世界はそう


わたしが生まれる前からそうだった

こんなふうにできていた
ただどんなに出来ているかを知らないが為にとても辛いと思ってしまう


わたしが何を食べようが
わたしがどんなうんこをしようが
わたしがどんなに楽しく過ごそうが
わたしがどんなに嘆き悲しもうが
わたしがどんなに成功しようが
わたしがどんなに失敗しようが
わたしがどんなに痛みを感じようが
わたしがどんなに優しくできようが
わたしがどんな幸せに甘んじたとしても

世界はこんなもんだと
あっけらかんとしているんであるわけです

だから楽しかろうが辛かろうが
長く生きようが早く死のうが
世界には何も影響が無い訳です


月の巡りによって、
目の前を塞がれた太陽、さえも







頭の中で話続ける人は
わたしの知り合いのような
全然知らないような

絶対分かち合う事がない
陰鬱でどうしようもない人なので
わたしはいつも大人しく話を聞き流すのです。

つまり、対峙するだけ時間が無駄になるんです。

でも、いつものが聞こえないと今日は非番か、なんて思うのです。

不思議でしょう?
悪習なんです。
しかし存在とはそんなもんかもしれない。

十回に一度しか思わないような事が、今日みたいな日には、
確信に思えてしかたありません。


なぜかしら。
平行なんだか、垂直なんだか。


そういえば。
冷蔵庫の煮付け

まだあったんちゃうかいな、


暑い暑い、


ふうふう言って神社の階段を登ったら


いつもの境内が現れた。


ざわめく木々もそのままに


生ぬるいいい風がブルンとほほをなでる。




一緒に来ていたイクコも


少し遅れてそこに到着した。






「ああ、ひっさしぶりだなあ。


何年ぶりかな。イッコはたまにかえってきてたよね?」




汗を拭き、イクコに振り返っていう。




「はあ、ついたあ!


でも、ここへは、一人では、来ないな。」




「そうか、まあそうだわな」




自分で話をふっておいて変なコトを聞いてしまったと思った。


イクコと私は小学校以来の友人で、このたび夏の里帰りで


久しぶりに会うことができた。




私は勤めていた服飾の激務をおさらばして、


長年の夢だったスペインに、旅立つ前、の里帰り。


イクコは東京で広告のプランナーをしていたが、


現在は体調を崩してしばらく実家に居るのだった。






「街、小さいときに眺めた感じとなんでこう


変わって見えるかな。


昔は憎き田舎道、今は緊張が解けるスイッチになってる。」


うーん、と手を伸ばして深呼吸する。




「…そうね~。


なんか、緊張が解けたというか。


無理、してたんだ。


知らないうちに。」




下目がちになるイクコの目がどんどん水没していく。


長いまつげが軽やかな前髪から見え隠れする。




「イッコ…」




「私ね、失恋したんだ。」


赤い目で無理して作った笑顔から、


元気がない理由が伝わってくる。




「がんばればきっと本当にそうなるって


思っていたんだけどね。


…家族が居た人だったから。


わかってたけど、やっぱりだめだった。


ひとつ崩れると、ドミノ倒すみたいにうまくいかなくなっちゃって。




仕事だけは、って思ってたんだけど、


それも力だけが入ってしまって失敗ばっかり。


今はゆっくり、ストレッチして何があったのか角を落としてる最中。」




イッコは顔を上げて、


ゆっくりゆっくり話してくれた。




「そうだったんだね。ありがとうね。話してくれて。


何も知らなかったな。ごめんね。」




「ううん、いいの。


スーちゃんが居てくれて助かった。




ほんとに助かった。」






数歩歩いて、イッコが立ち止まって振り返る。








「でもやっぱり、まだだめだわ。」


声を上げて泣き始めたイクコにつられて、


励ますつもりが一緒に大泣きをしてしまった。




つらかったねえ


つらかったねえ




といいながら


その場にしゃがみこんで二人でワンワンないた。