
悪疫 数度にわたり人類を苦しめよう
(山根和郎 訳)
引用元:https://www.ne.jp/asahi/mm/asakura/nostra/proph_text/Centurie_05.htm

ここでは「悪疫」として使われている。その原語は「plagues」で、複数形を解くと「plague」。次のサイトに、

plague:疫病、災厄。

plague (n.)
「14世紀後半から使われているplageという言葉は、「悩み、災害、悪、苦しみ、厄介事」を意味し、また、15世紀初めには「悪性の病気」としても使われていました。」
引用元:https://www.etymonline.com/jp/word/plague

とあるので、問題ない。ただし、例えば「peste」には「ペスト,悪疫,疫病」などの他に「有害な人(もの),嫌な(手に負えない)女」という意味もあるので、「plague」にもそういう意味がある可能性もある。つまり、反キリスト一派とか。

と思ったが、大問題に気が付いた。「plague」は古語辞典にもないし、古い辞書の横断検索でもヒットしない。つまり、ノストラダムスは英語の「plague」(1 疫病,伝染病,2 [the~として]ペスト,黒死病,3 天災,天罰,[口語]いやなもの)を使っているのである。念のため、当時のフランス語だったら上にもあるように「plage」を使うはずである。(これは古語辞典に載っている。)蛇足だが、ラテン語だったら「plaga」だろう。

補足
「「heroic」は現代フランス語にはないし、古語辞典にもない。また、古い辞書の横断検索でもヒットしない。ところが、英語にはあるのである。「heroic」(1 英雄的な,勇ましい,2 [詩が]古代の英雄を歌った,叙事詩の,[文体などが]大げさな,3 [美術]実物より大きい),ノストラダムスは英語を使ったのだろうか。ただし、フランス語には「héroïque」(1 英雄的な,勇壮な,偉大な,2 思い切った,大胆な,3 [神話の]英雄の,神人の,英雄を歌った)があり、語尾を独自に変化させたのかもしれない。因みに、ラテン語では「heroici」らしい。」
引用元:https://ameblo.jp/hitorinomeaki/entry-12787787276.html

もう断定しても良い頃だろう。ノストラダムスは英語も使っていたのである。つまり、「諸世紀」という訳は(ダブルミーニングとして)間違っていなかったのである。(フランス語訳では「百詩篇」。)

>もう一篇では、”ジュネーブの人びと、飢えと渇きに干あがるだろう/目の前の希望ははかない夢と消え/セベーナの法はまさに崩壊寸前になり/艦隊は大きな港に入ることはできないだろう”(『諸世紀』Ⅱ-64)と、『飢え』と港に入ることのできない船について語っている。

百詩篇第2巻64番
ジュネーヴの人々は飢えと渇きで干からびるだろう。
近くの希望は消えてしまうだろう。
すぐさまゲベンナの宗教が震えるだろう。
艦隊は大きな港で受け入れられない。
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/2100.html

別に問題ないだろう。因みに、ジュネーブは「終わりの時」には危ないらしい。

詩百篇第9巻44番
Migres migre de Genesue trestous,
Saturne d'or en fer se changera,
Le contre RAYPOZ exterminera tous,
Auant l'a ruent le ciel signes fera.
離れよ、一人残らずジュネーヴから離れよ。
黄金のサトゥルヌスは鉄に変わるだろう。
レポの反対が全てを滅ぼすだろう。
到来の前に、天が徴を示すだろう。
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/38.html

3行目の「レポ」(RAYPOZ)については、ノストラダムスの大事典には次のようにある。

RAYPOZ
「RAYPOZ は詩百篇第9巻44番に登場する単語で、標準的なフランス語読みならば「レポ」または「レポズ」である。アナグラムとして理解する論者が多い。
 Le contre RAYPOZ (RAYPOZの反対) は、綴りをほぼ逆にひっくり返した人名であるゾピュラ(Zopyra)を指していると考えられる。確認できる範囲では、マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)の著書(改訂第4版、1939年)がこの解釈を提示した最古の例のようである。
                      (中略)
 なお、Zopyra をそのまま逆さまにすると arypoz となる。なぜそうしなかったのかについて考察している論者は見当たらないが、真っ先に思い浮かぶのは韻律上の要請だろう。現在、Le contre RAYPOZ で前半律 (行の最初の4音節) を構成している。それに対し、レポ (RAYPOZ) をアリポ (arypoz) にしてしまうと、1音節増えてしまい、まとまりが悪くなってしまう。そうした詩としての構成に配慮した結果、完全な逆さ綴りにしなかったのではないかと考えられるのである。」
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/43.html

「ゾピュラ(Zopyra)を指していると考えられる」そうであるが、上にも書かれているように、逆にするとarypozでRAYPOZとはならない。これを韻律のせいでRAYPOZにしたなんて「こじつけ」以外の何ものでもないだろう。
因みに、私の合成語の解釈では、「RAY」(rayonの略)+「POZ」(positionの略)として、「光(光明)」+「位置,[特に高い]地位」とすると、「イエス・キリスト」で(ポジティブな光でも良い)、「レポ」(RAYPOZ)が「イエス・キリスト」の暗号とすると、「レポの反対」は「反キリスト」の事である。すると、4行目は聖書からの引用と考えられないだろうか。

「29 しかし、その時に起る患難の後、たちまち日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ、星は空から落ち、天体は揺り動かされるであろう。
30 そのとき、人の子のしるしが天に現れるであろう。またそのとき、地のすべての民族は嘆き、そして力と大いなる栄光とをもって、人の子が天の雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。」
「マタイによる福音書」第24章29節~30節(口語訳)

「24:29「その苦難の日々の後、たちまち太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は空から落ち、天体は揺り動かされる。
24:30 そのとき、人の子の徴が天に現れる。そして、そのとき、地上のすべての民族は悲しみ、人の子が大いなる力と栄光を帯びて天の雲に乗って来るのを見る。」
「マタイによる福音書」第24章29節~30節(新共同訳)

補足1
「4 この言に命があった。そしてこの命は人の光であった。
5 光はやみの中に輝いている。そして、やみはこれに勝たなかった。
6 ここにひとりの人があって、神からつかわされていた。その名をヨハネと言った。
7 この人はあかしのためにきた。光についてあかしをし、彼によってすべての人が信じるためである。
8 彼は光ではなく、ただ、光についてあかしをするためにきたのである。
9 すべての人を照すまことの光があって、世にきた。」
「ヨハネによる福音書」第1章4節~9節(口語訳)

イエス・キリストは「光」なのである。

補足2
サトゥルヌス
「リシャール・ルーサやノストラダムスは悪い影響を及ぼす星と理解していた。」
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/816.html

2行目の「黄金のサトゥルヌスは鉄に変わるだろう」はまさに反キリストの事だろう。つまり、善人面していた反キリストが本性を表して武力介入するという事。(「鉄」の原語「fer」には「剣」や「鉄の枷」という意味もある。)

>マビュスが来て、すぐに死ぬことになる
人びとと獣の恐るべき破壊
そして突然の復讐が明らかになり
100本の腕、渇きと飢えは 彗星が走るときにあるだろう(『諸世紀』Ⅱ-62)

ノストラダムスの大事典からも引用しよう。

百詩篇第2巻62番
そしてマビュスがその時すぐに死ぬと、到来するだろう、
人々と獣たちの恐るべき崩壊が。
そして突然目撃されるだろう、報復と
手無し、渇き、飢餓が。彗星が巡るであろう時に。
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/299.html

20年ぐらい前の私の訳(2巻62番)
Mabus puis tost, alors mourra viendra,
De gens & bestes une horrible deffaite,
Puis tout a coup la vengeance on verra,
Sang, main, soif, faim, quand courra la comette.(原文はロバーツ本)

1行目は1つの文章に動詞の未来形が2つも入っていて明らかにおかしいので2つに分けてみた。(20年前も同様。)

Mabus alors viendra,
De gens & bestes une horrible deffaite,
Puis tout a coup la vengeance on verra,
Sang, main, soif, faim, quand courra la comette.
マビュはその時来るだろう
人々と獣のような人々の恐ろしい失敗
それから突然人々は復讐を見るだろう
流血、援助、渇き、飢餓、彗星が流れるだろうときに

Mabus puis tost mourra,
De gens & bestes une horrible deffaite,
Puis tout a coup la vengeance on verra,
Sang, main, soif, faim, quand courra la comette.
マビュはそれからまもなく死ぬだろう
人々と獣のような人々の恐ろしい敗北
それから突然人々は懲罰を見るだろう
流血、援助、渇き、飢餓、彗星が流れるだろうときに
引用元:https://ameblo.jp/hitorinomeaki/entry-12449016434.html

ところで、「Mabus」について考察してみよう。「ノストラダムスの大事典」にこうある。https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/300.html

私としては、「アナトール・ル・ペルチエは、ラテン語の manibus(手、権力、武装)の語中音消失とした」と「エヴリット・ブライラーは不明としつつも、ラテン語 malus(邪悪な者)の印刷ミスの可能性を示していた」のダブルミーニングのための造語で「反キリスト」を表していると考えている。(ノストラダムスはラテン語はよく使う。)
つまり、「最期の審判」の詩だろう。

おまけ