何年か前、すみだトリフォニーホールに行った。
開演直前にアナウンスが有り、体調により舞台袖からピアノ
のところまで「?」で登場しますので、お許し下さい、と。
その直後、下手から黒い手押し車を押しながら、ゆっくりと
登場。ピアノの傍まで来て左手をピアノの端に伸ばし、それ
を支えにしながら、やっとのことで腰を下ろし姿勢を正す。
80代後半に入っての独演会で心配はしていたのだが、余りに
痛々しい姿だった。
しかし、鍵盤に指先が触れた途端、神が降臨したかのごとく
情熱的な演奏が始まったのだ。
『間違えることもあるのよ。 でも気にしない。 それが私
の音楽だから。』 つまり、それも含めて、彼女の熱き
パフォーマンスなのだ。 文字通りの一期一会である。
生の『ラ・カンパネラ』。 世界一だと絶賛される一方で、
酷評もされる、それこそがフジコ・ヘミングの真骨頂だ。
ご冥福をお祈り申し上げます
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