【舞台観賞】「不思議の国の3人のアリスとハートの女王」(CAPTAIN CHIMPANZEE) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※9/2~9/6公演。既に公演は終了しています。

9月に入りました。
先月までの暑さはすっかりなりを潜めて早くも秋の気配が漂う昨今……皆様、いかがお過ごしでしょうか。
過ごしやすくなった反面、体調を崩しやすい日々が続いています。
そんな自分も……ええ、至って健康体です(笑)

さてそんな9月最初の観劇にお伺いしたのは、CAPTAIN CHIMPANZEEさん。
気付けばほぼ毎公演お伺いしておりますが、本公演は昨年11月以来……結構、久々です。
そんな訳でここの劇団といえば、自分と同郷の「小さな大女優」長井柚嬢が毎回のように客演で出演していますが、彼女を拝見するのも非常に久々。
それこそ昨年11月以来ですねぇ……。

そんな訳で久しぶりの劇団と、久しぶりの女優という組み合わせが待っている今回の公演。
今回拝見したのは「不思議の国の3人のアリスとハートの女王」という作品。

……まぁいかにもキャプチンさんらしいタイトルというか(笑)
さぁ今回はどんな物語が展開されるのか……。

期待に胸を膨らませて、会場の池袋・シアターグリーン BATH THEATERへ。
一部出演者が客席の案内をして雰囲気を早くも作り出しています。
パンフレットを読みつつ、キャプチン名物「ひまつぶ紙」で遊んでいると、キャプチン恒例抽選会。
毎回、ここの劇団、こういうところのサービスは最高だと思う訳ですよ(笑)

そんなこんなでいい雰囲気の中、いざ本編開始となります……。
公演終了後につき、ネタバレ有のあらすじをば……。


皆が知っている「不思議の国のアリス」の世界……。
ハートの女王(池上映子・以下敬称略)は、国民や部下である兵士に対して意地悪を働いていました。
そんな女王に対して、国民たちの不満は徐々に高まっていきます。

しかしこの世界には肝心な人物……そうアリスがいない。

しかしある預言書にはこう書かれているのです。

「3人のアリスが現れる」

本来、一人しかいないはずのアリスが何故、3人?
やがてハートの女王と国民、更には本来物語に無いはずの国や、登場人物まで現れて「不思議の国」は一つの騒動に巻き込まれていく……。

果たして3人のアリスの正体とは!?
これは夢と現実の狭間の、ちょっと不思議な物語……。


今回はあらすじがちょっと難しい。
ネタバらししてしまうと、実はハートの女王が君臨している「不思議の国」(劇中では「ハートの国」とも)が、そもそも「夢」の世界。
実は現実世界で、池上嬢演じるハートの女王は「鳩子」というコンビニの店長という立場。
なお殆どの「夢」の登場人物は、現実世界でも彼女の家族だったり、職場の同僚、もしくは常連客という立場の人が殆ど。
しかし一部のキャラクターは「夢」の住人だったり、或いはこの世の存在じゃなかったりする。(この世の存在じゃない事がこの物語上、非常に重要なポイントでもある)

その「夢」の世界はどうして出来上がったのか……というと、さすがに内容全バラシ(笑)なので、どうしても気になる方はキャプチンさんのDVDを拝見するといいと思う(笑)

こうして思い返してみると、意外と面白い物語の構成にはなっている。
ただこれはおとぎ話の類ではなく、言ってしまえば一種のSFファンタジーの要領で観た方が楽しめるかもしれない。
正直「不思議の国のアリス」の世界観がガチンコで好きな人には、賛否別れる内容だろうし、実は極端な話「不思議の国のアリス」をモチーフにしないでも成立する物語になっています。

それ故、きつい事を言ってしまうと、今回の作品、そこまで面白くなかったです。
なんかねぇ……「不思議の国のアリス」を当てはめた。そんな感じの物語なんです。

個人的にこの物語における時計ウサギ(滝澤由舞)、チェシャ猫(上素矢輝十郎)など一部登場人物(?)のバックボーンとかは結構好きなんですけど……全体的に魅力的な登場人物が少ない。
(出演者個々の事ではなく、あくまで劇中の登場人物としての魅力についての言及なので、そこは勘違いしないでください)
やっぱりねぇ……ハートの女王の正体がコンビニ店長じゃ、そりゃ魅力ないですよ(爆)
特に現実世界の登場人物と兼ねているキャラクターは、殆どがこれで魅力が半減してしまっている。(一部例外はいますけど)
これは魅せ方と演出の問題だと思います。
前作「棚からハムレット」では等身大の各登場人物の魅力を、劇中劇を通じて際立たせるという非常に上手い手段を取っていただけに、この登場人物の演出は……はっきり言って失敗だと思います。

物語の構成については、それでも「夢」と現実世界の二重構造をなるべく混乱させないように丁寧に進行していたし、うまく作られていたと思います。
ただその物語もラストシーンで腑に落ちなかった。非常に微妙な終わり方をされた感じ。
最後の最後で、こういう演出になってしまう?……というガッカリ感。
どうせならもっと分かりやすい、ハッピーエンドじゃないとしても、何か達成感や充実感を満たすような物を見せて欲しかった。
正直言って、このラストシーンで(登場人物に魅力が無いながらも)成り立っていた、せっかくの物語が一気に台無しになった感があります。

上演時間が2時間10分というのも、ラストシーンの印象の悪さで、ただ長いという印象。
これまでのキャプチンさんは長いなら、長いなりに最後は何か一発、大きな感動とか呼び起こしたりしてくれたのに、今回はそれすら無かった。
昨年2月の「ピノキオショー」は若干長くて冗長だったけど、最後で一気に持って行かれた感満載だったのに……。

とにかく今回の公演は、ちょっと残念だった。
昨年公演の2作品がそれなりに見所があった分、残念さが際立つ内容でした。


それでも各出演者の演技となると話は別。
皆様、非常に上手くて、個人的には満足しています。

池上映子嬢の安定の池上節ともいうべきアイデンティティ。
川瀬ゆい子嬢の変幻自在のお姉さま的ポジショニング。
宮下真氏のイケメンと、ちょっと残念なところの隙間的な演技。

……このへんはもう鉄板で安心して観ていられます。

個人的に一番評価したいのは、時計ウサギの滝澤由舞嬢と、チェシャ猫の上素矢輝十郎氏。
このコンビがこの物語一番の見所だったと思う。特に後半、物語を主に回したのは彼らですしねぇ。
二人(?)とも本当にいい表情しているし、活き活きしているんですよ。
ぶっちゃけこのコンビに、2番目のアリスとして登場した上村琴嬢がいなければ、この作品……もっと目が当てられなかったかもしれない。
そういう意味では、今回、彼らの演技を観れただけでも(嫌らしい言い方すると)元は取れたと思っています。

それとお目当ての長井柚嬢。
彼女が演じたのは「夢」の世界にあるダイヤの国の女王。
物語全体の演出にダメ出しした自分でも、彼女の登場の仕方、演出についてはいいと思いました。
……というか、キャプチンさんが彼女の良さを分かって、そしてうまく登場をさせていると思いました。
出番はそこまで多くないけど、物語全体を振り返る時「あぁいた」って思い出せるキャラクターに仕上がっていました。
それにしても、ちょっといやな感じを醸し出しつつ、それでいてどこかかわいらしさも残している。
久々に演技を拝見しましたが、昨年の銀河薫子(棚からハムレット)同様、演技の幅が広がりつつあるのを彼女からは感じました。


……このように出演者の皆様の技量に関しては不満はありませんでした。

ただ今回は厳しいけど、面白くなかった。
申し訳ないですけど、それに尽きます。

来年2月に再演を上演するみたいですが、次回の「新作」が面白い物である事を願っております。
乱文、乱筆、失礼致しました。

・CAPTAIN CHIMPANZEE・公式サイト↓
http://capchim.com/