【舞台観賞】「Infinity」(ハグハグ共和国)
※この舞台は9/7~9/11まで行われた舞台で既に公演は終了しています。
9月に入りました。
そろそろ夏の暑さも和らいで、朝夕過ごし易くなりつつありますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
今年に入り観劇のペースが激減している自分ですが、それでもちょいちょいチェックはしていたりします。
そんな訳で今回、自分がお伺いした劇団は「ハグハグ共和国」
一年に1~2回の頻度で紹介している劇団ですね。
この劇団に対し「女傑」という表現をしておりましたが、昨今はそれだけにとどまらない舞台を見せてくれていると思う次第です。
そんなハグハグ共和国も昨年の15周年を経て、今回の本公演で記念すべき30回目を迎えます。
その30回目の公演の演目は「Infinity」
ハグハグ共和国にとって再々演となる作品で「第28回池袋演劇祭」の参加作品でもあります。
会場は大塚・萬劇場。
階段をくだってくだって、地下2階にあるあの劇場です(笑)
受付を済ませ会場に入るまでの階段の踊り場には、過去公演のパンフレットの挿絵や、無料配布の缶バッチが置いてあり、地下に潜るほどに雰囲気を漂わせてくれます。
そして劇場で待っていたのは、ベンチや丸テーブルのある、まるで公園のような風景。
ただその奥には、ピンクのラインと、明るいグリーンのラインの入った、白い建物が……。
この風景からどのような物語が始まるのだろう……。
そう思っているうちに、いつの間にか開演5分前となっていた。
少し前に主宰・久光真央嬢と前説をしていた、今回の出演者でもある中村和之氏が前説を一人で……。
するとさっきまで無人だった彼の背景には、何人かの人がいる……。
丸テーブルで紙飛行機を作って飛ばす少女たち、それを拾う車いすの女性……。
先程まで何気ない景色は、既に物語の世界へと入っていた……。
やがて暗転する舞台上。
物語の幕は上がろうとしていた……。
公演終了後につき、ネタばれ有のあらすじから……。
「カリスマモデル」として一世を風靡した和泉姫香(月野原りん・以下敬称略)
今やその肩書きに「元」がつくほど、仕事が無い状況である。そんな彼女の元に久々に仕事が舞い込む。
元モデルのマネージャー・岡部(田中聡子)、カメラマン・吉田(中村一平)と共に訪れたその場所は……。
「ホスピス」
末期がん患者が「終末医療」を行なう病院だった。
そう……「死」を受け容れた者たちが、最期の時を待つための場所……。
だがそこで待っていたのは「笑顔」溢れる「ホスピス」の患者たちだった。
「ホスピス」のイベントの一貫でファッションショーを行なうため、元がつくとはいえカリスマモデルだった姫香は求められたのだった。
最初は「ホスピス」の患者たちの笑顔に戸惑う、姫香たちだったが彼らとの交流を経て、次第に心を開き、そして理解を深めていく。
一方で患者の家族、友人、様々な人たちの苦悩が描かれていく……。
こうして様々な想いが交錯していく中、やがてファッションショーの幕が上がる……。
ファッションショーでも屈託のない笑顔を見せる患者たち。
白雪姫と七人の小人をモチーフにした進行で、それぞれの「夢の続き」を表現し、活き活きと表現をする患者たち……。
果たして、彼らの思い描いた「夢の続き」とはなんなのか。
そして姫香たちは彼らから何を得るのか。
やがて待ち受ける、彼らの運命とは……。
ハグハグ共和国が贈るヒューマンドラマ……ここに開幕!
……相変わらず、大雑把なあらすじですみません(汗)
ただハグハグ共和国はこの手のテーマを取り扱わせたら、本当にうまいと言うか……。
まず「死」を連想させるテーマは総じて、重い雰囲気になりかねません。
だけど人間生きている以上、いつかは訪れる「死」について、目をそらして生きていく事なんて出来ません。
そんな真面目に考えたら、重くなるようなテーマに切り込んでいって、そこを受け容れる人たちがいるところから物語は始まります。
実際、物語序盤の姫香以下、モデル事務所の面々も実際に患者たちと出会って戸惑っていた部分もあると思います。
もしかしたら劇中、患者側の心境になって観るとその感覚がマヒして「なんで受け容れられないの」と思ってしまうかも知れませんが……。
ただそこは患者の家族たちや、周囲の人々の苦悩や葛藤など心境を語らせる事によって、まだ愛する人たちの「死」を受け容れられない人たちの心境や心情を代弁しているように思います。
要は物語の中でも心情的なバランス感覚が非常に繊細だけど、うまく取れているって事ですね。
正直、過去、この手の題材は多く取り扱われてきたし、また似たような物語もどこかで聞いた事はあります。
だけどなんとなく結末は予想出来ても、最後まで物語から目が離せないのです。
そう……なんとなく分かっていても……。
この物語には多くの人が登場します。
姫香をはじめとするモデル事務所側の人間。
ホスピスを選んだがん患者たちと、その家族や友人。
同じ敷地内の病院にある一般病棟の患者たちやそれに関わる人たち……。
立場どころか健康状態まで何もかも違う人たちが一同に会します。
それでも彼らは皆、今ある「生」を懸命に生き「夢の続き」を夢見て……そしてやがて訪れる「死」と向き合って生きていきます。
そしてラストシーン……。
そこに描かれていたのは今も流れ続ける現実と、そこに残った多くの人たちの想い……。
ハグハグ共和国の作品はこのラストシーンの見せ方が毎回印象的で、今回もその例に漏れませんでした。
そう……例えるなら映画のラストシーンにも似たカタルシスというか……そういうものが流れていき、そして劇場を包んでいました。
……とにかくこのように今回は物語に非常に入り込むような作品のため、照明や音響に対する印象が「いい意味」で少ないです。
ただこういう場合、照明や音響などの舞台効果が非常に物語の進行を邪魔するような過度のものもなく非常に適度だったと言っていいのではないでしょうか。
物語は約1時間50分。
個人的にはあのラストシーンは涙腺が崩壊してやばかったのですが、重いテーマの中にも人の優しさとかが溢れる素晴らしい舞台でした。
さてここからは個人的に気になった出演者でも……と思っていたのですが、絞れない……。
一回しか観ていない舞台では、ちょっと異例ですが……全出演者について語ってみようと思います(爆)
※なおパンフレットの順番とは関係なく順不同で紹介しています。
・和泉姫香……月野原りん(ハグハグ共和国)
「元」カリスマモデル。「ホスピス」のファッションショー開催のために呼ばれる、今回の主人公的ポジション。
ハグハグの副座長にして看板女優、月野原りん様(敢えて「様」づけ)女性にしては長身でスレンダーな体型を活かしたまさに「ハマり役」
今回の舞台の「裏」テーマが(自分の主観ですが)恐らく、彼女の人間的成長だと思っているので、短い時間ながらも姫香というキャラの人間的成長をうまく出していたと思います。
この手の役をやらせたら、最高にうまいと思いながら観ておりました。
・岡部小春……田中聡子
姫香のマネージャーにして元モデル。姫香の事を親身になって考え行動する姿が印象的。
劇中では姫香の一番の理解者というポジションで、姫香の復活を誰よりも願っていたのは、他ならぬ彼女というのが見えてくる。
劇中でほぼメガネだったけど、ファッションショーで見せた、メガネを外した姿も個人的には好きなので、元モデルという設定もうなずける。
姫香同様、彼女もまた劇中を通じて何かを掴んだ一人のように見えました。
・吉田洋弥……中村一平
姫香たちの事務所専属のカメラマン。ファッションショーのみならず、その企画段階のオフショットを撮り続けた人物。
彼もまた劇中のファッションショーを通じて成長したと思われる人物。
台詞などは少ないのですが、その一言、一言が(劇中では寡黙なキャラに入る分)結構重かったりする。
脇役的なポジションだけど、小春とセットで印象に残りました。きっと彼みたいなキャラは欠かせない。
・瀬尾柊平……中村和之(ハグハグ共和国)
「ホスピス」の患者。がんになる前はヒーローショーを主戦場にアクションを生業にしていた。
劇中の患者の中でも一番元気が良さそうに見えながらも、どこか寂しさを背負っている姿が印象的。
ファッションショーの終盤の思うように体が動かないあたりの表現とかは、まさに彼の演技の極致だったのではないだろうか。
動いて良し、演じて良し。ハグハグ共和国が産んだ「ヒーロー」。今回も面目躍如でした。
・高見柚子……窪田悠紀子(ハグハグ共和国)
「ホスピス」の患者。患者の中では過去があまり明言されていないが、ファッションショーでは華麗なるダンスを魅せる。
個人的には「ハグハグ共和国」一のセクシー担当(照)今回もがん患者とは思えない、セクシーな姿が印象的。
一番の見せ場でもあるダンスシーンでも、色っぽさと儚さを兼ね備えた演技を披露。
これからもその美貌を武器に艶やかに舞台を彩って欲しいと思う次第です。
・戸田和歌……ちあき(ハグハグ共和国)
「ホスピス」の患者。夢は歌手になる事と劇中で明言している。
「金濱千明」名義の頃から拝見しておりますが、彼女も年々、演技が大人びていくし、素敵になっていっているんですよね。
母親の秋美(宮本真友美/後述)との掛け合いも非常に場を和ませてくれたし、ファッションショーにおける弾き語りも新たな一面が見れて良かった。
(記憶が確かなら)今回がハグハグ共和国劇団員として初舞台。とてもいい舞台でした。
・小川陽介……藤本忠正
「ホスピス」の患者。がんになる前はとある遊園地でクマの着ぐるみに入っていた。
実は不謹慎ながら劇中で一番、世の男性を羨ましいと思わせたのは彼ではないか?(笑)あんなにかわいい彼女がいるのは反則ですぞ!(爆)
しかしその彼女(=白岡結衣/寺崎まどか)を想い、がんである事を隠していたという点は男視点では分かるし、泣ける……。
ファッションショーでの「クマゴロウ」と、ラストシーンにおける彼の姿はある意味、この物語の象徴とも言える、残酷なまでの「現実」を反映していたと思います……。
・宮代さや……宇田奈央子(ハグハグ共和国)
「こどもホスピス」の患者。いつも一緒にいる三人組の少女の中ではリーダー格。
演じている時はまさにあどけない少女そのもの。他二人の少女を引っ張る、ハツラツとした姿が印象的。
この三人組を観ていると、とてもがんには負けないように思えたし、実際にファッションショーでもすごい元気をもらえた。
そんな彼女のラストシーンはあまりにも残酷に映った……だけどそのラストシーンでの姿も含めて、見事に少女を演じきったと思います。
・大里日和……木原美紗樹
「こどもホスピス」の患者。三人組の少女の一人。
前作「ドローイング」でも非常に気になった役者の一人。前作は鈴木啓子嬢とのコンビが秀逸だったけど、今回は少女三人組。
……で、今回も元気な少女を「最初から最後まで」演じていたと思う次第です。ハマり役……というより、いや彼女に関してはこれ以外無かったと思えるくらいの役。
ラストシーン手前で、一佳(=津田祥子)と同じ運命を辿るのが暗示されていて、正直、それまでの明るさを考えると切ない役柄でした。
・栗橋一佳……津田祥子(リンク・エンタテインメンツ)
「こどもホスピス」の患者。三人組の少女の一人で、大きなクマのぬいぐるみを抱いている。
「クマの娘」と言ったら、この娘の事。決して「クマゴロウ」ではない(爆)
前述の通り、さや、日和との三人組での演技が非常に秀逸。ファッションショーでの夢が「大人になりたい」で「ホスピス」の医師、看護師たちの衣装を着た姿が実は泣ける。
ラストシーン手前で、日和と同じ運命を辿る暗示がされていて、日和同様に切ない役柄。だけど一所懸命生きた少女を全身で演じてくれました。
・松山美桜……伊喜真理(ハグハグ共和国)
「ホスピス」の患者で、「ホスピス」に入って間もない。
ファッションショーには自ら立たず、主に進行役として脚本を書くという役回り。一歩引いた位置で物事を見守るポジションのように見えた。
また自分の亭主(=松山武史/長谷川和輝)を想いやるなど、一人の患者としての前に、一人の女性、妻としての存在感も際立った。
他の患者とは若干立ち位置が違ったような、だけど全てを包み込むような……どこか物語全体を象徴する役回りだったように思います。それにしても本当に演技うまいよなぁ……。
・吉川直綺……石川健一(類プロダクション)
瀬尾の後輩のアクション俳優。「ホスピス」にしょっちゅう顔を出して笑顔を振りまいている。
瀬尾と吉川の先輩後輩コンビは、王道中の王道の熱い二人なんですよ……ファッションショーなのに、ヒーローショーさながらの殺陣の数々は見事。
常々「ハグハグ共和国」は「女傑」と表現してましたが、今回は瀬尾&吉川の熱い「男の友情」も描かれており、重いテーマの物語の中で一番颯爽としていたと思います。
彼が前作「ドローイング」ではダメな亭主役だった事を、劇中はすっかり忘れていました(爆)
・川島初音……鈴野歩
柚子のダンス仲間。ファッションショーでは柚子と息の合ったダンスを披露する。
他の(パンフレットでいうところの)「ファミリー&フレンズ」枠の中では、ちょっと異色な存在。劇中ではあまり彼女だけ掘り下げていない。
台詞はほぼ無い。柚子との再会でハイタッチをするシーン、ベンチで語り合っているシーン(台詞なし)……そしてファッションショーで共に踊るシーン。
あまり台詞は無い。だけどそれがそれ故、印象に残った。言葉はいらない。きっと彼女たちの間にはダンスがあればいい。そんな役柄を見事に表現していました。
・戸田秋美……宮本真友美(新宿ブルドッグ)
和歌の母親。いつも明るく娘の和歌に接する。
いわゆる「友達親娘」みたいな感覚で最初は接していると思えた。だけど物語の随所で「肝っ玉母ちゃん」の存在を発揮する。
美桜の亭主・武史に親身になって相談に乗ったり、また娘の病状を知りながらも「ホスピス」を選んだ娘を後押しする姿など、まさに日本の「母」そのもの。
ファッションショーで途中で歌えなくなった和歌に対して、子守唄を歌うシーンは劇中でも屈指の名シーンかと。
・白岡結衣……寺崎まどか(株式会社ワルキューレ)
陽介のバイト仲間……で、彼に好意を寄せている。
前々作「星の王子様」でかわいらしい点灯夫から一変して、今回は正統派ヒロインに!……いやむしろ、彼女の活動方面的には元々、こっちが本来の姿なんだろうけど……。
登場時は恐らく陽介の重い病状を知らなかったものの、全てを受け容れて「クマゴロウ」扮した彼に風船を手渡すシーンは、観ている多くの男性がときめいたと思う(照)
またラストシーンで陽介と寄り添う姿も印象的……ちょっと観てて切ない役柄でしたけど、それが良かった。
・松山武史……長谷川和輝
美桜の夫。物語の序盤は美桜が「ホスピス」に入院した後で反対に回っていた。
恐らく劇中を通して、最も人間くさかったのは彼だと思う。大切な妻が「死」を受け容れる事に我慢ならなかったのは気持ちは家族としての「苦しみ」を表現していたと思う。
劇中を通じて、妻の意思を尊重するようになっていく過程など……自分は妻がいる訳じゃないけど、なんとなく共感みたいなのを覚えた。
彼の熱演なくして「松山夫妻」は成り立たなかった……そう感じました。
・原川真知……戸塚まるか(ハグハグ共和国)
「ホスピス」にボランティアで従事している。今回、ファッションショーのオファーをした仕掛け人でもある。
この人がいなければ、今回の話は成立しなかった……という意味ではキーマンの一人。
冒頭の姫香たちの登場シーンや、見送るシーンなどに大抵、立ち会っている。
過去の公演でも短い出番の中で、劇中でのパイプ役として機能している事が多いと感じた方ではありますが、今回もその感はあります。
・飯田良寛……小松聖矢(ハグハグ共和国)
「ホスピス」の研修医。まだ若い故、方々から突っ込まる事も多々ある。
劇中見た限り、非常に「愛されキャラ」。言い方悪いけど、いわゆる「若造」の典型例。だけどそれを嫌味なく演じているからいい。
ファッションショーでは小春(=白雪姫の魔女)と組んで、白雪姫の「鏡」を演じていましたが、個人的にはこれは好きだった。
ハグハグ共和国に入団して、まだ日は浅いと思いましたが、毎回、着実に成長している姿が垣間見えるので、これからも頑張って欲しい。
・横田佐保……鈴木啓子
「ホスピス」の看護師。劇中のファッションショーでは司会を務める。
すっかりハグハグ共和国常連の客演と言って過言ではない鈴木嬢。毎回色んな役柄を演じている印象があるけど、今回は看護師。
劇中のファッションショーの司会が、彼女の今回最大のハイライトと言って過言では無いけど、本当にうまいと感心させられました。
なんか本当にこういう看護師いそう……と思わせる好演っぷりが光りました。
・青山佳吾……高橋良吉(ろ~かるといしょっぷ)
「ホスピス」の主治医。患者たちの事を暖かく見守る医師。常に白衣のポケットに林檎を入れている。
劇中の中で一番、現実的であり、だけど尚且つ、一番「死」というものに向き合っているんじゃないか……そう思えました。
ファッションショーなどで見せるコミカルな描写と、患者やその家族と向き合おうとするシリアスな描写と共に印象的。
劇中終盤の林檎の秘密について語る時は、どこか男としての寂しさも漂わせていたのも個人的には印象が強かったです。
・大塚百合……下平久美子(類プロダクション)
「ホスピス」がある医院の院長で外科医。娘の水恵(=足立涼子)はがんに冒されている。
一人の母として、一人の医者として……娘に何をしてあげられるのか……その葛藤に悩み続けた人物だったように思います。
本当に難しい役どころだったと思います。院長としての威厳を静かに見せたと思えば、終盤、水恵が遺したスケッチブックを見て涙する母としての一面も……。
「ドローイング」の母親役とは違った意味で難役だったと思いますが、その存在感だけでキャラが成立していたように思います……脱帽。
・木部成美……菅野真紀(ACファクトリー)
医院の看護師長。主に水恵の面倒を見ている。劇中のファッションショーの時は横田と共に司会。
実は個人的に劇中で一番気に入ったのは「木部師長」最初は堅物の師長と思いきや、後半になるにつれコミカルな一面が……。
まさかファッションショーでアクションシーンに加わるとは(しかも強い)、ラストシーンでもボクササイズの描写があるなどツッコミどころ満載(笑)
だけどテーマが重いからこそ、師長のような人の苦しみは分かりつつも明るいキャラクターは必要だったように思います。
・大塚水恵……足立涼子
大塚院長の娘でがん患者。一般病棟で治療にあたっている。姫香のファンだったが劇中で帰らぬ人に……。
劇中で唯一、はっきりと「死」が描かれた人物。そして「死後」も百合の側に寄り添う姿が見えている……。
恐らく劇中でもっとも「死」を……それでも残る想いを体現したのは、間違いなく彼女。
百合が彼女の遺品のスケッチブックを見ている時、静かに寄り添う……死後の彼女の姿は頭からどうしても離れない。
・汐里……神馬彩
院内で水をやったりしている人物。だが誰にも見えている様子が無い……。
その正体は青山のがんで亡くなった妻。劇中の登場人物には、途中で亡くなる水恵以外、誰にも認識されていない。(水恵も死後は同じようになるのだが)
だが青山が妻の事を話すシーンでは真正面に座って話を聞くなど、静かに夫を、そして「ホスピス」の事を誰よりも暖かく見守っているように見えた。
既に登場時から亡くなっているという役だが、恐らく青山のエピソードは彼女なくして語れないだろう。
……全員分書いたら疲れた(爆)
こうして書いてみると、皆さん、本当に1時間50分の中でどれだけ熱量の高いものを作り出そうとしていたか分かりますね。
でもよーく考えたら、登場人物24人だ……。
こんな多かった!?
……と思いつつ、だけど24人全員の感想がそれなりにスラスラ出てくるのだから、どれだけ凄いんだと思う次第。
これも一重に一人、一人を丁寧に掘り下げて書いた、脚本であり座長・久光真央様の実力だと思う次第です。
でも毎回「ハグハグ共和国」は人物の描写が丁寧で、一人として無駄な登場人物がいないのが凄いと思います。
正直、もっと登場人物は削っても、成り立つ物語だとは思うんですが、こうして振り返ると、誰一人欠けても物語が成り立たないという……。
どんだけ計算されているんだ!……と思う次第です。
いや……今思うと、もう一回観ておくべき舞台だったかな。
恐らく自分の感想ももうちょっと違ったものになった可能性もあります。
劇中の台詞も名台詞が多いんですけど、それをしっかり思い出せない自分がもどかしい。
ただ姫香の「笑って!」「あなたの夢を聞かせて」は……めげそうになった時、心の中でつぶやいてみるといいかもな……って思う次第です。
なおタイトルの「Infinity」意味は「無限大」
……そうこの舞台は限りある生の中で、そのの向こうにある「無限大」を描いた作品……そう解釈しております。
今年は観劇の回数を相当数絞っていますが、この劇団だけは観ておきたいと思えたし、今回も琴線に触れました。
「ハグハグ共和国」の次回作を楽しみにしつつ、これからの出演者、関係者各位の今後のご活躍、ご健勝を祈っております。
・ハグハグ共和国・公式サイト↓
http://hughug.com/index.html