【舞台観賞】「GHOST SEED ~It's Wonderful World」(カプセル兵団) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この舞台は2/26~3/1まで公演された舞台で、既に終了しています。

今年に入り観劇のペースが激減していますが、元気に過ごしています(笑)
今年は夏場に部屋の更新も控えているのでねぇ……なんて世知辛い話は置いといて……。

そんな中、今年に入って(ようやく)2回目の観劇です。
もっとも前回が、厳密には「観劇」というよりは、投票制バトルみたいなものだったので「観劇」という感覚にあまり無いのですが(笑)
しかしこのまま行くと月一ペースですな。
4月のジャンベルまでは、こんなスローペースになりそうです(笑)

そんな訳で今回、お伺いしたのはカプセル兵団の舞台「GHOST SEED」となります。

この観劇レポートだと、青木清四郎氏の名前が良く挙がっていますし、先月の「劇王」も彼(と伊喜真理嬢)をお目当てに観に行っているのですが……。
カプセル兵団の舞台を拝見するのは、実は意外にも2回目です。

前回が2012年の「ゾンビ×幽霊×宇宙人『オール恐怖大行進!!』」という舞台。
しかも「バカバージョン」という、とんでも無いバカな内容のものでした(笑)

しかし今回の内容はとってもそんなバカな内容なもの……ではなく、とっても真面目(と言ったら失礼ですが)なストーリーと聞いています。
一体、どんな舞台だったのか……。

会場は池袋シアターグリーン・BIG TREE THEATER。
まず受付を終えて、劇場に入るまでの廊下に目が行く。

作品のワンシーンを再現したジオラマが我々客層を出迎えてくれます。
このジオラマが我々を物語の世界に一気に引き込んでくれます。
また8年前の初演、6年前の再演時の写真がところどころ飾られています。
実はこの「GHOST SEED」という作品、今回で再々演となります。

こうして物語の世界観が散見される廊下を通り過ぎると、やがてカプセル兵団の過去公演のフライヤーがあったり……。
実はカプセル兵団も設立15周年。
過去の作品もこうして振り返る事が出来る、いわばカプセル兵団のギャラリーがここにありました。

物語の本編に入る前に、すっかり物語の世界観に浸り席につき、頃合が良いところで前説。
主宰の吉久直志氏と北出浩二氏による前説。
諸注意と劇中に盛り込まれている数々の小ネタについて言及し、いよいよ幕が上がるのを待つのみとなりました。

予定よりやや遅れて、いよいよ開演となります。


公演終了後につきネタバレ有のあらすじをば。

これは5本の世界樹が全ての命を育んでいる世界の話……。

5本ある世界樹の一つが枯れようとしていた。
世界樹は枯れる前に一粒の種を飛ばし、やがて根を下ろすのだが、その種が動く人形の手により盗まれ行方知れずとなってしまった……。
それ以来、人形は「悪魔の使い」として人々から忌み嫌われる存在となってしまい、やがて世界中の人形が壊される事となった……。

それから三年の月日が流れ……盗まれた世界樹の種は見つからず、また物語が始まるより前に枯れた世界樹も未だ新たに芽吹く事なく、世界は2本の世界樹を失ったままだった。
森は枯れ始め、生態系も危険な状況へと進んでいた。

そんな最中、世界中を旅している「綴り師」コウヤ(黒田勇樹氏・以下敬称略)は森の奥に「お化け屋敷」があるという噂を聞く。
世界を旅し、その出来事を絵に起こす事を生業とするコウヤは、好奇心の赴くまま、その「お化け屋敷」に向かう。
そこで待っていたのは、サクラナ(片倉彩)と名乗る女と、奥から現れた……三体の動く人形、エン(青木清四郎)、トワ(瀬名和弘)、メグル(中山泰香)だった。

サクラナはその動く人形の主「人形師」ゲルマ(伊藤栄次)を探しており、またその三体の人形は旅に出たゲルマの帰りを待っていた。
しかしいつまで経っても帰らないゲルマを探すより、探しに行く事をコウヤは提案する。

……こうして三体の人形たちは外の世界に旅立つ。

この物語は三体の人形たちの「生きた証」の物語である。


うん、相当端折っています(笑)
これで序盤。

序盤だけ見ると、コウヤが主人公……と思える展開だけど、彼の立ち位置は決してそうでは無い。
ただ物語全体を語る上で絶対に欠かせない人物。
もしこの物語を小説に書き起こすなら、彼の一人称で語るべきような内容になっている……と推察される。

そういう意味ではこの物語、特に主人公はいない。
それだけ各登場人物の個性が強く、またそれぞれの登場人物に与えられた使命なり、命題なりが強く描かれている。

前述のサクラナは、当初、正体不明の謎の女として描かれ、ゲルマを探している事以外、真の目的は伏せられている。
やがて物語を進めるうち、カラクリカ国の王女である事が分かる。
そしてゲルマを探している理由も、母であるエリカ女王(國崎馨)を救うためという事が分かる。
しかし母の助けに何故人形師が必要か……というところについては、後述するとして、物語を進めるうち当初の目的は果たす事はなくなる。
だが彼女が本当にしなければならない事、そして使命に目覚めていく……という筋書き。

このように視点を変えれば、サクラナの物語とも取れるし、また三体の人形たちも物語を進めるうちに、自分たちの使命というものに目覚めていく。
一方、樹木医・イカルガ(羽村英)のように自分の使命に忠実な人物など、既に与えられた使命を全うするような立場の登場人物もおり、物語にメリハリをつけている。

こうして見ると、王道を踏襲したファンタジーものの感動巨編……と思いがちだが、そう思ったら大違い(笑)
この劇団の特色なのでしょうが、物語の本筋に全く関係ない小ネタをガンガン盛り込んでくる(笑)
殆どが、かの有名な「キン肉マン」のネタなんですが(笑)マニアック過ぎて分からない物もある。
劇中で堂々と「マイナー超人シリーズ」と称して、オメガマンの必殺技「オメガカタストロフ・ドロップ」を再現するなど、知らない人は全くついていけないくらい自由である(笑)
恐らくこの小ネタ、無くても物語の進行上、全く問題ないし、むしろ上映時間長くしている観点からすればいらない(笑)
だけどこれが好きな人にはきっとたまらないだろうし、物語の内容とは「別腹」として楽しめる……可能性もあるかと(笑)

そういう意味では小ネタの真骨頂は、日替わりゲストではないかと……。
本公演では山の海賊・ブソーという役がありますが、ここが日替わりゲストになっています。
自分が観た初演では、植村喜八郎氏が登場。
かつて戦隊物「超新星フラッシュマン」でグリーンフラッシュで活躍されていた方ですが、劇中では台詞の中のもフラッシュマンネタが盛り込まれ、極めつけは変身ポーズ披露。
これにはリアルタイム世代の客層も(本編とは全く関係ないけど)拍手喝采。
こうした遊び心満載な演出の数々で、我々を楽しませてくれました。

また演出面も非常に特徴的。
場面の切り替えの時、暗転に殆ど頼らず、風の音のような効果音と共に去っていく演出は面白かった。
効果音と言えば、人形たちの動き。
三体の人形たちが手を上げたり、首をかしげたりする動作など、細かい動作をする際、木と木がこすりあうような効果音がしていたけど、あれ合わせて出していたとすればかなり細かいけど、凄い仕事をしていると思いました。
(その逆だとしても、演じたお三方の技量が凄いって話にはなりますが……)

後は背景がほぼ変えず、パフォーマーの皆様で背景なり、障害物なり表現していた点は超秀逸。
今回、特に役が無いパフォーマーの方が8名いましたが、場面によって様々な動きを見せてくれました。
彼ら、彼女らは時に木になり、森になり、火になり、家になり、船になり、オメガマンの餌食になり(爆)、群集を演じたり……この表現が適当か分かりませんが、小学校、中学校の組体操、マスゲームの進化版がそこにあったように思います。
とにかく人の動きだけでここまで表現できた事が凄い。
舞台って表現一つでここまで見せられるし、見ている側にイマジネーションを与えられる……そう感じました。

ちなみに上演時間は2時間10分。
上演開始が遅れて、苛立っていた事をすっかり忘れるくらい、圧倒的で濃密な時間がそこにはありました。


さて気になった出演者でも。
個人的に面識のある方は後回しにして……。

まずはコウヤを演じた黒田勇樹氏は挙げないといけないでしょう。
以前はテレビドラマや子役で拝見する機会がある方で、10代から20代前半の頃は男ながら、かなりの美形と思ってました。
確か記憶が確かなら、もう30前後だと思いますが、今でも十分美形ですなぁ(笑)
もちろん美形なので舞台の上でも映えますが、普通に演技が上手い。そりゃ彼のキャリアを考えたら当然なんでしょうが……やっぱり見ててオーラが違うと感じました。
本当の意味で一流というか、一線級でやってきただけの事はある感心しました。(むしろ私が偉そうに語るなと……)

次にサクラナの片倉彩嬢。
序盤の謎の女としての登場から、中盤で見せる弱さ、そして終盤にかけて見せる勇ましさと、この物語で一番人としての成長が見て取れるキャラでした。
一つの物語で色んな側面を見せないといけないという意味では、難しい役柄だったかもしれませんが、それをしっかり演じきったところは素晴らしいと思います。
一人の少女が、一人前の女性として自立していく姿を垣間見たように思います。

個人的に気に入ったのが、テマリを演じた工藤沙緒梨嬢。
役柄的には女王に仕える盲目の侍女なのですが、この方の演技が凄い印象に残った。出番も他の出演者と比べても多く無い……はずです。
だけど何にやられたってラストシーン。劇中、ほぼ目を瞑っている彼女が、最後の最後に目が開けるシーンがあります。
この舞台を観ていれば、それが何を意味するのか分かるのですが……この彼女の最後の演技がキッカケで、感動のラストシーンが容易に想像できるのです。
そして自分はこのシーンで涙腺が崩壊してしまいましたが、間違いなく彼女の演技無くしては、感動のラストはなかったと思います。
本当に素敵なシーンでした。……あと、この劇中で一番、好みの女性のタイプというのもあったかも(爆)
(二役で演じていた嘘つきインコもいい味出してました)

さてここから面識のある方でも……。

チチュー王子を演じた松下勇氏。
今回は彼の素晴らしく三枚目な部分と、少しだけ見せる二枚目な部分にやられた。
役どころは偶々、舞踏会に現れたサクラナに一目ぼれしてしまう、アイワナ国の王子様。ナルシストで自己中心的な、てっきりギャグキャラだと思っていました。
いや実際、あの衣装は誰がどう見たって、ギャグキャラにしか見えない(笑)ちょうちんブルマっぽい白いパンツに、白いタイツ……ね(笑)
しかし中盤、サクラナの目を覚まさせるためにビンタの一発と、それまでの彼からは想像出来ない男前な台詞で印象激変。
劇中でも最後はサクラナといい感じの仲になるという、美味しい役どころ。
これまでの彼の舞台を何度か拝見していますが、年々、いい役者になっていると思います。
軽いノリとしっかり締めるところは締める。彼ならではのメリハリの良さが目立ってました。

エリカ女王を演じた國崎馨嬢。
実は今回の舞台を熱心に誘って下ったのはこの方。
彼女が演じるエリカ女王はカラクリカ国の女王様……なんだけど、実はその正体は人形だった!という驚きの役柄。
なんで彼女が作られたかという経緯はここでは割愛しますが、サクラナが劇中で人形師・ゲルマを探していたのも活動の限界が近い彼女を直すため。
人形でありながら、母としてサクラナを、、女王として国を守り続けた。
彼女の最期は、エリカ女王が人形と知った(人形を恐れる)群集の手によって無残に壊されるという、あまりにも惨いものだったが……。
ただその最期……群がる群衆に向かって「我は女王ぞ!」と(いう趣旨の内容の)啖呵を切って、群集に向かっていく姿は、あまりに堂々としていて、女王としての威厳に満ちていた。
このワンシーンだけでも鳥肌が立ったし、彼女を観に行った価値は、これだけで十分過ぎるほどでした。

エンを演じた青木清四郎氏。
三体の人形のうちの一体で、敏捷性と好奇心に長ける人形を演じていた。
これはトワを演じた瀬名和弘氏、メグルを演じた中山泰香嬢にも言えるのですが、動きがまんま人形でした。
例えるなら糸が無い操り人形。しかしダイナミックな動きも多々あり、人間離れした動きの数々を見事に再現していました。
台詞も一つ一つ、敢えてたどたどしく人形らしさを出していました。
物語が進むにつれ、彼ら三体の人形の一挙手一動が愛おしく思えてきて、ラストに三体の人形が選んだ決断には……なんとなくオチが読めていても感動を覚えました。
物語の最後の最後まで立派に人形を演じきった清四郎氏……素晴らしいと思いました。

……その感動の舞台終了後、普通にエンの姿のまま物販コーナーで売り子をしていた清四郎氏(及び瀬名氏、中山嬢)を拝見して「あ、やっぱ人間だよな」と思いました(笑)


まぁ以上となります。
ちなみにタイトルの「GHOST SEED」とは、劇中の世界樹の種の事を意味します。
実はこの種を動力源にエンたちや、エリカ女王は動いていた訳ですね。

それにしてもアクションが凄いと評判の高いカプセル兵団。
漫画原作物も数多く手がける劇団としても名高いですが、ガッチガチのファンタジー作品で、前評判に違わぬ劇団のカラーを崩さすやり切ったのは見事だと思います。

次回公演も漫画原作物ですが、機会があれば拝見したいと思います。
……小ネタにも大いに期待して(笑)

・カプセル兵団・公式サイト↓
http://kapselheidan.com/next.html