「ブロワ城の問答」とその続き | シフル・ド・ノストラダムス

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ノストラダムスの暗号解読

「ブロワ城の問答」
王妃「わかりませぬ。信じられませぬ。ほんとうですか。ほんとうに1999年、この“恐怖の大王”とか申すものが降ってくるのですか?」
ノストラダムス「降りまする」
王妃「不吉な予言じゃ、・・・・して、その“恐怖の大王”とやらはどのようなものなのですか?」
ノストラダムス「さて、それはむずかしいご質問です。なんとお答えすればよいのか、わたくしにもよくわかりませぬ」
王妃「わかりませぬと?それでは通らぬでしょう。それが降ってくると書いた以上、そなたにはわかっているはずです。いったい、それはどんな怪物ですか?どんな姿をしておるのですか?」
ノストラダムス「姿は見えませぬ」
王妃「姿が見えぬ?」
ノストラダムス「はい。・・・・しかし、誤解なさいませぬよう。幽霊という意味ではありませぬ。姿そのものはあるのかもしれませぬ。しかし見えないのです。おそらく、それはひじょうに高い空の上におり・・・・目にもとまらぬ速さで降ってくるのでしょう。そのためか、それだけはわたくしにも見えませんでした」
王妃「では、ほかのものは見えたと申すのか?」
ノストラダムス「はい」
王妃「未来に起こることどもがか?」
ノストラダムス「はい」
王妃「おそろしいことを申す」
王妃「それだのに“大王”だけは見えなかったという。では、なぜそれが降ってくるのがわかったのです?」
ノストラダムス「そう感じられたからです。また、降ったあとのありさまが見えました」
王妃「おお、それはどのような?」
ノストラダムス「申せませぬ、言葉では・・・・。ともかく、それが降ったあと、すべては変わり果てておりました。・・・・信じられぬような未来の都や街々も、男とも女ともわからぬ人々も」
王妃「なんと?男とも女ともわからぬ?」
ノストラダムス「はい。そのような人々が見えました。それらが未来の街々とともにすべて・・・・」
王妃「変わり果てていた、つまり滅びていたと?」
ノストラダムス「はい」
王妃「何によって?戦いによってですか?剣とか火とか騎兵隊とか?」
ノストラダムス「いや、そのいずれでもありませぬ。そのようなものではないのです。・・・・しいて申せばそれは・・・・さよう、なんでもないものでした、なんでもないものが降るのです。・・・・それが恐怖の大王です。それによってすべては消え、失われ・・・・元のかたちをとどめなくなるのです」
王妃「それは避けられぬものですか?そのとき人々は、黙って待っているほかはないのですか?神や天使は何もしてくださらぬのですか?救いはないのですか?」
ノストラダムス「ありませぬ」
ノストラダムス「救いなどどこにもありませぬ。人々は滅びるほかないのです。それがそのときの人々の定めと申すものです。ただし・・・・」
王妃「ただし?」
王妃「おもしろい、ノストラダムス殿。いったいそれはどこに降るのです?このブロワやパリにも降りますか?ほかの国々にも?どことどこに降るか、ひとつずつわらわに教えてはくれませぬか?」

王妃「しかし、そなたはあのとき、“ただし”と言いましたね。1999年7の月、世界は滅びる、救いはどこにもない、“ただし”と・・・・」
ノストラダムス「そう・・・・そうでございました。たしかにそう申しました。1999年、恐怖の大王が降る、救いなどどこからも来ない。ただし、と」
王妃「そのあとを聞きたい」
王妃「“ただし”どうなのです?そなたはあのあと何を言おうとしたのです?」
ノストラダムス「しいて申せと仰せられるなら、お教えいたしましょう。・・・・わたくしはあのとき、こう申し上げようと思ったのです。Mais,si autre(ただし、もし“別のもの”が)・・・・と」
王妃「別のもの?」
ノストラダムス「はい」
王妃「それはなんじゃ?」
ノストラダムス「わかりませぬ。・・・・それはまだ、遠い霧のかなたにあります。果たして現れるかどうかもわかりませぬ。ただ、もしも終わりの前・・・・恐怖の大王が降る前に、その“別のもの”が現れれば・・・・」
王妃「現れれば?」
ノストラダムス「そうすれば、おそらく人間は---1999年7の月にも、きっと滅びずに済むであろう、と」
王妃「それは喜ばしいこと。その正体を知りたいものじゃ。その“別のもの”とは人間ですか?」
ノストラダムス「・・・・」
王妃「新しい救世主のような?」
ノストラダムス「・・・・」
王妃「申しなさい。そなたは未来が見えると言った。“恐怖の大王”のほかはなんでも。ならばその“別のもの”も見えているのでしょう?」
ノストラダムス「いいえ」
ノストラダムス「終わりのころのありさまでわたくしに見えるのは、大地震や飢えや戦いや・・・・不思議な乗りものや光る鳥・・・・そして“大王”が降ったあとの惨状・・・・それだけです。“大王”が見えないのと同様、その“別のもの”も見えませぬ。ただ、もし“別のもの”が現れれば、そうした終わりのむごいありさまも消えていくように思われるのです。・・・・そのときも戦いや欠乏は起こり、人々は苦しむでしょうが、“恐怖の大王”は降らず、“光の反対のもの”も襲っては来ない・・・・。そして人間は、苦しみながらもつづいていくでありましょう。終わりはたぶん、先に延ばせるでありましょう。“別のもの”が現れさえすれば・・・・」
「ノストラダムスの大予言Ⅱ」五島勉著より

「続き」
ノストラダムス「それは起こるでありましょう。それはたったひとつの場合を除いて避けられませぬ。それはかつてない大戦乱となって、このミリネールの終わるころ(この千年紀の終わるころ、つまり20世紀末)、世界を火と破滅でおおうでありましょう。ただ、いまも申しましたように、ひとつだけ、それを避けられる場合がございます。その条件が満たされさえすれば、そのような破滅の大戦乱が起こることはなくなると思われます。と申しますのは、もし・・・・」
王妃「もし、“別のもの”が現われれば、ということですね?」
ノストラダムス「そうです、王妃様。よくおぼえておいででした。たしか去年の冬、わたくしはブロワのお城でこう申し上げました。・・・・このミリネールのどんづまり、1999年7の月、空から“恐怖の大王”が降ってきて世界は大破局をむかえると。しかし、もしそのとき、“別のもの”が現われていれば、“恐怖の大王”は降らず、破滅は避けられるであろうと。あれとおなじことです。“恐怖の大王”が降る前、このミリネールの終わるころ、世界は巨大なマルス(軍備・軍国主義)におおわれ、そのためかつてない大戦乱が惹き起こされます。しかし、もしもそのとき、すでに“別のもの”が現われていれば、さすがの巨大なマルスも魔力を失い、大戦乱も起こらずに済む、とわたくしには感じられるのです」
王妃「それは結構なことじゃ。まれな大予言者のそなたがそう感じたからには、きっとそうなるでありましょう」
王妃「なれどノストラダムス殿。そなたはあのとき、こうも言いましたね。そのかんじんの“別のもの”の正体が、そなた自身にもまるでつかめなくて困ると・・・・」
ノストラダムス「仰せのとおりです」
ノストラダムス「それが現われさえすれば、このミリネール末期の人々も必ず破滅から救われるのですから、その“別のもの”の正体、わたくしとしてもぜひ予知したいのです。・・・・しかし、残念ながら、まだよく見えてまいりませぬ」
王妃「まだよく見えぬと?では、少しは見えてきたわけですか?」
ノストラダムス「はい、ほんの少しは・・・・」
王妃「ほう、それは聞きのがせぬ」
王妃「ほんの少しでもそれを教えてたもれ。早う申してみなさい」
ノストラダムス「はい・・・・ではほんの少し、いま見えておりますことだけ・・・・」
「ノストラダムスの大予言Ⅳ」五島勉著より

感想
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