【舞台観賞】「砂のカケラを取りに行く」(演劇企画ハッピー圏外) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

11月に入りました。
気がつけば今年も残り二ヶ月。早いもんです。
気になったので、今年観劇した舞台の本数を調べたところ10月終了時点で11本……。
月一ペースを超えていたか(笑)

でも昨年(2011年)一年間で生で観た舞台は16本だから昨年よりはペースが落ちているなぁ(笑)
もっとも某P氏には遠く及ばない数字なのでしょうけど(笑)

そんな訳で今年12本目の観劇のレポートをば。

今回、観劇したのは演劇企画ハッピー圏外「砂のカケラを取りに行く」です。
ここの劇団は昨年6月公演「音無村のソラに鐘が鳴る」以来、2回目になります。
その昨年6月の「音無村~」が本当に良かった。
当時のブログでも絶賛していますが、今、振り返っても、2011年自分が観た舞台の中では一、二を争うほど素晴らしい舞台だったと思います。

まぁ今回の舞台のレポート前に気になったら、どうぞ↓。

・【舞台観賞】「音無村のソラに鐘が鳴る」(演劇企画ハッピー圏外)
http://ameblo.jp/hitode0014/entry-10922219355.html


そんな自分の中では大絶賛の演劇企画ハッピー圏外ですが、でも結局はお目当てがいるから観に行く訳で(汗)
まぁ今回のお目当ても、前回同様、ジャングルベル・シアター主宰、浅野泰徳氏だったりするんですけどね(笑)

前回も浅野氏の使い方が大好きでしたけど、今回の使われ方は……?

そんなこんなで会場の下落合・TACCS1179に到着。
受付を済ませていると、どっかで聴いた事のある低音の女子の声が……。
声の方を見てみるとジャンベル劇団員・マッシュこと升田智美嬢でした(笑)

軽く挨拶をしてから、いざ会場入り。
自由席なのに偶然、智美嬢と席が近い自分。
開演前の一時、ちょっと雑談などなど……いやー美人さんとのトークは弾むなぁ……えへ(照)

あとお手洗い行ったら、同じくジャンベル劇団員の西村太一氏とも遭遇(笑)
こちらも軽くご挨拶。
お手洗いから帰った後、最前の席に通される太一氏を、実は遠くから見ていた事を彼は知る由も無いだろう……(笑)

そんなジャンベル劇団員の皆様との和気藹々(?)とした触れ合いの最中も、ステージの上ではずーっと霧吹きを吹きかけている御仁が……(笑)
入ってくるお客様に対して、愛想良く挨拶しているのだが、どっかで見た事あるような……。

それもそのはず。
この霧吹きをかけている御仁こそ演劇企画ハッピー圏外の主宰、内堀優一氏その人だ。
開演時間間際になって、前説を始める内堀氏。

……そっか。もうこの会場にいた時から、この舞台は始まっていたんだ。
前説の前後でそんな事を思ったりなんかしました。

前説では今回の脚本が出来上がった前後に、日本の直面した状況があまりにタイムリーなので驚いた風な話をされておりました。
ただタイムリーな出来事に流されず、社会派演劇では無く、あくまで娯楽としての舞台を書きたかった……との趣旨を述べて前説は終了となりました。

ほぼ何も無いシンプルな舞台。
奥に少し高いところがあるだけの……霧吹きのおかげで、乾燥していない会場がふっ……と暗くなって、いざ物語は始まります……。

公演も無事、終了したのでネタバレ有りモードで感想を書きたいと思います。
まぁ今回の観劇レポートもそれを狙ってこの時期の執筆なのですが(笑)



簡単なあらすじ。

物語は海上自衛隊・横須賀基地から始まる。
4年前のある事件がキッカケで操縦桿をまともに握れなくなった潜水艦操縦手・川島(大和田悠太・以下敬称略)は自衛隊を辞めようと辞表を提出したが保留されている。
だが彼はここ最近、何故か死神(大串潤也)が見えるようになっていた。

そんな最中、市ヶ谷駐屯地からとある実験のために女性幹部・日暮里(丸山朋子)が、木田一佐(高木順巨)そして木田の孫娘・鈴子(彩島りあな)らを連れて訪問していた。

その実験内容とはなんと木田の孫娘・鈴子を連れて、これから潜水艦で海洋に出るというものだった。
あまりの無茶振りに潜水艦艦長・田辺二佐(家紋健大朗)は難色を示すが、手筈は整っており民間企業が作成した旧型潜水艦が既にスタンバイされていた。

上層部からの命令という事もあり、渋々了承する田辺。
休日という事もあり、基地に残っていた新人士官達と共に、川島も呼ばれて潜水艦を操縦する事となる。
こうして必要最低限の人員と民間人、そして本来なら関係ない一般人を乗せて潜水艇は川島の操縦で出航する。

久々の操縦ながら川島の操縦の腕前は錆びてなく潜水艦は難無く目的地付近に到着。
早速、鈴子の実験が開始される。
その実験内容とは、耳が非常にいい鈴子は潜水艦のソナーとしての潜在能力が非常に高かった。
そこで実際に海洋に出てその能力をテストするというものだった。

実験の結果、鈴子のソナーとしての素質は凄まじく、想像を遥かに超える成果を挙げた。
しかし……その鈴子の耳は、本来、そこに有り得ないものまで探知した。



……それは潜水艦だった。
そしてその潜水艦から魚雷が発射された!

川島たちの運命は!?
謎の潜水艦の目的とは!?
そして川島にしか見えない死神の目的とは!?



そんなあらすじ。

これだけだと話の全容が見えてきません(笑)
かなり端折っていますが、実はここまででほぼ全ての登場人物が登場しています。

しかし一人だけ……物語前半から存在そのものの不自然さが浮き彫りになる人物がいます。

実はこの人物がキーパーソン。

正体は中盤にかかるあたりであっさり判明しますが、彼と川島、そしてそれにまつわる死神の存在無くして、この物語は語れません。

ただ不自然という意味では、このキーパーソン以外にも一見「ネタキャラ」としか思えない登場人物多数(笑)
だけどこの「ネタキャラ」達が何故か有り得ない状況において大活躍(笑)
しっかり主人公サイドに尽力しています(笑)

そして一方で物語の深層なのですが、要するに「敵」の正体がテロリストです。
そのテロリストの目的が……確かに時期的に……他国と干渉した経緯が今年の夏あった経緯もあり、もう少し公演の時期が早いとタイムリー過ぎでしたねぇ(汗)
しかも実際、妙にリアリティがある(笑)

だけどなんだろう……この妙なリアリティと、フィクションとの落差は(笑)
でもこの一見すると反発し合う二つの属性が、物語が破綻する事無くきちんとまとめているから凄いと思う。

これは主宰で作・演出も手がけている、内堀優一氏がライトノベル作家であるバックボーンが活かされていると思います。
ライトノベルに対する偏見では無いですが、通常有り得ない設定とか、突拍子も無い展開こそ、ライトノベルにおける醍醐味の一つだと自分は思います。
昨今のヒット作でも、現代を舞台にした、実際には有り得ないような物語が数多くヒットしています。

内堀氏は今回の舞台では、現代劇というオブラードの中にライトノベル特有の要素を詰め込んでいる……。
だから毎回、あの痛々しいキャラ筆頭であるデンキマンと血吸いコウモリが物語の中で活きる(笑)そう思います。
しかし登場人物が誰一人として、無駄な役どころじゃありません。その技量は素晴らしいと思います。
これも内堀氏がライトノベル作家であるからこそ作れる脚本でもあり、特徴でもあるのだと改めて感じました。

ただ今回、オチは弱かった。
結末を観ている側の解釈に委ねていますが、もう少ししっかり「その後」を書いてから、委ねても良かったのでは……。
「音無村~」と比べてしまうと、そういう意味では分かりづらいラストだったし、あっさりしていたのは残念でした。



さてここからは気になった出演者の方でも。
基本的に皆さん良かったです。

まずは今回の主役と言っていい、川島役の大和田悠太氏。
パッと見、凄い地味なんですけど、その淡々とした中にも、表には出さない熱意みたいなのが滲み出ている演技が印象的でした。
ちなみに気になってプロフィール調べてみたら、なんと父は大和田伸也氏。
むしろそっちが驚いた(笑)

次に艦長・田辺を演じた家紋健大朗氏。
「音無村~」にも出演してましたが、今回も上手かったです。
「音無村~」では前半と後半で、全く違うキャラクターになってしまう難役でしたが、今回は終始一貫してぶれない信念の艦長を熱演。
とにかくぶれない。日本男児を格好良く演じいました。

そして改めて上手さを認識したといえば、死神を演じた大串潤也氏。
今年5月末に公演したジャンベルの舞台「ママ」ではリライトチームの十三郎を演じていましたけど、また違った意味で上手さを感じました。
とにかくこの死神役が、今回の物語のストーリーテラー的立ち位置で、物語の冒頭も彼の回想から始まるという展開でした。
そういう意味では特殊な立ち位置を演じられた役で、物語を回さないといけない訳です。
見事、その大役は果たしていたと感じます。もしかしたらこの物語、影の主役は彼だったのかもなぁ……。
しかしこの死神の存在がある故、ラストが彼目線になってしまったためにオチが弱くなった弊害もあったかも(これは大串氏の演技には直接関係無いのですが)

あと彼女は絶対に触れないと……鈴子役の彩島りあなちゃん……8歳!子役です。
でも劇中では普通に大人たちに混ざって、相当量の台詞をこなしていました。
いやむしろ台詞、普通に多かったような……。
それをしっかりとこなす姿は途中から、子役である事すら忘れさせる貫禄を持っていました。
でも普通にしっかりしているから、小学校高学年くらいだとは思っていたんだけどなぁ……驚いた。

そして最後は今回のお目当て、浅野泰徳氏。
演じたのは……デンキマン!(爆)
……そう前回の「音無村~」に続いて、デンキマン(笑)
ただし今回、相方の血吸いコウモリは出村貴氏に変わっています(笑)
ちなみに話によるとデンキマン&血吸いコウモリ、毎回キャストは違っても登場人物にいるという噂が……(笑)
まぁそんな訳で浅野氏、人生二度目のデンキマン。今回も弾けていた(笑)
むしろ自由奔放度では、前回以上(笑)
笑いのネタがリアリティ有り過ぎでヤバいです!浅野氏!(笑)
でも後半、電気系統がヤバい場面では予備電源として大活躍!(大笑)
最早、演劇界のピカ○ュウと言っても過言では無いデンキマン!(爆)
客演なのに竜胆丸平四郎レベルの、代表的な役と言っても過言じゃないぞ、デンキマン!(爆)

……結論。
客演時の浅野氏は、ジャンベルの浅野氏とは別人である(笑)

言い方悪いけど、ネジが一本ぶっ飛んでるレベルの快演、見事でございました!(笑)

そして出演者全員が素晴らしかった点として、劇中の潜水艦に乗り込んでいるシーンの再現ですが、これが凄い。

何も無いただ広い舞台の上に、全員が配置につく。

艦長なら中央に。
操縦士は艦の前方に。
技官は……新人のあいつは……という具合に。

そして潜行する。
出演者が全員、潜りこんでいく。
水平に移行する。
出演者が全員、水平に戻る。
方向を転換する。
少し逆に揺られて、皆が同じ方向に傾く。

この潜水艦での移動シーン……圧巻。
この一糸乱れぬ、いわば組み体操にも、某日体大で話題の「集団行動」にも似た演出。
これが実に素晴らしかった。

大道具や、小道具一切無しで、人の動きだけで潜水艦をここまで再現出来る事に感動しました。
これは本当に凄い!
全出演者に拍手を送りたいです。



こうして満足な舞台でしたが、ちょっと残念な点として今回、DVDの撮影が入っていたみたいですが、撮影スタッフが頻繁に移動していました。
それによって足音とかが気になりました。
こういう細かな気配りは、今後気をつけて欲しいと思いました。

上演時間は大体1時間40~50分程度。
オチが弱かった点と、撮影スタッフに対する不満はありましたが、総じて満足でした。

また機会があったら観に行ってみたいと思いますが、その時は浅野氏のデンキマン見たさになるんでしょうか?(笑)
もしくは他の方のデンキマン見たさになるんでしょうか?(笑)

ただ内堀氏のライトノベルも機会があれば、購入して読んでみようかなぁ……そんな事思ったりなんかしました。

・演劇企画ハッピー圏外・公式サイト↓
http://happykengaiofficial.web.fc2.com/index.html