日本語には、全体の語調を整える為の「ん」も有る。
『鳶が鷹を生む』 正しくは、トビが・・・」だが、往々
にして「トンビが・・・」となる。
昔の歌謡曲にも、♪トンビが、クルリと輪を書いた♪という
歌詞が有った。
「田」も、一語では聞き取りにくいので「田んぼ」と言う。
江戸時代に入って庶民文化が花開き、井原西鶴の好色一代男
が、発表され、その冒頭に「ふどし」なる言葉が出てくる。
「ふんどし」だ。 読み手は、そう読むことになっている。
平安時代からの伝統的な約束ごとで、「ん」は、書いても
書かなくても良かったのだ。
小説に「やごとなき」という言葉も良く出て来る。これも、
「やんごとなき」で、伝統的な「ん抜き」である。
本来は「已むこと無し」なので、「ん抜き」は間違いである。
地名には、幾変遷有って、今の読みに落ち着いた例がある。
安曇は、「あんどむ」➔「あずみ」
播磨は、「はんま」➔「はりま」
信濃は、「しんのう」➔「しなの」
「神」は、下に言葉が続くと、「かん・・・」になる。
神館(かんだち)、神無月(かんなづき)、
神嘗祭(かんなめさい)など。
「髪や上」は、「かみ」でも、同様の変化は無い。
国語学では、同じ「み」でも、甲類の「み」と乙類の「み」に
分けており、発音的にも違う音だと、されていた。
日本語の発音は、とても微妙なものなのだ。
英語で言えば「R」と「L」かな? いや、もっと”はるかに”
微妙だったようだ。 平安以前は特に。