原因は「腹膜鞘状突起」という腹膜の出っ張りが鼠径部に残っていることにあります。
「腹膜鞘状突起」は,胎生期後半に精巣が腎臓の下あたりから、鼠径部に下降して 来る時に、腹膜が鼠径部に伸びてできたものです。
女児に精巣下降はありませんが,同じ現象が発生します。
男の子の場合。精巣が陰嚢内に下降した後は、多くの場合は自然に 閉鎖してしまいます。
右にも左にも出ることがあり両側に認めることもあります。片側の鼠径ヘルニアの手術後、反対側に鼠径ヘルニアが出てくる確率は 10%程度といわれています。性別では男児だけでなく女児にも同様にみとめます。
ヘルニアのとおり道には狭い場所があります。飛び出した臓器がこの狭い場所で締め付けられて、飛び出した組織の血流が悪くなることがあります。これをヘルニア嵌頓 (かんとん)といいます。
これは要注意です。
一度、ヘルニア嵌頓(かんとん)を起こすと脱出した臓器はむくみ、硬くなりお腹の中に戻りにくくなります。
こどもは痛みのために不機嫌になります。
このような時は両親が、慌てずに抱っこなどして泣かさないようにしてから、時刻に関係なく直ぐに主治医に連絡してください。
泣かせるとヘルニア部分が飛び出してしまうからです。
年少児の鼠径ヘルニアは自然に治ることもあるといわれていますが。
自然に治ることを過度に期待して手術時期を遅らすことは良くありません。
原則として嵌頓傾向のないこどもさんの場合、施設により異なりますが生後4~6ヶ月以降に予定手術とします。
少しでも戻りにくい場合は早期に手術しても問題はあり ません。
入院期間は1-5日程度で,日帰り手術の施設もあります。
手術はヘルニアの原因になっている腹膜の出っ張りをなくし腹圧がかかってもお腹の臓器が 脱出しないようにします。
鼠径ヘルニア手術は,簡単な手術のように考えられがちですが、専門的には難しい側面が多く、小児専門施設での治療が不可欠です。