暑い暑い、
ふうふう言って神社の階段を登ったら
いつもの境内が現れた。
ざわめく木々もそのままに
生ぬるいいい風がブルンとほほをなでる。
一緒に来ていたイクコも
少し遅れてそこに到着した。
「ああ、ひっさしぶりだなあ。
何年ぶりかな。イッコはたまにかえってきてたよね?」
汗を拭き、イクコに振り返っていう。
「はあ、ついたあ!
でも、ここへは、一人では、来ないな。」
「そうか、まあそうだわな」
自分で話をふっておいて変なコトを聞いてしまったと思った。
イクコと私は小学校以来の友人で、このたび夏の里帰りで
久しぶりに会うことができた。
私は勤めていた服飾の激務をおさらばして、
長年の夢だったスペインに、旅立つ前、の里帰り。
イクコは東京で広告のプランナーをしていたが、
現在は体調を崩してしばらく実家に居るのだった。
「街、小さいときに眺めた感じとなんでこう
変わって見えるかな。
昔は憎き田舎道、今は緊張が解けるスイッチになってる。」
うーん、と手を伸ばして深呼吸する。
「…そうね~。
なんか、緊張が解けたというか。
無理、してたんだ。
知らないうちに。」
下目がちになるイクコの目がどんどん水没していく。
長いまつげが軽やかな前髪から見え隠れする。
「イッコ…」
「私ね、失恋したんだ。」
赤い目で無理して作った笑顔から、
元気がない理由が伝わってくる。
「がんばればきっと本当にそうなるって
思っていたんだけどね。
…家族が居た人だったから。
わかってたけど、やっぱりだめだった。
ひとつ崩れると、ドミノ倒すみたいにうまくいかなくなっちゃって。
仕事だけは、って思ってたんだけど、
それも力だけが入ってしまって失敗ばっかり。
今はゆっくり、ストレッチして何があったのか角を落としてる最中。」
イッコは顔を上げて、
ゆっくりゆっくり話してくれた。
「そうだったんだね。ありがとうね。話してくれて。
何も知らなかったな。ごめんね。」
「ううん、いいの。
スーちゃんが居てくれて助かった。
ほんとに助かった。」
数歩歩いて、イッコが立ち止まって振り返る。
「でもやっぱり、まだだめだわ。」
声を上げて泣き始めたイクコにつられて、
励ますつもりが一緒に大泣きをしてしまった。
つらかったねえ
つらかったねえ
といいながら
その場にしゃがみこんで二人でワンワンないた。